労災と労使紛争

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年7月

民主化移行以来、1998年は労使紛争がもっとも少ない年であった。11月までのデータによると、ストで労働が停止した時間数は、1997年の延べ180万時間に対し50%以上も減り、84万5000時間となっている。

労使紛争の低下の背景には、好調な雇用状況がある。差し迫った人員削減もなく、好況で収益を伸ばした企業では賃上げに応ずる姿勢も見せているため、ストを構える理由自体がそれほどないといえる。加えて政府と労組の合意で終身雇用契約の改革やパートタイム雇用の法制化が進んだことも、対立より話し合い・強調のムードを強める一因となっている。

一方、ストの期間はおおむね短くなったものの、回数自体は特に紛争の激しかった1992年と1994年を除き、過去10年間それほどかわっていない。

このように労働市場をめぐる状況全般が順調だったにもかかわらず、1998年は労災、それも死亡につながる事故件数が増えている。労働時間内に起きた事故件数は140万件で、前年比で12%増となっている。また死亡した労働者数は、1993年以来最高の1490人である。労組側はこの原因を、雇用が不安定で労働者の回転がはやく、また期限付雇用が増えるなど労働者が十分な訓練を受けられない環境にあるとしている。1993年以降労災件数は50%も増えているが、労災がもっとも多い建設業での雇用が近年増えたことも、背景として考えられる。

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