失業者の減少

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年7月

1998年は雇用の上では好調な年だった。第3四半期の失業者数は300万人を割ったが、これは不況による雇用への打撃が深刻化する直前の1992年第3四半期以来の数値である。しかし失業率はあいかわらず欧州で最も高い水準にある。これは現在のような好況期の場合、非労働人口の労働市場への参入が増えるためでもある。

1998年を通じての失業率は18.8%で、失業の減少はあらゆる年齢層で見られた。しかし性別で見ると、失業者全体の40%余りをしめる男性では失業率が6ポイント低下、1994年の19.8%から現在では13.8%と大きく低下したのに対し、同じ期間に女性の失業率は31.4%から26.6%に下がったのにとどまっている。一般に男性失業率は景気変動によるゆれがより激しく、女性の場合は不況時には就職の希望が持てないことから非労働力人口へと転ずるケースが多い。男女格差は若年失業者の場合特に多い。

部門別で見ると、失業率が最も高いのは第1次産業で、17.6%である。建設部門の失業率は1998年4ポイントも低下したものの15.5%と相変わらず高く、逆にサービス・工業部門では平均を大きく下回っている。しかしながら、最近になってサービス業の失業率が工業よりも高くなるという逆転現象がおこっている。過去5年間におけるサービス業の失業率の低下は27.6%だが、工業では50%近くに達している。

これまでと同様、アンダルシアとエストレマドゥラの両自治州では失業率が全国平均を50%近くも上回り、それぞれ29.5%と29%となっている。逆にエブロ川流域地方のナバラ、ラ・リオハ、アラゴン、および欧州並みの雇用構造を持つバレアレス諸島などは失業率が低い地方で、11%前後となっている。失業に見られる地域格差は根強いものがあり、しかも年毎に広がる傾向にある。1998年失業率の低下が最も大きかったのはアラゴン(低下率18.7%)、アンダルシア(同17.2%)、カタルーニャ(15.6%)など、もともと失業率が平均以下の自治州で、逆に失業率が平均より高いアンダルシア、カナリアスでは低下率はそれぞれ6.4%、4.1%にとどまり、エストレマドゥラにいたっては上昇傾向すら見られる。

最後に、スペインの失業問題は雇用政策の適用に反応を示しにくいという特殊性を持っているが、それは長期失業者の数が大変多いためである。すでに1年以上職探しをしている失業者の割合は1998年を通じても55.7%から55.5%になっただけで、ほぼ変化はない。一般に女性の方が職探しにかかる時間がはるかに長く、女性失業者の60%以上が長期失業者、男性では逆に50%以下である。

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