賃金、わずかながら上昇傾向

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年7月

1998年第3四半期のスペインの平均賃金は22万1000ペセタとなっており、伸び率(前年同期比)は2.1%と、1年前の2.8%よりも緩やかになっている。一方団体協約での合意にもとづく賃金の上昇率は2.6%で、これも前年同期比ではマイナス4%となっており、1990年に始まった賃金抑制傾向が続いているのがわかる。

しかしながら、企業の多くで収益増が見られたのを受けて1998年第4四半期には団体協約による賃金上昇率がわずかながら上がっており、賃金の伸びがインフレ率や生産性の向上を上回ることに対する懸念も全くないとはいえない。

賃金においても職種・地方による格差は大きく、またその差が広がる傾向にある。ホワイトカラー労働者の賃金は平均で約27万8000ペセタほどで、ブルーカラー労働者の賃金を70%近く上回っている。しかも前者が1998年2.8%上昇したのに対し、後者の上昇率は1.9%にとどまっている。

工業部門労働者の賃金は24万ペセタで、建設労働者より30%も高くなっている。もっとも建設部門にはブラックマネーがひそんでいることが多く、実際の賃金格差はこれより小さい可能性もある。サービス部門の賃金は21万6000ペセタである。地方間格差はさらに大きい。バスク地方の平均賃金が27万1000ペセタであるのに対し、ムルシア地方の平均賃金はこの75%である。賃金格差は、産業構造の違いだけでなく、地下経済の存在がどれほどであるかによっても影響される。

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