ほころび目立つセーフティー・ネットに集まる批判

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年5月

ソーシャル・セーフティー・ネット実施にからんで各方面から批判があがっている。開発統一党(PPP)はゴルカルと直接関わっているか、市政府に近い者でないとセーフティー・ネットの緊急資金の受給者になれないと指摘する。地方議員や非政府組織(NGO)からも批判が出されており、本当に貧しい人々に支援金が確実に届く仕組みが欠落しているとしている。さらに、都市貧困民協会(Urban Poor Consortium; UPC)のWardah Hafidz氏は、資金の配分を担当している村落復興委員会(Village Resilience Boards; LKMD)職員が既に配給された資金の70%を不適当な用途に用いたと主張する。

特に、定住地を持つ者だけに支援金受給者資格を与えているため、定住所を持たない貧困層の大部分に受給資格がないという矛盾がある。定住地がない者の中には、1990年代に開発事業推進のために土地を追われたため、身分証明書を持っていない何千人もの人々が含まれており、貧困層の間に不満が高まっている。UPCは、ジャカルタ各地の貧困者を集め、2月初旬に数件のデモを行い、資金配分の透明性を高めることを要求した。

各方面からの批判を受けたハビビ大統領は2月15日、閣僚にセーフティー・ネットの配分の改善を指示した。身分証明書発行に高額かつ非公式の手数料がかかるため貧困層は身分証明書を手にできないという批判に応え、政府は資金受給者に対する身分証明書の提示義務の廃止を明らかにした。また2月18日、政府はセーフティー・ネットの監視に資金提供者及び独立した機関を参加させることとした。しかし、同日、いくつかの非政府組織(NGO)が世界銀行に対し、セーフティー・ネット運営が改善されるまでは資金提供の延期を提案するなど、根本的な解決には至っていない。

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