開催報告:第22回北東アジア労働フォーラム(2024年11月15日開催)
高齢者の人的資源開発
労働政策研究・研修機構(JILPT)は2024年11月15日、第22回北東アジア労働フォーラムを開催した。本フォーラムは、労働政策研究・研修機構(JILPT)、韓国労働研究院(KLI)、中国労働社会保障科学研究院(CALSS)の日中韓3カ国の労働政策研究機関が、共通するテーマに基づき研究成果の報告と議論を行い、知見を共有することを目的としている。
今年度は、中国労働社会保障科学研究院(CALSS)の主催により、「高齢者の人的資源開発」をテーマに開催した。高齢化は、日中韓3カ国が共通に直面している課題で、今回は、日中韓3カ国の高齢者の人的資源開発に関する現状や取り組み、高齢者の雇用促進の在り方等について研究報告を行った。
- 日時:
- 2024年11月15日 9時30分~16時40分
- 開催方法:
- 対面(中国江蘇省太倉市マリティムホテル)
- 主催:
- 中国 中国労働社会保障科学研究院(CALSS)
- 共催:
- 韓国 韓国労働研究院(KLI)
日本 労働政策研究・研修機構(JILPT)
プログラム
開会あいさつ(司会者:劉軍勝 CALSS副院長)9時30分~10時00分
- 9時30分~10時00分
- 姜 煒 人的資源社会保障部国際協力局 副局長
藤村 博之 JILPT理事長
ホ・ジェジュン KLI院長
顧 潮 江蘇省人的資源社会保障庁 副庁長
第1セッション(座長:藤村 博之 JILPT理事長)10時00分~11時30分
- 10時00分~10時20分
- 「高齢化と労働市場:挑戦と応戦 -韓国の経験を中心として-」(PDF:1.41MB)
ナム ジェリャン KLI先任研究委員 - 10時20分~10時40分
- 「日本の高齢者雇用対策 ーなぜ日本の高齢者はよく働くのか?ー」(PDF:537KB)
森山 智彦 JILPT研究員 - 10時40分~11時00分
- 「中国の高齢者人的資源開発の背景、状況及び対策について」(PDF:3.15MB)
殷 宝明 CALSS副研究員 - 11時00分~11時30分
- 討論・質疑
キム キホン KLI副研究員
濱口 桂一郎 JILPT研究所長
邸 妍 CALSS主任、研究員 - 11時30分~14時00分
- 休憩
第2セッション(座長:ホ・ジェジュン KLI院長)14時00分~15時30分
- 14時00分~14時20分
- 「高齢期における能力開発の課題は何か?ー労働者の自己啓発に関する分析から得られる示唆ー」(PDF:452KB)
田上 皓大 JILPT研究員 - 14時20分~14時40分
- 「高齢者労働市場の現状と職業訓練」(PDF:575KB)
ジン ソンジン KLI副研究委員 - 14時40分~15時00分
- 「中国の低年齢高齢者人的資源開発の現状、特徴及び実践的探求」(PDF:1.02MB)
宮 倩楠 CALSS補佐研究員 - 15時00分~15時30分
- 討論・質疑
小野 晶子 JILPT理事
ノ セリ KLI副研究委員
鲍 春雷 CALSS副主任、研究員 - 15時30分~15時50分
- 休憩
総括討論(座長:劉軍勝 CALSS副院長)15時50分~16時20分
- 15時50分~16時20分
- 総括討論(全員)
閉会あいさつ(司会者:劉軍勝 CALSS副院長)16時20分~16時40分
- 16時20分~16時40分
- ホ・ジェジュン KLI院長
藤村 博之 JILPT理事長
劉軍勝 CALSS副院長
第1セッション(座長:藤村 博之 JILPT理事長)
藤村博之 JILPT理事長を座長として、第1セッションが行われた。
ナム・ジェリャン KLI先任研究委員は、韓国における急速な高齢化の現状と、その対処のために導入された法制度の影響や課題について発表した。
森山智彦 JILPT研究員は、日本における高齢者の現状、法改正の変遷とその目的について説明し、「なぜ日本の高齢者はよく働くのか」に関するJILPTの研究分析や成果を発表した。
殷宝明 CALSS副研究員は、中国における高齢化の速度や高齢者の現状を紹介し、特に都市部と農村部の高齢者間に存在する格差の問題と、その対処に関する提言を行った。
セッションの最後には、濱口桂一郎 JILPT研究所長が厚労省時代に関わった高齢者政策の経緯や、OECD報告書の邦訳経験に基づく欧州の高齢者対策の考え方を紹介しつつ、各国の高齢者雇用政策における共通点と相違点についてコメントを行った。
第2セッション(座長:ホ・ジェジュン KLI院長)
ホ・ジェジュン KLI院長を座長として、第2セッションが行われた。
田上皓大 JILPT研究員は、高齢期における能力開発の在り方について、特に有配偶女性に焦点を当てた分析結果を報告するとともに、自己啓発の効果的な取り組みの可能性について論じた。
ジン・ソンジン KLI副研究委員は、高齢者の労働市場(労働需給)に関する分析を紹介しつつ、ミドルシニアにおける職業訓練の現状と課題を報告し、望ましい政策の在り方について考察を示した。
宮倩楠 CALSS補佐研究員は、低年齢高齢者(60歳~69歳)に焦点を当て、その現状と雇用におけるポテンシャルの高さを分析した研究成果を発表した。
セッションの最後には、小野晶子 JILPT理事が日中韓3カ国における高齢者の職業訓練の在り方を模索するための共通点と相違点について言及するとともに、高齢期におけるボランティア活動の可能性についてコメントを行った。
総括討論(座長:劉軍勝 CALSS副院長)
劉軍勝 CALSS副院長を座長として、第1セッションおよび第2セッションを踏まえた参加者全員による総括討論が行われた。総括討論では、天瀬光二 JILPT副所長がこれまでの北東アジア労働フォーラム(日中韓ワークショップ)の歴史を振り返るとともに、韓国における賃金ピーク制の詳細について質問を行うなど、活発な質疑応答が展開され、予定時間を大幅に超える議論が行われた。
最後に藤村博之 JILPT理事長は、本フォーラムを次のように総括した。「本日は各組織の報告を通じて、日中韓3カ国の高齢者雇用政策や人材開発の共通点や相違点、課題が浮かび上がり、非常に有意義なフォーラムであった。日中韓の中で日本は最も高齢化が進んだ国であり、これまで約30年かけて様々な高齢者就業促進対策を講じてきた。日本の経験が何らかの参考になれば幸いだ」と締めくくった。
2024年12月6日掲載