基礎情報:ミャンマー(2016年)
5. 社会保障

5-1 公的年金制度

老齢退職年金は満60歳から受給できる。給付額及び期間は保険料を支払った期間によって異なる。満60歳になる前に180カ月保険料を支払った場合、希望に合わせて平均賃金の15カ月分を分割または一括で給付を受けることができる。180カ月以上保険料を支払った場合には、支払った額に応じて一定額が加算される。12カ月以上180カ月未満の期間の支払いの場合には保険料の40%とその年2%の利子分が支払われる。12カ月以下の場合には保険料相当額を一括で受け取る権利がある。

出所:2012年社会保障法

5-2 医療保険制度

2008年憲法367条に「医療を受ける権利の保障」が規定されている。2012年には、1954年社会保障法を全面改正して、2012年社会保障法が制定された(2014年4月から実施)。

社会保障法の適用対象は、この法律は5人以上の労働者を雇用する企業であり、強制的に適用になる。政府関係機関、国際機関、季節的な農業、漁業、非営利団体、家事労働者、家族のみで操業する企業には適用にならない。5人未満の企業は強制的には適用されないが、任意で労働者が加入することは可能である。学生や農民、独立自営業者も任意に加入することができる。加入後、社会保障事務所に登録され、使用者に登録証明書、労働者には社会保険カードが発行される。

加入時に労働者が年齢60歳以下の場合には使用者は賃金総額の2%、労働者は賃金額の2%の負担である。60歳を超えている場合、使用者は2.5%、労働者2.5%の負担となっている。

社会保障委員会や政府が所有する病院や診療所、社会保障委員会が契約する病院や診療所、使用者が準備する病院や診療所において、治療を開始してから26週を限度として受けることができる。継続的疾患の場合は52週を限度として治療を受けることができる。

5-3 2012年社会保障に基づく労働災害補償

社会保障法の適用対象となる5人以上の労働者を雇用している企業は、強制的に社会保障制度に加入することになっている。社会保険に加入する企業を対象として、被保険者が労働災害にあった場合、治療、一時的就労不能給付、永続的就労不能給付、遺族給付の4種類の補償が支払われる。

治療

被保険者が労働災害にあった場合に、治療を受けることができ、12カ月以内に労働復帰が可能となった日に治療は終了する。12カ月が終了しても労働復帰ができない場合は永久的就労不能給付に変わる。

一時的就労不能給付

無料の治療を受けられるとともに、労災前4カ月の平均賃金の70%の手当を最長12カ月受け取ることができる。12カ月経っても復帰できない場合は永続的就労不能給付に移行する。12カ月を経なくても医師の診断書によって復帰が不能であることが判明すれば、この場合もその時点で永続的就労不能給付に移行する。医師の診断書が出されてから1年以内にタウンシップ社会保障事務所に申請しなければならない

永続的就労不能給付

12カ月を超えても就労不能が続く場合、永久的に一部障がいが残る場合、障がいによって失った能力の程度によって平均賃金の70%を、5年から9年分の一時金として受け取ることができる。事故にあった日から1年以内にタウンシップ社会保障事務所に申請しなければならない。

遺族給付

労災により死亡した場合の遺族は、保険料が支払われた期間に応じて、分割または一括での給付を受けることができる。死亡の日から1年以内にタウンシップの社会保障事務所に申請しなければならない。保険料の支払期間が60カ月以下の場合の30カ月分の平均賃金から、240カ月を超える場合の80カ月分の平均賃金まで、段階的に給付期間が設定されている。

出所:2012年社会保障法

5-4 社会保険料率の労使負担割合

医療保険

医療保険:60歳以下の労働者の場合、使用者は賃金総額の2%、労働者は賃金額の2%の負担。60歳を超えている労働者の場合、使用者は2.5%、労働者2.5%の負担。

労災保険

労災保険:事業主が労働者に支払う賃金の1%分の保険料を負担。

5-5 育児・保育について

ミャンマーでは男女の役割分業の考えが強く、男性の雇用を重視する傾向にあり、女性は育児や家事労働のために単純労働やインフォーマル・セクターに従事する傾向がある。単純労働に従事する割合が高いために女性の賃金は低い。

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