基礎情報:ミャンマー(2016年)
2. 雇用・失業対策
2-1 公共職業安定制度
郡(タウンシップ)ごとに設置されている労働事務所(Labour Exchange Office)が、労働基準監督行政とともに、職業安定行政も担当している。労働事務所では18歳以上の者に関して求人登録することができる。1959年雇用制限法(1975年改正)によれば、5人以上の労働者を雇用する事業主は、欠員を労働事務所に通報することが義務づけられている。
政府が公表する『Selected Monthly Economic Indicators』によれば、労働事務所の登録者数は、全労働力人口(統計数値上把握されている限りの)の2%程度を占めるに過ぎない。また、毎月、登録されている求職者数の30%程度しか就職できていないのに加えて、新規求職登録者数の30~40%程度の人数が、公共職業安定所を通じた就職活動をせずに求職者登録から抹消されている。
出所:中央統計局(Central Statistical Organization)『Selected Monthly Economic Indicators』
2-2 失業保険制度
社会保障法(2012年制定)が失業給付について規定している。
失業保険料は、労働者が賃金の1%、使用者が1%を支払うことと規定されている。保険加入者が36カ月以上保険料を支払った者で、以下の社会保障法第37条a~dに該当する場合に失業給付を受ける権利を有する。
- 自己都合退職ではなく仕事が永久になくなったために離職せざるを得ないこと
- 違法行為や横領、文官規則違反、職場規則に故意に違反することによって解雇された者でないこと
- 健康で働く意欲をもっている者
- 所轄のタウンシップの職業紹介所に登録され、毎月職業紹介所や社会保障事務所に出頭している者
給付額と期間は、直近1年間の平均賃金の50%分を、2カ月分と規定されている。36カ月以上保険料を支払った場合は、12カ月ごとに1カ月分が追加され、最大6カ月分を受給することができる。失業中に結婚した場合は、扶養家族の状況によって、10%を超えない範囲で加算額を受給する権利を有する。病気になった場合、失業給付を受ける期間治療や現金給付を受けることができる。妊娠や出産の場合も給付を受ける期間(2カ月から6カ月)、治療や現金給付を受けることができる。また、社会保障委員会が認める訓練を受けることができる。失業給付の期間中に死亡した場合、遺族に葬祭料が支払われる。
一つの事業場につき1回だけ失業給付が受けられる。失業して同じ事業場にふたたび就職した場合、復帰後36カ月の保険料の支払いがなされれば、再度失業手当を受ける権利を有する。法律や労働契約によって保険加入者の責めに帰すべき事由によって生じる損害額を使用者は失業手当から控除することができる。
以下の場合には失業給付の支払いが中止される。
- 所轄の職業紹介所や社会保障事務所から情報提供を受けた仕事を正当な理由なく拒否した場合
- 社会保障委員会が指示する訓練コースを正当な理由なく拒否する場合
- 新しい仕事を見つけた場合
- 刑事法によって処罰を受け刑務所に収容された場合
-
海外で仕事をみつけた場合
出所:2012年社会保障法
2-3 年齢に関する法制度
定年
公務員以外には、定年に関する法的規制はない。公務員は60歳が定年年齢である。そもそも定年制を設けない企業もある。定年制を設ける場合は、就業規則や雇用契約書に定めておく必要がある。
年少労働
工場法によれば就労最低年齢は14歳である。14歳から16歳未満の者は1日4時間で軽い労働が可能である。16歳以上は医師の診断書があれば18歳以上の者と同じ時間働くことができる。
2-4 障がい者雇用対策
1955年障がい者雇用法は、障がい者が治療や職業訓練を受ける権利、求職の登録、雇用権の保障について定めている。この他に、児童法18条には障がいを負った児童の保護が定められている。
2008年憲法32条に障がい者の保護が規定されたことを受けて、障がい者の権利に関する法律が2015年6月5日に制定された。障がい者のための国家審議会を設置して、障がい者の教育、健康、政治や市民参加、職業機会の促進など提言を行うことになっている。
なお、社会福祉救済復興省が非公式教育として、成人障がい者向け青年ケア・職業訓練センターが10カ所、聾・盲・障がい者学校が4カ所、合計14施設が設置されている。
出所:国際協力機構(2013)『ミャンマー国教育セクター情報収集・確認調査ファイナルレポート』2013年2月
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