基礎情報:中国(2013年)
4. 賃金・労働時間・解雇法制

4-1 最低賃金制度

根拠法令:
最低賃金規定
決定方式:
労働法第48条は、「国は最低賃金保障制度を実施する。最低賃金の具体的基準については、省、自治区、直轄市の人民政府が規定し、国務院に届け出る」と規定している。中央政府は立法を通して最低賃金基準の決定や調整、最低賃金の実施と監督といった問題について原則的な規定を定める。実際の最低賃金基準はそれぞれの地方政府が定める。
設定方式:
地域別設定
最低賃金額:
地域別 1400元/月(北京市の場合。2013年1月より)
適用対象:
国内の企業、民営非企業事業所、労働者を雇用する個人経営商工業者、及びこれと雇用関係を形成する労働者。国家機関、事業単位、社会団体、及びこれと労働契約関係を結び労働者も適用対象。(第2条)
適用除外・減額措置:
適用除外 (第12条)
  • (1) 労働時間を延長した際の賃金
  • (2) 夕勤、夜勤、高温、坑道内、有毒有害等の特  殊な労働環境・条件における手当
  • (3) 法規及び国が定める労働者への福利に関する給付等
  • (4) 出来高払制賃金また歩合制賃金等の賃金形式
罰則等:
労働保障行政部門は期限を定めて不足分の賃金を支払うよう命じるものとし、また未払い賃金の1~5倍を賠償金として労働者に支払うよう命じることができる。(第13条)

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4-2 最低賃金額の推移

主な都市の推移は、下記の通り。

表:中国の都市別最低賃金額(注1) (単位:元/月)
北京市 上海市 天津市 深セン市(注2)
2005 580 690 590 690
2006 640 750 670 810
2007 730 840 740 850
2008 800 960 820 1,000
2009 800 960 820 1,000
2010 960 1,120 920 1,100
2011 1,160 1,280 1,160 1,320
2012 1,260 1,450 1,310 1,500
2013 1,400 1,620 1,500 1,600

資料出所:各地方政府

注1:北京市・上海市は社会保険料・住宅積立金を含まない金額。深セン市、天津市は含む。

注2:センは土へんに川。

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4-3 労働時間制度

根拠法:
中華人民共和国労働法(1995年)、
従業員有給休暇条例(2008年)
法定労働時間:
1日8時間、週平均44時間以内(労働法第36条)
罰則:
  • (労働法第90条)同法の規定に違反し、労働者の労働時間を延長した場合、労働行政部門が警告を与え、是正を命じて、併せて過料に処することができる。
  • (労働保障監査条例第25条)違法な労働時間の延長に対しては労働保障行政部門が警告し、期限内の是正を命じ、侵害を受けた労働者1人あたり100元以上500元以下の罰金を科すことができる。
適用関係:
適用除外 (労働法第42条)
  • (1) 自然災害、事故の発生、あるいはその他の原因により、労働者の生命、健康と財産の安全が脅かされていて、緊急に処理する必要がある場合。
  • (2) 生産設備、交通、公共施設に故障が発生し、生産と公衆の利益に影響を及ぼし、速やかに対処しなければならない場合。
時間外労働(上限規制、割増賃金率):
上限規制 (労働法第41条)
  • 雇用側の組織は生産経営の必要により、労働組合及び労働者との協議を経た後に労働時間を延長することができるが、原則として1日につき1時間を超えてはならない。特殊な原因に因り労働時間の延長が必要な時は、労働者の身体健康を保障するとの条件の下で延長する労働時間は1日につき3時間を超えてはならず、1カ月につき36時間を超えてはならない。
割増賃金率 (労働法第44条)
  • 労働者に勤務時間を延長させる場合、賃金の150%を下らない給与を支給しなければならない。
休日労働(割増賃金率):
企業は下記の祝祭日期間は、法に基づいて労働者に休暇を与えなければならない。(労働法第40条)
  • 元旦、春節、メーデー、国慶節、法律・法規で定めた休暇・祭日
下記のいずれかに該当する場合には、使用者は支払基準に従い、労働者の通常の時間給を上回る給与を支給しなければならない。(労働法第44条)
  • (1) 休日に勤務させ代休を与えることができなかった場合、賃金の200%を下回らない給与を支給しなければならない。
  • (2) 法定休暇日に労働者を勤務させた場合、賃金の300%を下回らない給与を支給しなければならない。
年次有給休暇制度における継続勤務要件:
労働者が1年以上継続して勤務した場合は、労働者は有給休暇を取得する。具体的方法は国務院が規定する。(労働法第45条)
年次有給休暇の付与日数:
(従業員有給休暇条例より)
  • (第3条)累計勤務期間が1年以上10年未満の労働者は年休5日間、10年以上20年未満は10日間、20年以上は15日間とする。法定休日と休日は含めない。
年次有給休暇の付与方法:
(従業員有給休暇条例より)
  • (第3条)従業員が連続12カ月以上勤務した場合、年次有給休暇を享受する。
  • (第4条)年休の日数は従業員の累計勤務時間によって決定する。従業員が同一または異なる使用者において勤務した期間、ならびに行政法規または国務院の規定により勤務期間に見なされる時間は、累計勤務時間に算入される。
  • (第5条)従業員が使用者に新規採用され、かつ第3条の規定に合致する場合、同年度の年休日数は同使用者において残った西暦日数を換算して決定する。1日を下回る部分は切り捨てられる。前項で規定した換算方法は次の通りとする。
    (同年度に雇用される西暦日数の残り日数÷365日)×享受すべき年休日数
  • (第6条)従業員が法により享受する帰省休暇、結婚・喪中休暇、出産休暇等国家規定の休暇、ならびに労災による出勤停止期間は、年休期間に算入しない。
  • (第10条)使用者が従業員の同意を得て年休を手配しない、または従業員に手配する年休日数が享受すべき年休日数を下回る場合、本年度内において従業員の未消化の年休日数に対し、一日あたり賃金の300%を使用者は未消化年休の賃金報酬として支給しなければならない。
  • (第12条)使用者が従業員と労働契約を解除する、または終了させるに際し、従業員の同年度に享受すべき年休を手配できなかった場合、従業員が同年度に既に勤務した期間によって未消化年休日数を換算し、未消化年休分の賃金報酬を支給しなければならない。
未消化年休の取扱い:
(従業員有給休暇条例より)
  • (第11条)未消化年休の賃金報酬を計算する賃金収入は、従業員本人の1カ月賃金を1カ月賃金計算日数(21.75日)で割って換算する。1カ月賃金とは、従業員が未消化年休の賃金報酬を取得する以前の12カ月のうち、残業賃金を除いた月平均賃金を指す。同使用者における勤務期間が12カ月を満たさない場合、実際の月数によって月平均賃金を計算する。

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4-4 解雇法制

個別的解雇

根拠法令:

  • 労働法(1995年)
  • 労働契約法(2008年)
  • 労働紛争調停仲裁法(2008年)
  • 労働契約法実施条例(2008年)

労働者の個別的解雇

労働者の個別的解雇には、a.協議による労働契約の解除、b.条件付き解雇、c.予告解雇がある。

a. 協議による労働契約の解除

労働法第24条により、労働契約の当事者が協議一致になって、合意に達したうえで労働契約を解除することができると規定している。(労働契約法第36条)

b. 条件付き解雇(過失解雇)

労働法第25条により、労働者が下記のいずれかの状況に該当する場合は、雇用者は、労働者を解雇することができる。(労働契約法第39条)

  1. 試用期間内に、雇用条件に達してないことが証明された場合。
  2. 労働規律あるいは雇用者の規則制度に著しく違反があった場合。
  3. 厳重な職責怠慢、あるいは私利を図ることによって、使用者の利益に重大な損害を与えた場合。
  4. 法に基づき刑事責任を追及された場合。「労働法」第28条により、上記の状況に基づき、労働者を解雇する場合は、企業は、経済的保証を与える必要はない。
c. 予告解雇(無過失解雇)

労働法第26条により、使用者は、労働者が下記のいずれかの状況に該当する場合は、解雇することができる。但し、30日前までに書面により労働者本人に解雇する旨を通知しなければならない。(労働契約法第40条)

  1. 労働者が疾病にかかり又は業務外の負傷により、治療期間満了した後も元の業務に従事することができず、雇用者が別途手配した業務にも従事することもできない場合。
  2. 労働者が職務に対して支障があり、訓練あるいは職務の変更にかかわらず改善されない場合。
  3. 労働契約締結の際、締結の条件とされていた客観的事情に重大な変化が発生し、労働契約の履行が不可能となった場合で、当事者が協議によって労働契約の変更について合意が得られない場合。

経済補償金

労働法第28条により、使用者は労働法の24条、26条、27条の規定により労働契約を解除する場合は、国の関係規定により経済的補償を支払わなければならない。

解雇制限(労働契約法第46条)

労働法第29条により、労働者が下記のいずれかの状況に該当する場合は、使用者は、労働法26条および27条の規定による労働契約を解除することができない。(労働契約法第42条)

  1. 職業性疾病又は業務上の負傷により労働能力の喪失又は一部喪失が確認された場合。
  2. 疾病又は負傷により療養中の場合。
  3. 女性労働者が妊娠、出産、授乳期間中の場合。
  4. 法律、行政法規に規定されたその他の事情がある場合。

工会(労働組合)の介入(労働契約法第43条に相応)

労働法第30条により、使用者が労働契約を解除し、労働組合がこれを不適当と認めた場合には、労働組合は意見を提出する権利を有する。使用者が法律、法規あるいは労働契約に違反した場合、労働組合は再審査を要求する権利を有する。労働者が仲裁を申し、あるいは訴訟を起こす場合は、労働組合は法に基づいて支援しなければならない。


集団的解雇

労働法第27条により、雇用者は、破産に際して法定的整理期間、あるいは経営の重大な困難に直面し、人員の削減を必要とする場合(下記の1~4に該当)は、30日前までに労働組合又は労働者全体に対して状況を説明し、労働組合又は従業員の意見を聴取して、労働行政部門に報告した後に人員を削減することが可能となる(27条第1項)。なお、使用者は同法第27条第1項に従って人員を削減した後、6カ月以内に人員を採用する場合は、削減された人員を優先的に雇用しなければならない(第27条第2項)。

労働契約法第41条により、下記のいずれかの状況に該当し、20人以上の人員削減、又は20人未満であっても従業員総数の10%以上の人員削減が必要な場合には、使用者は30日以上前に労働組合又は従業員のすべてに状況を説明し、労働組合又は全従業員の意見を聴取した後に、人員削減案を労働行政部門に報告した上で人員削減を行うことができる。

  1. 企業破産法の規定に従い企業再編を行う場合。
  2. 経営にきわめて困難な事態が生じた場合。
  3. 産業転換や技術革新、経営方式調整の場合で、労働契約を変更した後にも、人員を削減しなければならない場合。
  4. 労働契約締結時に根拠としていた客観的経済情勢に重大な変化が生じ、労働契約の履行が不可能になった場合。

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例) 出典:労働政策研究・研修機構「基礎情報:中国」