基礎情報:カンボジア(2017年)
3. 能力開発・キャリア形成支援

能力開発にかかわる行政機関のうち、教育青年スポーツ省と労働職業訓練省を取り上げることにする。

教育青年スポーツ省では、一般教育制度の中で能力開発に関する科目を提供している。小・中・高においてLocal Life Skills Programとして車やバイクの修理、大工、電気機器の修理、畜産、農作業にかかわる技術を習得する科目が設置されている。さらに高校ではElective Vocational Educational Programとして会計・経済、観光、芸術、ICT技術、地域独有の技術などに関する科目がある。キャリア・ガイダンスはほとんどなされていないという問題を抱えている。工学系の学部を有する大学レベルでは、電機、コンピュータ、土木建築、化学・食品製造、機械などの学部を有し、技術者を育成している。実験や実習の施設が乏しく、知識偏重の教育になっていることや、技術系のキャリアへの社会的評価が高くなく、ホワイトカラー指向が強いという問題点が指摘されている。

労働職業訓練省の管轄にある職業訓練では、職業訓練に関する基本法はまだ存在せず、労働職業訓練省令によって対応している。経済発展を担う人材養成、特に生産現場で即戦力となる人材育成が急務であるが、財政不足もあって訓練施設が不十分であり、国際機関や先進国のODAによって支えられているのが現状である。特にアジア開発銀行が第二次の訓練計画に関係しているし、JICAも2015年から「産業界のニーズに答えるための職業訓練の質向上プロジェクト」(2015年3月~2020年3月)を実施している。プノンペン周辺の短大レベルの3つの職業訓練校で、電気分野でのカリキュラム開発およびカリキュラム試行を支援している。

出所:国際協力機構(JICA)(2012)『カンボジア国産業人材育成プログラム準備調査ファイナル・レポート』2012年 (PDF:3.5MB)新しいウィンドウ

3-1 初期教育訓練

初期教育訓練には、企業内の訓練と企業外での公的訓練がある。

企業内の訓練は徒弟契約による訓練である。この内容は労働法が規制している。徒弟契約には指導員の氏名・年齢・職業・住所、徒弟の氏名・住所、徒弟の両親や保護者の氏名・職業・住所、契約期間および訓練を受ける職業、報酬、企業が提供する技能分野、契約終了時に支払われる補償、指導員および徒弟の義務が含まれなければならない(53条)。指導員は、徒弟の行動や生活を監督するとともに、職業訓練をおこない、徒弟期間終了後、中立の試験委員による試験に合格すれば証書を授与する(59条)。

公的な職業訓練制度は以下のようになっている。一般教育制度は1996年から6-3-3-4制度が導入され、憲法上9年間が義務教育となっている。小学校6年、中学校3年を終えると、3年間の高校レベルでの職業高等学校がある。高校では各学年が終わるごとに修了証明書(certificateⅠ、Ⅱ,Ⅲ)を取得できる。ここでは機械修理、コンピュ―ター技術、農業機械、電気、電子、エアコン修理、土木技術等を学習している。その後、高等専門学校に進学し、1年-3年間の学習によって技術ディプロマ(diploma for technicians)を取得できる。その上には大学で学士、大学院で修士、博士を取得する道が開かれている。

この他に、地方に職業訓練センターが1~6カ月の短期間の訓練を実施している。農業、建築、自動車修理、基本的な食料生産、工芸、縫製、美容などに関する技能を教えている。ここでは3段階の認証が設けられており、熟練度によって職業証明書(TradeⅠ, TradeⅡ, TradeⅢ)を取得することができる。TradeⅢを取得すると職業高等学校に入学する資格を有する。

なお1999年国立職業訓練所が設置され、職業訓練施設での教員を養成する役割を果たしている。毎年300名の教員の養成を目指している。

さらに、NGOや民間部門で非公式な訓練を提供している。たとえば、王立プノンペン大学の敷地内に「カンボジア日本人材開発センター」がJICAの支援によって設置され、日本語や経営に関して勉強するコースを設けている。

3-2 継続教育訓練

在職のままで再訓練を受けるか、離職してから再訓練を受けてより高度な仕事を目指す方法がある。

3-3 能力評価(資格)制度

2012年職業訓練制度を審議する全国訓練審議会が承認した資格制度が設けられている。図表1のように8段階に設定されている。それぞれの基準に到達するよう指導する者は努力しなければならない。統一的なカリキュラムや具体的な基準は検討中である。

図表1:全国訓練審議会承認の資格制度
資格レベル 一般教育制度 訓練制度 高等教育
8   博士課程 博士課程
7   技術修士課程 修士課程
6   技術学士課程 学士課程
5   技術ディプロマ 準学士課程
4 高校 修了証明書Ⅲ  
3 高校 修了証明書Ⅱ  
2 高校 修了証明書Ⅰ  
1 中学校    

出所:“TVET Better Skills Better Life新しいウィンドウ,” Ministry of Labour and Vocational training, Directorate General of Technical Vocational Education and Trainingに基づき作成。
World TVET Database, UNESCO-UNEVOC International Centre for Technical and Vocational Education and Training, January, 2014 (PDF:439KB)新しいウィンドウ

関連情報

お問合せ先

内容について

調査部 海外情報担当

お問合せページ(事業全般に対するお問合せ)

※内容を著作物に引用(転載)する場合は,必ず出典の明記をお願いします。

例) 出典:労働政策研究・研修機構「基礎情報:カンボジア」

GET Adobe Acrobat Reader新しいウィンドウ PDF形式のファイルをご覧になるためにはAdobe Acrobat Readerが必要です。バナーのリンク先から最新版をダウンロードしてご利用ください(無償)。