基礎情報:ドイツ(2000年)

※このページは、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

  1. 一般項目
  2. 経済概況
  3. 対日経済関係
  4. 労働市場
  5. 賃金
  6. 労働時間
  7. 労使関係
  8. 労働行政
  • 国名: 
    ドイツ連邦共和国(ドイツ、ヨーロッパ、現地語名:Bundesrepublik Deutschland)
  • 英文国名: 
    Federal Republic of Germany
  • 人口: 
    8211万人(1999年) 8202万9000人(1998年) 8205万3000人(1997年)
  • 面積: 
    35万7021平方キロメートル
  • 人口密度: 
    230人/平方キロメートル
  • 首都名: 
    ベルリン
  • 言語: 
    ドイツ語
  • 宗教: 
    プロテスタント、カトリック
  • 政体: 
    議会制民主主義
  • 実質経済成長率: 
    +1.4%(1999年) +2.8%(1998年) +2.2%(1997年) +1.3%(1996年) +1.2%(1995年) +2.7%(1994年) △1.2%(1993年)
  • 通貨単位: 
    マルク(DM) 1マルク=57.57円(1999年10月)
  • GDP: 
    3兆8720億マルク(1999年) 3兆7840億マルク(1998年) 3兆6660億マルク(1997年)
  • 1人当たりGDP: 
    3万4600マルク(1998年) 3万3300マルク(1993年)
  • 消費者物価上昇率: 
    +0.9%(1998年) +1.8%(1997年) +1.5%(1996年) +1.8%(1995年)
  • 主要産業: 
    農業(小麦、じゃがいも、食肉など)、鉱工業(粗鉄、乗用車、電気製品など)
  • 対日主要輸入品目: 
    乗用車、自動データ処理機械、集積回路、金属加工機、有機化合物など
  • 対日輸入額: 
    18630百万ドル(1999年) 19005百万ドル(1998年) 19073百万ドル(1997年)
  • 対日主要輸出品目: 
    自動車、有機化合物、医薬品、化学光学機器、電気計測機、半導体電子部品など
  • 対日輸出額: 
    11460百万ドル(1999年) 10665百万ドル(1998年) 12477百万ドル(1997年)
  • 日本の直接投資: 
    924億円(1999年) 708億円(1998年) 898億円(1997年)
  • 日本の投資件数: 
    36件(1999年) 37件(1998年) 19件(1997年) 30件(1996年) 59件(1995年)
  • 在留邦人数: 
    2万3270人(1999年10月)

出所:

  1. Statistisches Bundesamt(Stat. B. A.) (連邦統計局調べ)
  2. 日本:大蔵省(財政金融月報、外国貿易概況)、外務省(海外在留法人数調査統計)

1.労働市場の概況

労働市場情勢は、1999年やや改善されたが、労働市場での大規模な不平等が継続している。労働市場政策での特別な施策としては、非典型的雇用関係についての新規制、特に僅少賃金雇用ならびに外見自営に関する問題がある。労働市場状況の改善には、高年者パートタイム制度の継続が寄与しえる。社会民主党と緑の党による新連立政権による雇用のための同盟は一連の活動を展開できるだろう。

実質1.5%という穏やかな成長では、労働需要が0.3%増大したにすぎないことは驚くに値しない。それによって、失業者数は若干減少し、年間平均で約410万人だった。これは1998年の年平均よりも約18万人減少した。失業率は、全就業人口に対して、11.1%から10.5%に低下した。労働協約上の労働時間が停滞していることからみて、就業人口の若干の増大は、全経済レベルでの労働量の若干の増大を導き、0.5%ほど増大した。就業時間当たりの労働生産性は1%ほどの増大で、昨年よりも明らかに低い伸びである。同時に、雇用者の収入は、過去2年よりも幾分強く上昇したので、単位労働コストは0.7%上昇した。過去2年の単位労働コストは、それぞれ0.8%(1997)、0.4%(98)減少していた。

就業者数は、前年の統計よりも200万人、6%増大した。この高い数字は、国民経済的な計算全体の方式を変更したことによるものであり、とりわけ僅少労働の掌握の改善に基づいており、ILO の失業の定義に従っている。失業者となるのは、調査期間中に、就業力があり、職を探していながら、雇用されなかったすべての人である。これに対して65歳未満で、一時的に雇用のない人も失業者に数え、さらに、最低週15時間就労の社会保険加入義務のある雇用を求めていなければならないという連邦雇用庁の条件もある。

産業分野別の雇用の発展を見ると、最近数年間がそうであったようにまったく異なった姿が表れる。建設業や製造業が雇用の停滞に苦しんでいる一方で、様々なサービス関連分野ではさらに雇用が増えている。金融、賃貸、法人サービスの雇用は2.7%増えている。商業・飲食店、交通分野も0.2%増えている。第3次産業への構造転換は中断することなく続いている。

全経済的な労働生産性が比較的低くとも上昇できたのは、金融、賃貸、法人サービスのような特定のサービス分野の状況による。建設業を除く製造業の(労働時間当たり)生産性はとりわけ低く1.4%しか成長していない。これは過去6年間で最も低い成長である。

2.労働市場関連情報

  • 就業者数: 
    3611.3万(1999年)3397.0万人(1998年)3396.2万人(1997年)3442.3万人(1996年)
  • 就業者数(2): 
    2736.1万人(1999年)3028.3万人(1998年)3031.4万人(1997年)3080.1万人(1996年)
  • 就業率: 
    71.7%(1998年)71.7%(1997年)71.4%(1996年)71.9%(1995年)
  • 失業者: 
    409万3000人(1999年)427万9000人(1998年)438万4000人(1997年)396万5000人(1996年)361万2000人(1995年)
  • 失業率: 
    10.5%(1999年)11.1%(1998年)11.4%(1997年)10.4%(1996年)
  • 求人件数: 
    45万6000件(1999年)42万1600件(1998年)33万7000件(1997年)32万7000件(1996年)32万1000件(1995年)

注:

  1. 就業者数は、国民経済計算方式の大幅な変更により約200万人膨張し、したがって旧数値とはもはや比較できない。
  2. 就業者(2)は「通年就労でない就業者数」。
  3. 就業率は「15~65歳の居住者に対する就業者の割合」。

出所:

  1. Statistisches Bundesamt(Stat. B. A.)(連邦統計局)、Bundesanstalt fiir Arbeit(連邦雇用庁)、Sachverstandigenrat ; WSI(専門家委員会)の資料

1.最低賃金

1999年、労働組合は、賃金給与に関する交渉で、インフレ率上昇の補償のみならず、生産性寄与分の配分も確保することに賃金政策上成功した。西ドイツ地区では、協約賃金は平均で3.1%上昇した。これは前年(1.7%)よりも明らかに高く、協約妥結額は配分の領分をすべて使い尽くしているといえる。

1990年代の妥結額と比較して、穏当な協約政策の終わりについて語ることができる。時間当たりの実質所得の伸びも2.3%に達しており、時間当たりの生産性向上よりも1%高くなっている。これにより西ドイツでは1996年以来、久々に単位賃金コストが上昇した。

東ドイツ地区では、昨年の2.4%に対して協約所得は平均で3.3%上昇した。これにより東西両地域間の格差は若干減少した。1999年末に、東独地域の平均的協約賃金水準は、西独地域に対して91.5%になった。近年では、両地域間の調整のテンポは、明らかに鈍化している。

1999年には雇用保障協定も結ばれた。雇用保障と引き換えに建設業での労働協約では、事業所レベルに対して、収益状況に応じて従業員の所得を10%まで調整する余地を与えている。東独でも数多くの企業協約が、同様の方向に向かっている。著名な例としては、チューリンゲンの Jenoptik 社の企業協約がある。この企業協約は、企業の収益状況に応じて、従業員の所得を変動できるものである。給与は、固定した基礎部分と個人的に算入できる特別賞与部分、そして企業成績と連結した休暇手当と月額固定の構成要素からなっている。

能力や実績に応じた給与システムは昨今、協約政策的な議論の対象になっている。数多くの事業所で新しいモデルが試されており、労働収入の特定の部分が、経済状態や個人的労働量や実績に応じて変化するようになっている。従業員代表会についてのハンス・ベックラー財団経済社会研究所(WSI)の調査では、調査対象になった半数以上の従業員代表会が、成果に応じた収入要素について報告している。従業員代表会の報告によると、30%の事業所で収益に応じた成果要素を導入していた。

賃金協約による所得の上昇率は、商業分野で、最高3.6%達成され、それに次いで、商取引部門と地方公共団体/社会保険関連団体で3.2%の上昇が達成された。賃金協約によるアップの最低を示している分野は、エネルギー供給と水道の1.9%と建設業の2.0%である。旧東ドイツでは、この間、賃金水準は平均で旧西ドイツの数値の91.5%に達している。

2.賃金関連情報

  • 時間給上昇率: 
    3.2%(1999年)1.8%(1998年)1.3%(1997年)2.6%(1996年)
  • 1時間当たり実質賃金上昇率: 
    2.3%(1999年)1.7%(1998年)1.9%(1997年)3.0%(1996年)
  • 実質手取額上昇率: 
    1.2%(1999年)0.2%(1998年)△1.9%(1997年)0.9%(1996年)

出所:Sachverstandigenrat; WSI-Tarifarciv(社会経済研究所/専門家委員会の賃金記録文献)

1.労働時間の概要

労働時間の構造的変化の最も大きな原因は労働時間口座の導入にあり、ここ数年の間に急速に広まっている。現在では、民間企業の79%、組織内利益代表(労組)を有する公的機関の66%がさまざまな種類の時間口座の少なくとも1種類を採用している。従業員50人以下の小企業でも大部分がこの労働時間口座を導入している。最も導入の進んでいるのは設備投資の大きい製造業であり、約91%がすでに時間口座を活用している。逆に導入の最も遅れているのは商業分野であり、何らかの形で時間口座を導入している企業は全体の52%に過ぎない。

労働時間口座の導入により、企業側も従業員側も1日あるいは1週間の労働時間にバリエーションを持たせることができ、変化する需要へのフレキシブルな対応が可能になる。時間口座の活用は、企業側に大きな利益をもたらすものである。就労パターンを変化する生産やサービスパターンに合わせることができれば、在庫コストの節約が可能となり、変動する需要に柔軟に反応することができるからである。同時に、時間口座には合理化の方策としてロス時間を減らし、労働効率を高める効果もある。さらに、時間口座の活用は時間外労働の削減につながる。こうして、企業側は時間外勤務手当を25%削減することができるのである。

2.労働時間に関する法律

新労働時間法が1994年7月1日より施行されているが、新法は1938年制定の労働時間規定と1891年制定の労働時間規則、休日就労規定がベースになっている。新労働時間法制定の目的は、それまで複雑に分かりにくかった労働時間法制度を単純化し、さらに、現状に即して柔軟に対応できるよう改善することであった。

新労働時間法には、とくにつぎのような新しい規定が盛り込まれている。

  1. 第3条によると、6カ月以内に1日平均8時間労働となるよう調整すれば、1週間当たりの労働時間を60時間まで、1日当たりの最長労働時間を8時間から10時間まで延長することができる。
  2. 当事者(使用者、労働者)は第7条に基づき、労働協約あるいは労働協約に基づいた企業内協定において、たとえば長期ベースの労働時間調整期間、短期ベースの最少休養時間あるいは休憩時間の割り当てに関し、法で定められた規定とは異なる独自の規定を定めることができる。
  3. 日曜、休日労働は、従来定められていた例外事項(第10条)のみならず、経済的理由(第13条第5項)で導入することができる。

特に最後の規定については長期間にわたって検討された。検討に時間がかかった理由は、製造業においても技術的理由のみならず経済的理由による日曜労働への道をひらくことになるからである。製造業では日曜労働の導入に極めて消極的であった。

3.労働時間関連情報

労働時間については、ほんの2、3の指標でしか、西ドイツと東ドイツの区分ができない。

  • 実質年間総労働時間:1466時間(1997年)1474時間(1998年)1477時間(1999年)
  • 1999年週当たり労働時間:西ドイツ平均37.5時間、東ドイツ平均39.1時間

一方、労働者1人当たりの時間外労働時間(1999年)は、旧西ドイツ地域の61時間に対して旧東ドイツ地域では53時間と短くなっている。労働時間との関連で、パートタイム労働者の割合(1998年)をみると、旧西ドイツ地域の割合(20.0%)が、旧東ドイツ地域の割合(11.8%)を上回っている。

興味深いのは育児休暇の申請件数(1997年)で、旧西ドイツ地域の36万6000件に対して旧東ドイツ地域は4万8000件と9分の1しかない。

つぎに土日と夜間労働についてみると、1997年全就業者のうち36.2%が土曜労働を行(1991年は32.7%)い、日曜労働は全就業者のうち19.3%が行っている(1991年は17.2%)。

また、1997年に全就業者のうち17.2%が夜間労働を行っている(1991年は13.4%)。

産業構造の変化に伴い、サービス産業部門で労組の大合併の動きがあり、これに対して使用者側と他の産別労組内部でそれぞれ対応する動きもあったが、1999年11月後半5つの労組が各臨時大会を開催し、2001年春に「統一サービス産業労働組合」(Verdi)に合併することを正式に承認した。労組再編の動きは他にもあり、組合員数の減少、労組の求心力の低下、経済のグローバル化、失業の増大、規模拡大による交渉力強化の意図等が背景にあるが、今後の成長産業であるサービス産業においてドイツ労働総同盟(DGB)の傘下で組織の統一を図り、労働条件について使用者団体側との協約交渉力の強化を図ることに、Verdi 結成の重要な狙いがある。

合併する5労組は、

  1. 公務・運輸・交通労組(OTV)、
  2. ドイツ職員労組(DAG)、
  3. 商業・銀行・保険労組(HBV)、
  4. 郵便労組、
  5. メディア労組

で、このうち DAG は DGB の傘下に入っていない別系統の労組として第2次大戦後に発足したが、50年を経て新たにサービス業部門の産別労組 Verdi という形で DGB の傘下に入ることになった。これにより組合員数320万人の先進産業国で世界最大の産別労組が誕生することになり、組合員数では従来ドイツ最大の産別労組として君臨した IG メタルの290万人を超えることになった。

Verdi は、

  1. 金融サービス
  2. エネルギー供給、廃棄物処理
  3. 健康、社会サービス、福祉、教会
  4. 社会保障
  5. 教育、科学、研究
  6. 連邦・州
  7. 市町村
  8. 芸術・文化、メディア、印刷、産業サービス・製造
  9. 通信、情報技術、データ処理
  10. 郵便業務
  11. 交通
  12. 商業
  13. 特殊サービス

の13の専門分野で、サービス産業の労働者・職員の利益を代表することになる。だが、5労組間の利害調整はまだ残っており、特に規模では OTV が158万人で、第2位の DAG の48万人をも大きく上回り、活動地区も他の4労組よりも約170と遙かに多く、これに合わせて Verdi の活動地区を多くすると、13の専門分野が各地区に反映されない可能性があり、この調整がまだ難航している。さらに各地区の予算配分等、まだ解決されねばならない問題を残している。

この合併で最も影響を被るのは DAG であり、従来、DGB 傘下の産別労組と別系統の労組として、職業別組合主義のもとですべての産業部門の職員層を代表するとの建前で独自の協約交渉を行っていたが、新組織の元ではこの独自性を失うことになる。だがロラント・イッセン委員長によると、サービス産業で DAG の組合員数の割合は20%であり、特に急成長する情報通信(IT)部門では10%に過ぎず、これらの部門での5労組の競争関係を終わらせ,生き残りを図るためにはこの選択しかなかったとされる。

この大合併につき、DGB は Verdi が自己の傘下に入る形で労組の再編が進展することを歓迎しているが、他の産別労組は巨大労組 Verdi の権限拡大に警戒心を強めている。中でも、従来の最大労組 IG メタルと有力労組鉱山・化学・エネルギー労組(IG BCE)は、サービス業の分野にも「各産業内または各産業に近接するサービス業」と位置付けて強い関心を示し、将来の成長部門である通信、情報技術部門への進出を狙っているが、この部門では Verdi の利益代表範囲と特に重なることになり、強い警戒心を抱いている。この2有力労組は、既に他の3労組とともにサービス業部門で Verdi に対抗して連帯して行くことを決めているが、このような Verdi との対抗関係は、今後更に強くなると予測される。

1999年 DGB に統合されている4個別労働組合、OTV、メディア、HBV、郵便労組、DAG が、一つの共通したサービス業労働組合に合体することを決議した。

労働組合の数:DGB 傘下に12の産業別組合が組織化されている。さらに、ドイツ職員労働組合(DAG)やドイツ公務員同盟(DBB)やキリスト教労働組合(CGB)がこれに加わっている。組織率は DGB の傘下では28.4%、その他の労働組合では合わせて約6%である。

組合員数は1999年12月末において DGB 労働組合の傘下で804万人で、これは3.93%の減少、減少カーブは、前年に比べ若干緩やかになっている。落ち込みが特にひどいのは東ドイツである。

DGB 労働組合は、1991年以後あわせて組合員の約3分の1(31.9%)を失った。組合員数は、1180万人から804万人に減少した。

1998年、木材とプラスチック労働組合が、マイナス8.4%の比較的大きな落ち込みを経験した。これは、組織の変化と関係があるかもしれない。この場合は、2000年の初めに金属産業組合に吸収された。

警察労働組合は、1.5%の比較的小さな減少にとどまった。

西ドイツ企業のわずか16%、東ドイツ企業の14%しか経営協議委員会を持っていない。数値は企業規模とともに高くなる。従業員1000人以上の企業は、99%で優れた企業利益代表者を有している。経営協議委員会のない所は、とりわけ従業員50人以下の小企業に多い。このような所では、企業の90%以上が経営協議委員会を持っていない。

表:ストライキに参加した労働者数、参加企業、労働損失日数
  1996年 1997年 1998年
参加労働者数 16万5721人 1万3472人 4286人
参加企業 200社 144社 46社
労働損失日数 9万8135日 5万2896日 1万6102日

出所:Statistisches Bundesamt(連邦統計局)資料

代表的な使用者団体はドイツ使用者連盟(Bundesvereinigung der Deutschen Arbeitgeberverbande:BDA)である。BDA は15の地方組織、47の業種別・産業別使用者団体を加盟メンバー(個別企業は直接のメンバーではない)とし、1000以上の使用者協会を間接的に傘下におき、ドイツの民間企業従業員の80%をカバーする組織である。業種別・産業別使用者団体は業種別・産業別労働協約の交渉、締結を主要な目的として活動しており、地方組織は主として教育問題を扱っている。

1998年1月、労働政策が大幅に変更された。これは1969年以来続けられていた労働市場政策の法的根幹である雇用促進法(AFG)が、前政権により総括的に改正され、社会立法法典IIIに組み入れられたことによる。

重要な改正点はつぎのとおりである。

  • 労働市場政策の分散化:労働に関する要求事項の10%については、まったく自由に対策を講じることができる。
  • 就業志願者の職業教育あるいはモティベーション判定に関する訓練プログラム
  • 企業側にリスクを与えることなく失業者の試用を可能にする契約
  • 新規設立企業への雇用のための補助金は、営業年数2年以下の小企業(従業員数5人まで)に対し、従業員2人までの賃金補助を求める権利を保障するものである。

つぎに最近の特徴的な労働政策について以下に概説する。

1.高齢パートタイム労働者法の制定

1997年に制定された高齢パートタイム労働者法によると、高齢のパートタイム(フルタイムの50%)労働者(55歳以上で、過去5年間に少なくとも1080日間社会保険の適用される就業を行った者)を雇用し、フルタイム労働者の賃金(手取り)の70%、フルタイム労働保険料の90%を支払い、職場に空きがある場合に失業者あるいは見習い労働者を雇用している使用者は、雇用庁から最長5年間、パートタイム労働者の賃金の20%と年金保険料をフルタイム就労年金保険料の90%まで補填する補助金を受けることができる。この制度は、賃金契約に基づく次のようなケースにも適用される。すなわち、第1期2.5年はフルタイムで働き、第2期の2.5年はまったく就労していないケースである。

現在、25業種の大部分の企業において高齢パートタイム労働者の賃金契的に関する協定が結ばれ、パートタイム労働法の不備な点は改善されてきている。原則として、55歳以上の高齢パートタイム労働者の半日就業については、所得は旧所得の85%に、年金保険料はフルタイム年金保険料の90%になるよう補填される。

2.「雇用のための同盟」

1998年秋新しく選出された内閣、ドイツ社会民主党(SPD)と90年連合・緑の党の連立内閣は、大量失業対策を内閣の主な課題にすると表明し、その第一ステップの一つとして、1998年末までに雇用と教育のための同盟を結成した。その同盟には、連邦政府の代表者と並んで経営者団体や労働組合の代表者も加わっている。その調整は連邦首相のもとで行われることになった。

これまでトップ会談が5回行われた。その結果が以下に簡単にまとめられている。同盟パートナーは、2000年1月の共同声明の中で、懸案の2000年賃金交渉を考慮して、雇用本位の長期賃金政策に賛成を表明した。その際、生産性向上によって自由に使える分配余地が、雇用効果のある協定のために優先的に利用されることになっている。賃金担当当事者はそれぞれの責任の範囲内で必要不可欠な業種別区分を取り決める。

1999年7月6日のドイツ使用者団体全国連合(BDA)と DGB の共同声明の中で、賃金当事者は、一律賃金協約をさらに改革することに賛成を表明した。これは、必要不可欠な業種別区分を容易にするものと思われる。一律賃金の経営的、実務的規定を強めるためには、賃金の選択、賃金協約の論理や受け入れ易い条項を広げなければならない。その他、賃金当事者は、一律賃金協約に基づいて、従業員が企業レベルで事業業績により深く関与できるよう努力することに合意した。

さらに、長期被保険者が期待できるような条件で、雇用効率上職業生活から早めに引退することを可能にする方法を見出さねばならない。

同盟パートナーは、2000年1月9日の共同声明で、懸案の2000年賃金交渉を考慮して、雇用本位の長期賃金政策に賛成を表明した。その際、生産性向上によって自由に使える分配余地が、雇用効果のある協定のために優先的に利用されることになっている。賃金担当当事者はそれぞれの責任の範囲内で必要不可欠な業種別区分を取り決める。

そのうえ、賃金当事者は、雇用効率上残業時間の削減にも賛成を表明しており、適切な賃金協定の合意を目指して努力するという課題を自らに課した。その際、特に大事なのは、企業体の労働計画策定に柔軟性を付与するための労働時間計算とパートタイム労働のより魅力的な形態である。

同盟において、初めて結ばれた協定は、従業員男女合わせて50人までの中小企業において、高年パートタイマーの利用によって空いた職場を再補充し易くしたり、パートタイマーを高年者パートタイムに算入したりし易くすることであった。

また、関連規定が法的に変更された。さらに、労働時間については、労働時間帯や年間労働時間に関する賃金協定および年間、長期、生涯労働時間計算の実施ならびに企業による生涯教育と再教育の適切な組み合わせなどが、焦点となっている。それらがまだ行われていない限り、賃金協約当事者は相応しい協定に向けて努力する。

1999年連邦政府が始めた青少年の資格認定と雇用緊急対策は、大成功であったことが実証された。10万人の青少年に教育や資格認定あるいは雇用を提供しようというその目標は、1999年5月既に達成された。1999年12月末までに約22万人の青少年が、緊急対策措置を受けた。この対策はヨーロッパ連合の雇用政策ガイドラインと一致している。また、これにはヨーロッパの社会基金からも資金が出ている。成功した結果、連邦政府は、本年の緊急対策を延期することに決定した。

3.若年労働者の失業対策

新政権は1998年末に若年働者の失業対策に関する緊急プログラムを決議したが、これは25歳以下の10万人の若者に職業訓練の場あるいは職場を提供するというものである。緊急対策には、賃金補助、学校教育での不足を補う教育プログラムなどへの財政援助や、職業選択の助けとなる職業訓練の資金援助、職業再教育(他業種への進路変更)の促進が含まれている。

4.外見自営業に対する修正規則

ここ数年来、外見自営の問題が雇用政策上の議論にのぼるようになってきており、その重要性が高まっている。つまり、外見自営の概念を定義し、雇用関係にある職と真の自営との間の境界線の明確化の問題である。雇用関係の中で働いている多くの人々が、雇用関係から追われ、単に今までとは違う法的関係になっただけで、独力で、すなわち、健康保険、年金保険、介護保険、傷害保険、失業保険の法的な保護なしに、それまでと同じ仕事を行っている。彼らはこれまでと内容的に同じ仕事を遂行しながら、自営の活動に通常は見られるような特徴をもたない活動に対して、企業家としてのリスクを完全に負っている。

真の自営の利点は彼らにはない。収入が低いために、こうした就業者層には私的保険をかける経済的ゆとりはない。加齢、疾病、失業といった危険が一般に広がっている。さらに、副作用として、法的社会保険が回避されることで、財政基盤が徐々に侵食されている。1999年4月に連邦政府は、連邦労働裁判所の当時の総裁が議長となって招集した委員会で、社会保険での修正と雇用者権利の保障という2つの議論のわかれる事項について検討した。このテーマは、1つには自営と非自営の区分に関わり、他方では自営と類似している雇用者に対する年金保険義務の規則に関わっていた。委員会によって提出された新規則は次の5つの基準のうち、3点以上に該当するものは雇用者とすることを予定している。

  1. その者は、保険加入の義務のある雇用者として就業していないが、その収入は、継続的に月額630マルクを超えている。
  2. 継続的にそして本質的に、ただ1人の依頼主のもとで働いている。
  3. その依頼主ないし依頼主にあたる者は、対応する活動を、その者によって雇われた雇用者に通常は行わせている。
  4. その活動に企業家的行動の典型的な特徴は見られない。
  5. その活動が、以前同じ依頼主から雇用関係のもとに行われていた活動と外見上対応している。

自覚促進のための法律によって、立法者は実際的な解決策を導入した。

5.630マルク法による労働市場政策の強化

1999年4月以来、激しく議論された僅少労働改正法が施行された。実践経験が増えるにつれて、当初の感情的で激しい議論は静まってきた。立法者の期待は、広範に達成された。逆に、サービス業が沈滞してしまうのではないかといった悪いシナリオは確認されなかった。新聞は毎朝到着し、朝食のパンも毎朝運ばれる。多くのレストランが人員不足で閉店するということも見られなかった。新法によって、弾力性を損なうことなく労働市場に秩序をもたらすことに成功している。市場は機能し、新しい法津と折り合っている。社会保険システムに空洞化が忍び寄るのは押しとどめられた。

法律の契機となったのは、保険義務のない、あるいは僅少な雇用関係の突然の爆発的増大であり、それは650万人、全雇用者の20%の規模に達した。保険義務がないのは、週15時間未満か月額630マルクに収入が達しない雇用関係の場合である。使用者は、仮に20%の税金だけを支払えばよかった。この規則は、通常のパートタイムや正規雇用、そしてとりわけ残業にたいして、コスト面でも収入面でも、副業を有利にした。そこで、保険加入義務のあるものも、保険義務のない雇用に分裂していった。

こうした正当性の欠如は新法によってなくなった。この法律は、季節労働を別にすれば、僅少な主たる雇用関係と副次的雇用関係を区別し、税金と社会保険の権利について区別している。もっぱら僅少労働で就業している人には、税の仮徴収は行われなくなった。そのかわりに、使用者は、新しい給付の請求権をもつことなく健康保険(10%)と、給付に対する請求権のある年金保険(12%)を支払わなくてはならない。これらの就業グループについては、新法への変更では、収入も労働コストも問題にならない。ところが、副業として僅少労働を行う就業者では場合がまったく異なる。副業の枠内で獲得された所得については、通常の課税義務があり、通常枠内で社会保険の義務がある。以前の状況に比べれば、労働コストは増大し、実総収入は減った。こうした負担によって、批評家は、この法律を職場を破壊するものとして批判しようとした。1年の実践の後に我々は、新法から何を学んだだろうか。

経験的に大規模に実施された研究は、おびただしくはびこっていた懐疑の温床を取り去った。僅少労働者数は、10%、70万人だけ減少した。この数は、ほとんどもっぱら副業者数と考えることができる。すなわち不正利用率が減少したのである。申告漏れは縮小し、もっぱら家事の分野に集中している、予測値では、約70万人がこの分野で無申告で働いている。多くの批評家が恐れていた闇労働への移動も起こらなかった。残念だったのは、労働量を増し、社会保険加入義務のある雇用関係に移った割合が2%とわずかだったことである。また、年金保険掛け金を自発的に増資するチャンスは、ほとんど利用されていない。年金保険と健康保険の加入増は、立法者の予想を超えるものがあった。1999年に約40億マルクの掛け金が支払われた。約350万人の僅少労働のみを行う者に対しては社会保険掛け金が支払われた、これは将来給付請求権のもとになるものである。社会保険システムの空洞化の危機は有効に阻止された。

徹底的に提示された決算にもかかわらず、僅少労働という根本悪は残っている。法律は、630マルクという枠を設けることと、主婦を税制から逃れさせたことで、単身の、あるいは1人で子どもを育てている女性を不利に扱っている。

参考資料:

  1. WSI-Befragung von Betriebs-und Personalraten 1997/98 (ドイツ経済研究所・企業/従業員委員会へのアンケート)
  2. Statistisches Bundesamt (Stat. B. A.) (連邦統計局)、Bundesanstalt fur Arbeit (連邦雇用庁)、Sachverstandigenrat (専門家委員会) の資料
  3. Institut fur Arbeitsmarkt-und Berufsforschung (IAB) (労働市場と職業調査研究所)
  4. Sachverstandigenrat; WSI-Tarifarciv (社会経済研究所/専門家委員会の賃金記録文献)

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※2002年以前は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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