基礎情報:ドイツ(2004年)

基礎データ

  • 国名:ドイツ連邦共和国 (Federal Republic of Germany)
  • 人口:8,250万人 (2004年)
  • 経済成長率:1.6% (2004年)
  • 一人あたりGDP:2兆1770億ユーロ (2004年)
  • 労働力人口:3,839万6千人 (2004年)
  • 失業率:10.5% (2004年)

資料出所:外務省「各国・地域情勢」、ドイツ連邦統計庁、ドイツ連邦雇用機関

I. 2004年の動向

(データのうち、出所の断りのないものはドイツ連邦統計局の発表による数字である。)

1. 統計データ

1.経済指標

1990年の東西統一以来歴史的な低成長を記録した03年(実質GDP成長率マイナス0.1%)に比べると2004年は、再び成長軌道に戻る兆候が見えてきた年である。ただし足取りは弱く、05年に向けて景気回復が順調に進むかどうかは微妙な情勢である。

04年の対前年比・実質GDP成長率は1.6%(05年2月発表)で、最近では2000年の対前年比2.9%に次ぐ数字である。しかし四半期ごとの数字(対前年同期比較)を見ると、第1四半期1.6%、第2四半期1.9%と伸びを示した後、第3四半期1.2%、第4四半期1.5%とペースを落としている。05年に入ると、同年の成長率予測は下方修正されてきており、回復の流れは確実とはいえない状況だ。04年の景気回復には世界経済の動向と好調な輸出が寄与しているが、内需の拡大に結びついていない傾向が続いている。

04年の労働生産性は対前年比1.2%上昇した(95年価格で算出した就労者1人当たりGDP値の伸び率)。

2.労働市場動向

ドイツ連邦雇用機関(BA)の発表による2004年の年間平均失業者数は438万1000人(対前年比4000人増、千人単位)であり、失業率は10.5%と03年と同じであった。ただし、2004年からは、職業適性・訓練措置(職業適性を高め、職業養成訓練へ向けての知識・能力をつけることを目的とする短期プログラム)の対象者(2004年で約9万5000人)を失業者数から除外しているため、実質的には増加していると見るべきである。

04年の東西の内訳は、西地域278万1000人(失業率8.5%)、東地域160万0000人(18.4%)で、03年と比べ大きな変化はなく、東地域の失業率は西地域の2倍を超えている。

失業者の男女比は、男性244万9000人、女性193万2000人。階層ごとに見ると、長期失業者が168万1000人と多く、対前年比でも約16万人増加している。25歳以下の失業者は50万4000人(対前年比で約1万2000人減少)だった。

連邦統計局が発表している04年の就業者人口(ドイツにおける居住者ベースの「生業活動者」、年間平均)は、05年2月28日に発表された新計算方式による数字では、3877万7000人で、前年に比べ14万2000人増加した。同じ方式によると、03年は対前年比で35万9000人減少していたため、03年を底として、就業者が増加に転じたと見られている。なお、旧計算方式による数字は、04年3839万6000人(対前年比13万1000人増)、03年2826万5000人(対前年比37万7000人減)で、04年の数値上昇の傾向に変わりはない。

3.賃金・労働条件

すべての被用者を対象とした04年の一人当り年間平均賃金は2万7700ユーロで、前年の2万7600ユーロとほとんど変わらなかった。連邦統計局の資料によれば、一人当たりの単位労働コストは、04年には対前年比マイナス1.1%と下落しているという(03年は対前年比0.7%の増加)。これに対し労働協約賃金は、04年において、月当たり賃金を支給される職員層、週当り賃金を支給される現業労働者層とも、それぞれ対前年比2.0%増加したとしている。

04年の就業者人口ベースの年間平均労働時間は、IAB(労働市場・職業研究所)によれば1453時間で、前年の1445時間と比べ0.5%増と、微増傾向を示している。03年時点で、90年代以降一貫して減少する傾向にあった労働時間が微増に転じていたが、04年のデータは、その傾向をよりはっきりと予想させるものとなった。

2. 労使関係と賃金協約

WSI(ハンス・ベックラー財団付属経済社会科学研究所)によると、04年における平均賃上げ率は2.0%で、東独地域2.5%、西独地域1.9%だった。各産業別労働協約の賃上げ率は、概ね1.5~2.0%の範囲内にある。同研究所の労働協約についての年次報告によれば、04年は労働組合側にとって「守勢の」年であった。それは2月に妥結した金属産業労働協約交渉とその後の同産業の大企業の動きに象徴されているという。

具体的には、週35時間の労働時間規定は変わらないものの、部分的に労働時間延長を認める弾力的な取り扱いを定め、事業所の裁量の余地が拡大した。専門的な資格をもつ従業員の比率が高い事業所では最大50%まで週40時間制を適用することができ、さらに「技術革新を進めるため」あるいは「専門的技術者が不足している」特別な場合には、IGメタル(金属産業労組)の同意を必要とするものの、賃金割増なしで40時間制を導入できるとしている。この協約締結後、4月に電機大手ジーメンス、6月に自動車大手ダイムラー・クライスラーで会社側が一部事業所での労働時間延長を提起し、激しい議論が展開された。

なお、金属産業労働協約による賃上げ水準は、04年3月から2.2%(うち0.7%はERA=報酬基本労働協約=により労働者と事務職等職員の賃金格差是正のためのコストに充当)、05年3月からは2.7%(うち0.7%は同様にERAのためのコストに充当)で、協約は06年2月まで有効である。

このほか、化学産業では、西独地域で04年6月から05年5月まで1.5%の賃上げおよび従前の月収の7.2%の一時金支給で労使が合意した。東独地域では、西独地域水準の賃上げに加え、西側との格差是正のために、04年10月から1.7%、05年10月から2.5%の賃上げを定めている。

04年後半は、企業レベルでの雇用保障問題が大きく注目された。大手百貨店グループ「カールシュタット・クヴェレ」は10月、従業員の賃金・手当の一部削減と引き換えに会社側が向こう3年間の雇用を保障することで労使が合意した。経営危機に瀕した同グループの事業再編計画にはドイツ国内の小規模店舗の整理などが盛り込まれ、今後見込まれる5500人の職場ポスト削減については、企業内移動やアウトプレースメントなどで雇用を確保するという。

業績が長期間低迷しているオペル社でも、親会社の米GM(ゼネラル・モータース)が1万人の雇用削減を打ち出し、社会問題に発展した。04年末の段階では、オペル社ドイツ国内従業員約3万2000人のうち最大1万人の雇用削減を、雇用確保のための受け皿組織の設置など「企業理由による解雇」以外の方法で削減することで労使が部分合意している。

具体的な人員削減計画には至らなかったものの、労働条件と雇用保障が交渉のテーマとなった事例としては、11月初旬に締結されたVW(フォルクスワーゲン)の労働協約交渉がある。同社では会社側と産業別組合が「社内労働協約」を結び労働条件を決定しており、その結果は産業別協約同様に注目されている。今回は、会社側が長期的なコスト削減計画をもとに人件費の圧縮を主張し、その結果、07年1月まで賃上げは実施されず(05年3月に1000ユーロの一時金支給のみ)、代わりに2011年まで約10万3000人の国内従業員の雇用が保障されることとなった。このように、雇用保障への関心は高まっており、雇用情勢が著しい改善を見せない限り、今後も労使交渉の主要テーマになると考えられる。

3. 労働市場改革法に関する動き

失業者および生活保護対象者に大きな影響を及ぼす施策(ハルツ第IV法)は、03年12月に労働市場改革各法とともに成立し、05年1月の施行を予定して、細則が整備された。同法は「失業扶助」と「社会扶助」(生活保護手当に相当)を統合して「失業給付II」を創設することを定めている。

その目的は、失業保険による通常の失業給付の受給を終了した長期失業者や、就業能力のある社会扶助受給者を労働市場に呼び戻し、失業の減少と就業率のアップを目指すことである。しかし、通常の失業給付期間を過ぎてからも、以前の収入の5割以上を期間の制限なしに受給できる「失業扶助」を得ていた長期失業者にとっては、今後、給付額が減り、また厳しい資産査定が必要となるなど、条件が低下するケースが多い。また、新たな失業給付II対象者は、職業安定所を改組した職業紹介機関(Agentur fuer Arbeit、通称ジョブセンター)が紹介する仕事を正当な理由なしに拒むと、給付を制限されるなど規程が厳しくなっている。8月以降、失業の多い旧東独地域を中心に、毎週月曜に抗議デモが組織されるなど社会問題化し、連邦政府は、国民に詳細を説明し理解を求めた。

新制度のポイントは以下のとおりである。

  1. 55歳未満の失業者は12カ月、55歳以上は18カ月の失業給付期間を過ぎると「失業給付II」を申請する権利を得る。就業能力のある社会扶助受給者も同様である。病気や障害などによって働けない人は、これまでの社会扶助に相当する「社会給付」を受け取る。
  2. 職業紹介機関(ジョブセンター)が紹介する仕事を正当な理由なしに拒むことはできない。勤務地が遠い、(産業別)労働協約賃金以下である、従前から持っている職業資格が反映されない-なども拒否理由にできない。拒否したうえ、自分でも仕事を見つけられない場合、失業給付IIの受給を3カ月にわたって減額される。
  3. 失業給付IIと社会給付の月額は、旧西独地域で345ユーロ、旧東独地域で331ユーロ。配偶者がいる場合、西で331ユーロ、東で298ユーロがそれぞれ加算される。子供がいれば、さらに加算措置がある。このほか、ジョブセンターは必要に応じ、対象者の家賃、暖房費、家具備品、被服費などを支給する。なお、失業保険による失業給付(前職の収入をもとに算定)からの落ち込みを緩和するため、失業給付II移行時から2年間は別に一定の補助金が出る。
  4. これまでの社会扶助受給者の多くは、失業給付IIの支給対象にならない可能性がある。本人のもつ資産が査定されるだけでなく、家計を共にする配偶者の収入も計算に入れられるからだ。支給対象となるには、資産が1歳につき200ユーロ、たとえば40歳であれば8000ユーロ以下でなければならない(15歳以上の場合、4100ユーロまで許容される)。配偶者が加算支給を受ける場合も、同じ計算で資産が制限される。住居、車については、「適当な」ものの所有が認められる。住居の部屋数や面積など、一定の基準が設けられている。
  5. 失業給付II受給者が、公共・福祉部門などが提供する「1ユーロ・ジョブ」(時給1~2ユーロ前後の低賃金の仕事)あるいはその他の労働に従事した場合、一定の収入までは失業給付IIを受給する権利を失わない。その範囲は、月収1500ユーロまでである。失業状態から就業生活への円滑な移行のためとされる。
  6. 失業給付II対象者には、年金の掛金が援助され、将来法律に基づいて老齢年金を得ることができる仕組みとなっている。ただし、私的年金については、積立額が一定水準を上回ると、資産査定の対象となる。

II 分野別動向

1 職業訓練ポスト不足問題と「職業訓練協定」の締結

ドイツの「デュアルシステム」は、対象者が義務教育終了後、職業学校に通いながら、併行して企業内職業訓練を受ける二元的なシステムであり、若年層の失業率が他の世代に比べて低く推移していることなどから、有効なシステムとして評価されてきた。しかし、企業が提供する職業訓練ポストの不足が、現在大きな問題となっている。同システムにおいては訓練の実施が企業に委ねられているため、訓練コストの負担感が高まっているのが現状だ。

シュレーダー政権はこの問題の解決を図り、職業訓練の場を提供しない企業に対して課徴金の支払いを課す「職業教育訓練保障法案」を、5月初旬に下院に相当する連邦議会で可決した。この法案によれば、企業は従業員数の7%に相当する訓練生を受け入れなければならず、これを下回ると課徴金賦課の対象となる。しかし、法案の連邦議会通過は労働組合側の支持を得たものの、経済界の反発が強く、連邦参議院(上院に相当)での審議を前に、法律による強制的な措置ではなく、自主的な協定を結ぶという解決方法が模索された。

その結果、ドイツ政府と経営側4団体は6月中旬に、06年まで新たに毎年3万人の職業訓練ポストを創出する内容の「職業訓練協定」を結んだ。これにより、職業教育訓練保障法案の成立へ向けての作業は停止され、05年秋に改めて必要な措置などを検討する予定である。職業訓練協定には、政府側からW・クレメント経済労働相、経営側からBDI(ドイツ産業連盟)、BDA(ドイツ経営者連盟)、DIHK(ドイツ商工会議所)、ZDH(ドイツ手工業会議所)のトップがそれぞれサインした。

同協定によると、04年から06年までの間に、経営側は年平均3万の新たな職業訓練ポストを用意することを「義務づけられた目標」とする。このほか、訓練ポストの獲得が困難な若年者層を対象に、6~12カ月の資格付与のための訓練ポストの提供も盛り込んでいる。この短期の訓練ポストは年間2万5000とし、企業は人件費を負担するが、連邦雇用機関が対象者の生計費を助成する。さらに、連邦政府は自ら提供する職業訓練ポストを04年に20%増やすこと、東独地域の職業訓練プログラムが04年に1万4000人を対象に続行されることなどが柱だ。

この協定化に対して、野党CDU(キリスト教民主同盟)の議員からは「提案を文書化しただけで(訓練ポスト創出の)保証はない」という疑問の声が出ている。労働組合側も、DGB(ドイツ労働総同盟)のM・ゾマー会長が「10万人の若者が訓練ポストを捜しているか空きを待っている」とし、3万人のポスト提供をうたうことで、経営側が「問題を話題に上らないようにし、因果関係をぼかそうとしている」とし、法律による訓練ポスト数の確保を求める立場を強調した。

なお、協定締結直後の訓練ポスト市場の動きは、必ずしも改善されていない。連邦雇用機関によれば、9月末時点で4万4600人の希望者が訓練ポストの紹介を受けられずに残っている。これに対し空いている訓練ポストが1万3400あり、それを差し引いた不足数は3万1200となる。この現状について、経済界は、訓練ポスト不足は希望者の増加が原因であり、「製造業・商業・手工業分野で前年に比べ職業訓練契約が1万3200人分増えた」として、ポスト数自体の増加を強調している。これに対してIGメタルは、合計13万人の若年者が訓練ポストを探すも徒労に終わっている」と批判している。

2 新移民法の成立

ドイツには、03年末現在で約733万5000人の外国人が居住している(全人口に占める比率は8.9%)。欧州では外国人数が最も高く、外国人比率も英国やフランス(英3.4%、仏6.1%、ともに99年。OECDによる)に比べ高い。英・仏では旧植民地出身の外国人が多くを占めるのに対し、ドイツでは高度成長期のトルコ人を中心とする外国人労働力の受入れ、90年代のドイツ系を含む東欧からの移民などが中心である。

旧西独では60年代に外国人労働力受入れが最盛期を迎え、73年にはオイルショックを契機として新規の外国人労働者募集が中止される。それ以降、政府は、外国人労働者に対して、抑制的な政策を取ってきたとされる。その背景には、既住の外国人の家族呼び寄せ、東西冷戦の終焉やバルカン半島情勢の悪化による東欧からの難民受入れなどにより、外国人数が増加の一途をたどった事実がある。70年当時4.9%だった外国人比率は、80年代に7%台となり、90年代中盤まで増えている(久本憲夫「ドイツの外国人と新移民法」、『国際経済労働研究』2003年2月号による)。

これに対して、ITなど専門性の高い分野では、高い資格をもつ外国人労働力導入の必要性が主張され、2000年には、これらの労働力を対象とする「グリーンカード」のシステムが導入された。また、外国人の在住許可の簡素化をはじめとした移民、難民受入れ制度の整備を目的とする「新移民法」が、01年11月の法案提出以降、議決方法をめぐる問題などにより長期にわたる検討を経た後、04年7月に可決された。

新移民法は、専門的・高資格労働者の積極的な受入れ要素をもつ一方で、経済移民一般の受入れ要件を厳しくしたものとなっている。この新移民法は02年3月に連邦参議院で可決、03年1月より施行される予定だった。しかし同院における議決方法が憲法裁判所で「違憲」とされ、その後与野党の度重なる調整を経て、今年7月にようやく可決、05年1月より施行される運びとなった。

同法によって、外国人受入れから国内統合プロセスまでの流れが整理された。これまでは「有期および無期の滞在許可」「滞在権」「滞在承認」「滞在資格」と分かれて複雑だった認可の制度は、有期の「滞在許可」、および期限を定めない「居住許可」の二つに統合される。これらの認可業務は、旧来の関係組織を改組して新設される「連邦移民・難民局」が行う。その主な任務は、1)外国人の「中央登録」の実施、2)教育など統合プログラムの展開と実施、3)自由意思による帰国促進措置の実施、4)連邦雇用機関など関係機関との労働移民に関する情報協力――などである。

労働力移入に関しては、高資格労働者(エンジニア、情報技術者、数学・科学関係の専門家、教育・研究者など)について、当初から継続的な滞在を想定し、期限を定めない「居住許可」の付与を定めている。一方、それ以外の労働者は、原則として73年以来の「募集停止」状態が継続され、例外は、外国人労働者の雇用に「公共の利益」が認められる場合や東欧各国との協定に基づく受入れなど、限定的である。なお、移民受入れの制度化を促進するために当初法案に盛られていた「点数制」導入(資格などを点数化し、最適な外国人受入れ選択手続きを実施する)は、移民に抑制的な立場を取る野党CDU・CSU(キリスト教民主・社会同盟)の反対で削除されている。

自営業者の受入れについては、ドイツ国内で「100万ユーロ以上の投資および最低10人の雇用創出」の条件を満たせば、「滞在許可」(有期)が付与される。学生に対しても、学位取得・卒業後に就業する道が開け、求職活動のため卒業後最長1年ドイツ滞在を許可される。これらの「滞在許可」および「居住許可」取得のためには、これまでは労働許可と別個に手続きしなければならなかったが、労働管理機関の同意を前提に、外国人担当機関が一括して取り扱うこととなった(いわゆるワン・ストップ・サービス)。

高資格労働者の受入れについては、今回の新法に先んじて、IT技術者を主な対象とする「グリーンカード制度」が00年8月より省令によって導入されていた。対象者はIT分野で大卒程度以上の資格をもっているか、同分野で年間10万マルク(当時。約5万ユーロに相当)以上の年収を得る条件で労働契約を結んでいることが必要とされた。この制度自体は、05年の新移民法施行に伴い、04年末で役割を終えた。過去4年間で付与した労働許可件数は1万7000件にとどまり、政府が予定していた「最大2万件」には及ばなかった。制度導入後、ITバブルの崩壊、米国テロ事件などにより景気が低迷したことも、制度が最大限に機能しなかった原因と考えられている。新移民法で予定している高資格労働者受入れについて、連邦政府が設けている移民問題評議委員会は、05年にドイツ国内で2万5000人の需要があると報告している。同委員会はドイツが高失業状態であるにもかかわらず、高資格の「適切な、特定の労働市場にマッチした」移民労働者が必要であると指摘した。今後、ドイツでは、人口の動きと労働市場の動向を背景に、新移民法施行後の政策評価・検討が進むと考えられる。

3 労働組合の現状

ドイツ労働運動の中心は、DGB(ドイツ労働総同盟)が担っており、2004年の組織人員は約701万3000人である。2003年には約736万3000人であったため、およそ35万人減少していることになる。このほか、全国組織としてDBB(ドイツ官吏同盟、約125万8000人、03年)およびCGB(ドイツ・キリスト教労組連盟、約29万8000人、03年)がある。

DGBの組織人員はドイツ統一以降、一貫して低下傾向にある。統一後はとくに東独地域の景気低迷と企業再編による雇用者数の減少が響いていた。最近になっても、ドイツ全体の景気低迷と産業構造の変化、企業のグローバル化への対応などの要因により、低下に歯止めがかからない状態にある。1999年に約803万7000人だった人員は、2000年に約777万3000人と800万人台を割り、01年にIT関連の好況で一時的に微増したものの、02年に約770万人と再び減少し、それが続いているといえる。

DGBは現在8つの産業別労組で構成されている。統一後しばらくは16の産別が存在したが、組織人員の減少と、90年代から現在にかけて続いた労働条件決定の産業別レベルから個別企業レベルへの移行の流れは、産別労組の運営の合理化と経費削減を余儀なくさせた。その結果、産別再編が加速し、01年には、公務・運輸・交通労組(OTV)、商業・銀行・保険労組(HBV)、郵便労組(DPG)、メディア労組(IG-Medien)のDGB傘下4産別と、それまでDGBに加盟していなかったドイツ職員労組(DAG)が合併し、当時で300万人以上の人員を有する巨大産別、統一サービス産業労組(Ver.di)が誕生している。

Ver.diは現在もDGBの最大産別であり、DGB現会長のミヒャエル・ゾマー氏は同労組の出身だ。しかし、組合員は04年時点で約246万5000人と減少しており、DGB内組合員比率は35.1%(03年は35.5%であった)となっている。これに対し、Ver.di誕生まで最大であった金属産業労組(IG-Metall)は、04年時点で約242万5000人と、組合員数は前年に比べ減ったものの、減少率はver.diより少なく、DGB内組合員比率は34.6%で前年を上回っている(03年は34.3%)。


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※2002年以前は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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例) 出典:労働政策研究・研修機構「基礎情報:ドイツ」

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