基礎情報:ブラジル(1999年)
※このページは、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。
1.一般項目
- 国名
- ブラジル連邦共和国
- 英文国名
- Federative Republic of Brazil(South America)
- 人口
- 1億5707万163人(1996年)
- 面積
- 854万7403平方キロメートル
- 人口密度
- 18.38人/平方キロメートル(1996年)
- 首都名
- ブラジリア(Brasilia)
- 言語
- ポルトガル語
- 宗教
- カトリック、エバンジェリカ(Evangelica)
- 政体
- 連邦共和国、大統領制
2.経済概況
- 実質経済成長率
- +0.79%(1998年1~9月)+3.03%(1997年)+1.35%(1996年)+2.76%(1995年)
- 通貨単位
- レアル(Real) 1レアル=87.43円(1999年10月)
- GDP
- 7788億2035万レアル(1996年)
- 1人当たりGDP
- 4945レアル(1996年)
- 消費者物価上昇率
- 内国消費者物価指数2.06%(1998年)
- 主要産業
- 大豆、オレンジ、砂糖、自動車、鉱業(鉄鉱石)、製造業
3.対日経済関係
- 対日主要輸入品目
- 乗用車、金属加工機械、通信機、自動車部品、有機化合物、原動機など
- 対日輸入額
- 2600百万ドル(1998年) 2945百万ドル(1997年) 2219百万ドル(1996年)
- 対日主要輸出品目
- 鉄鉱石、アルミ・同合金、鉄鋼、パルプ、大豆、肉類、有機化合物、果実など
- 対日輸出額
- 2890百万ドル(1998年) 3768百万ドル(1997年) 3766百万ドル(1996年)
- 日本の直接投資
- 1450.6億円(1997年) 993.5億円(1996年) 287.1億円(1995年)
- 日本の投資件数
- 34件(1997年) 34件(1996年) 38件(1995年)
- 在留邦人数
- 8万6906人(1997年10月)
出所:『ブラジル年鑑 1997年』、ブラジル地理統計資料院、[日本] 大蔵省(財政金融月報、外国貿易概況)、外務省(海外在留法人数調査統計)
4.労働市場
1.労働市場の概況
1994年7月1日の経済安定計画発令まで、慢性的な高インフレのために、労使ともにうまくインフレに乗ることが重要視され、企業の生産効率や労働者の技能向上などは二の次と考える風潮が生まれていた。企業は景気次第で労働者を簡単に解雇し、労働者も働きながら職業紹介所には別に求職を申し込み、賃金の高い職が見つかるとすぐに転職し、1つの職場に長くとどまることは、挑戦意欲がないか、他の職場で通用しない労働者と見られる時代であった。
しかし経済が安定し、世界市場に組み込まれる産業が増加し、競争のためのコスト節減から人員整理が開始されるとともに、失業増加、就職難時代となり、ようやく労働者の間に現在の職を大事にする感覚が生まれつつある。また技術を持たない労働力の市場が縮少されており、労働者の間に技術を身に付けようと、訓練や講座を受ける者が増加している。
一度失業すると、再就職は非常に困難であるし、フォーマルセクターの就労者が年々減少して、社会分担金納入者が全就労者の50%以下となったために、政府はフォーマルセクターにおける就労を維持する政策を模索し、1998年には雇用を「一時中断」するという制度を導入した。同制度は以下のようなものである。
- 雇用維持が困難に陥った企業は、労組との協定で2~5カ月間に限って雇用契約を中断して、自宅待機させ、賃金支払いを中断しながら業績回復を待つ。
- この間に労働者は労働省の労働者保護基金から毎月100レアル(発令当時約84米ドル)を奨学資金として受け取り、職業訓練を受ける。訓練設備経費は企業が負担し、休業期間が終わればその日から正常に出勤する。
- 雇用一時中止期間を過ぎても市場が回復せず、そのまま解雇される場合は、休業期間中の賃金全部と、解雇に伴う正当な補償を受け取る。
経済開放によって、1997年までは工業部門で解雇される労働者が最も多かったが、1998年以降は商業部門における解雇が増加し、雇用が増加した部門はサービス業だけとなった。
労働法では14歳以下の児童の就労は禁止していた(見習いを除く)が、1998年12月に16歳以下の児童の就労禁止へと改正された。しかし実際には、義務教育を受けないで労働に従事している学齢期の児童が多いことが、国際社会から指摘されている。また労働者の学歴の差が大きいように、収入の格差も大きい。1996年に10歳以上の国民の13.61%は文盲、初等科8年以下の学力しかない国民が64.96%も存在する。このため1996年の10歳以上の国民1億2362万人のうち、3478万人は、最低賃金の2倍以下の収入、5129万人は収入なしとなっていた。技能を持たない労働者が多く、失業者が大量に存在する一方で、専門技術者は不足しており、設備を更新した企業、新規進出したハイテク部門は専門技術者確保に苦労している。
2.労働市場関連情報
- 労働力人口
- 10歳以上の経済活動人口、7312万101人(1996年)
- 労働力率
- 46.55%(1996年)
- 就業者数
- 6,804万206人(1996年)
- 雇用者数
- 248万4667人(1996年)
- 完全失業率
- 5.7%(1997年) 7.71%(1998年1~10月平均)(6大都市圏のみで調査)
- 失業者数
- 124万1000人(1998年10月、6大首都圏のみ)
注:ブラジル年鑑のデーターはアマゾン地区のパラ州を除く他の州は農村地帯の調査が困難なため、農村地帯の人口は除去して集計されている。
出所:ブラジル年鑑1997年、ブラジル地理統計資料院の資料
5.賃金
1.企業の一般的な賃金制度の概要
年功序列的賃金の考え方はなく、能力主義が優先する。しかし業種別の労使の年間労働契約によって、職種別に、また企業規模に応じて、業界の職種別最低賃金が決まっている。このために、成績の悪い労働者も職種の最低賃金以下にはできない。1997年までは業種別労使協定に従って年間賃金調整をしていた。しかし、1998年にインフレ率がゼロ近くなったために、企業が賃上げ要求に応じなくなり、年間調整ゼロの企業が増加している。また賃金には社会分担金が控除されるために、企業利益参加、あるいは生産性向上プレミアムとして支払い、分担金を回避する企業が増加している。
2.最低賃金
夫婦に2人の子供を有する4人家族が最低の生活を維持するのに必要な金額が1945年に最低賃金法によって制定された。その後、定期的に政府によってインフレ率を考慮した修正がなされてきた。1998年5月以来130レアル(1999年1月1日現在約108米ドル)となっており、大体毎年5月1日の労働者の日に変更される。全国共通で、すべての業種に適用され、年金支給の基準にも使用されている。現在の最低賃金は法令で定めた基本的な生活を維持する必要額には足りない金額に下がっている。
参考:1998年5月1日の最低賃金法
3.賃金関連情報
平均賃金
1996年の10歳以上の労働者の平均月額所得は289レアル(男性415レアル、女性172レアル)となっているが、地域間格差が大きく、東北部の平均は158レアル、最も発展した南東部は366レアルである。
また都市部の平均は331レアルだが、農村部は119レアルとなっている。なお10歳以上の労働力人口のうち、1591万8126人は最低賃金の1~2倍クラス、1553万4103人は半分から1倍、332万2891人は半分以下の収入となっており、経済活動人口の47.56%は最低賃金の2倍以下の月額収入となっている(1999年1月1日現在の最低賃金は約108.33米ドル)。
賃金上昇率
高インフレ時代には6カ月、あるいは年1回、過去のインフレ率に応じて自動的に調整され、強力な労組はインフレ・プラスアルファーを獲得していた。物価安定後は自動調整が法令により廃止され、労使の自由交渉になった。しかし労組の中には1994年以降の調整遅れとして補充を要求する行政訴訟を起こしているところもある。経済安定後も過渡期の減少分の見返りとしてインフレ分を自動調整する企業もあったが、最近は本給は据え置き、生産性向上分で調整する方法が増えている。法的な調整義務は廃止されている。
基礎情報:ブラジル(1999年)
- 1.一般項目、2.経済概況、3.対日経済関係、4.労働市場、5.賃金
- 続き1(6.労働時間、7.労使関係、8.労働行政、9.労働法制、10.労働災害)
- 続き2(11.その他の関連情報)
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- 基礎情報:ブラジル(2002年)(PDF:817KB)
- 基礎情報:ブラジル(2001年)(PDF:365KB)
- 基礎情報:ブラジル(2000年)
- 基礎情報:ブラジル(1999年)
※2002年以前は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。
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