基礎情報:ブラジル(1999年)・続き1

※このページは、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

  1. 労働時間
  2. 労使関係
  3. 労働行政
  4. 労働法制
  5. 労働災害

1.企業の一般的な労働時間制度の概要

法定労働時間に従って、就業時間は8時30分から12時、昼食時間をとって13時30分から18時という制度が一般的である。熱帯圏が多いために、リオデジャネイロや東北部、北部では以前、昼休みを2~3時間取るために朝は早く出勤し、夕方に遅く退社する制度をとっていたが、冷房の普及で次第に上述の一般的な時間帯になりつつある。

2.労働時間に関する法律

法定労働時間は原則として1日8時間、週48時間以内、連続24時間交替制の職種は1日6時間、労働終了時間から次の就労まで最低11時間の休息時間を置く。女性の深夜労働は原則として禁止。労働法は12歳以下の労働を禁止し、12~14歳以下の労働は見習い以外の労働を禁止していたが、1998年末に憲法改正案が国会を通過して、14歳以下は労働禁止、14~16歳は見習いとしてのみ許可と修正された。16歳以下を見習い以外の労働者として雇用すると369.58レアル(約308米ドル)の罰金が科される。義務教育就学中の労働者は通常勤務時間より30分早く退社できる。エレベーター、電話交換ボックスなど閉鎖された空間の勤務は1日6時間に制限される。

参考:総合労働法

3.企業の一般的な休暇制度(有給、無休)の概要

同一使用者のもとに雇用されている場合、勤続年数に関係なく12カ月ごとに30日間の休暇が与えられる。休暇の月の賃金支払いは3分の1の割増しが義務づけられている。また休暇は週末が終わって週日となる最初の日から数え、祝祭日の始めから数えない。休暇は分割できる。欠勤日数を休暇から控除することは禁止されている。一部の企業では年末年始など連休が多い時期に集団休暇を与えて休暇の一部を消化しているところもある。

参考:総合労働法

このページのトップへ

1.労働組合

中央労組CUT(Central Unica Dttrabalhador:労働者単一センター)。連邦、州、市の公務員労組、公社労組を主体に金属、化学、銀行など強力な労組が参加しており、CUT本部では2702組合、1926万7953人の労働者を傘下に有すると発表している。

2大中央労組の一方といわれるForca Sindical(組合の力)は加盟800組合以上、加盟組合員は600万人と発表している。

出所:CUT及びForca Sindicalのパンフレット

2.使用者団体

  • 内国工業連合会。全国各州の工業連盟の中央組織。各州の工業連盟には州内の業種別企業組合や協会がある。
  • 自動車工業協会。州の工業連盟に加入せず、独自の組織となっている。
  • 内国商業連合会。全国各州の商業連盟の中央組織。各州の連盟には各市の商業協会、小売り商組合、卸商組合などが参加している。
  • 州ショッピングセンター協会。サンパウロ州では商業連盟に加入せず、独自の組織にしている。

注:「労働組合数」「労働組合員」「組織率」「争議件数」「争議参加人数」「労働損失日数」などに関する公式データはない。

このページのトップへ

1.最近の主要な労働政策の概況

1999年1月15日の中央銀行基本金利は年率29%という世界でも極めて高い金利となっており、外資の国外への引き揚げを高金利で引き留める政策をとっているが、外資の引き揚げは止まらず、高金利、経済活動冷え込み、失業増加の悪循環に陥っている。政府は財政再建をIMFと約束して415億米ドルの融資を受けることになっているが、政府部門の改革を政治が阻止しているために、国際社会から政府の財政再建実現能力に疑問が持たれており、国内、国外のエコノミストともに、ブラジルの1999年の経済見通しは暗いとみている。政府内でも1999年の失業率は史上最悪に達すると予想しているが、具体的な失業対策は実施されていない。IMFとの協定を守ろうとすれば、政府部門は大きな構造改革と支出削減を実施せねばならず、この結果、政府部門からも大量失業を生む。IMF協定と政府部門の改革を許さない政治勢力にはさまれた政府は、国際社会から危機の震源地と憂慮を持って見られていながら、実効性のある政策を採用できず、国民はリセッション、労働者は失業に怯えている。

2.労働関連行政機関

カルドーゾ大統領は1999年1月1日から、2期目の政権を担っている。

また、労働省は労働雇用省と改名され、大臣も元商工相、下院議員のフランシスコ・ドルネーレス氏が任命された。

労働・雇用省(Ministerio de Trabalho e Emprego)

所在地:Esplanada dos Ministerio Bloco F CEP-70059-900 Brasilia, Brasil
電話:(061)317-6000、Fax:(061)321-5375

このページのトップへ

ブラジルの労働関係法は「総合労働法」(1943年5月1日付、政令第5462号)にまとめられている。総合労働法は毎年部分的に改正されているが、1999年3月時点の個々の内容については別項に必要最低限の説明をしているので、以下には総合労働法の目次のみ示す。

総合労働法の目次

第1編
総則
第2編
労働保護に関する一般基準
/第1章 職業上の身分証明
/第2章 1日の労働時間
/第3章 最低賃金
/第4章 休暇
/第5章 労働の安全、及び衛生
第3編
労働保護の特別規準
/第1章 労働時間および条件に関する特別規則
/第2章 労働の国民化
/第3章 婦人労働の保護
/第4章 未成年者労働の保護
第4編
個人労働契約
/第1章 総則
/第2章 賃金
/第3章 契約の変更
/第4章 停止および中断
/第5章 契約廃棄
/第6章 予告
/第7章 雇用の安定性
/第8章 不可抗力
/第9章 特別規則
第5編
組合組織
/第1章 組合制度
/第2章 組合の種類
/第3章 組合の負担金
第6編
団体労働契約
第7編
行政罰金の訴訟手続
第8編
労働裁判所
/第1章 序則
/第2章 調停・裁定委員会
/第3章 司法判事
/第4章 地方労働裁判所
/第5章 最高労働裁判所
/第6章 労働裁判の補助役務
/第7章 罰則
/第8章 総則
第9編
労働検察庁
/第1章 総則
/第2章 労働裁判検察局
/第3章 社会保障検察庁
第10編
労働裁判手続
/第1章 序則
/第2章 一般訴訟手続
/第3章 個人的争議
/第4章 集団争議
/第5章 執行
/第6章 控訴
/第7章 罰則の適用
/第8章 最終規則
第11編
最終および暫定規則

このページのトップへ

労働災害を阻止しようとする政府の長期的な観点に立った政策により、労働災害件数は減少している。

事故を起こした時のコスト高を企業が認識して、事故防止対策への投資と労働者の訓練に積極的になったことも指摘できる。ただ労働災害は公式雇用契約をした労働者だけが記録されているだけで、国内労働力の50%以上が就労しているインフォーマルセクターの事故は統計上表面化しない。建設業、農村地帯、中小、零細企業が多い地方都市ではインフォーマルセクターで働く労働者が多く、事故や職業病の正確な実体は残念ながら不明である。

労働災害者数:21万110人(届出事故件数のみ)

出所:ブラジル地理統計資料院の資料

基礎情報:ブラジル(1999年)

関連情報

お問合せ先

内容について

調査部 海外情報担当

お問合せページ(事業全般に対するお問合せ)

※内容を著作物に引用(転載)する場合は,必ず出典の明記をお願いします。

例) 出典:労働政策研究・研修機構「基礎情報:ブラジル」

GET Adobe Acrobat Reader新しいウィンドウ PDF形式のファイルをご覧になるためにはAdobe Acrobat Readerが必要です。バナーのリンク先から最新版をダウンロードしてご利用ください(無償)。