全電線は35歳ポイントで1%以上の賃上げ要求へ/金属労協の2014闘争推進集会

(2014年1月29日 調査・解析部)

[労使]

金属労協(JCM、西原浩一郎議長)は28日、神奈川県横浜市で2014年闘争推進集会を開催し、今春闘に向け、自動車総連や電機連合など加盟する5産別がそれぞれ、業種・企業業績の状況や要求基準の背景・考え方などを報告し、意見交換した。春闘方針を正式決定していない全電線は、パネル討論のなかで、35歳賃金で1%以上を個別賃金方式で要求すると説明した。

未組織・非正規への波及効果もつ月例賃金引き上げが最大の焦点

集会の冒頭で挨拶した西原議長は、今次交渉に向け、「JC共闘では、われわれは『人への投資』の重要性を全面的に掲げていく。産業・企業の将来展望を切り開くものであり、国際競争力の礎となる国内事業基盤の維持・強化を支える人への投資は、働く者のモチベーション向上、能力発揮、人材確保に寄与し、企業の健全成長への起点となる。この意味で、今日、経営が選択すべき最優先の投資項目だ」と強調。経団連の経労委報告などで示された交渉に向けた経営側の姿勢に対し、「総額人件費管理を前面に掲げ、賃上げの概念を年収ベースでみた総報酬の引き上げに広げる主張を展開するなど、われわれがもっとも重視し、もっとも徹底的に取り組む月例賃金に対し、その慎重姿勢、抑制姿勢を崩していない」と批判しつつ、「2014闘争のもつ意義を踏まえれば、生活安定の基礎となり、消費を喚起し、また、未組織・非正規労働者の生活改善への波及効果をもつ月例賃金の引き上げこそが、われわれにとっての最大の焦点だ。労働側が、政府の主張や経営側の発言を追い風に有利に進むと安易な考えで交渉に入れば、まちがいなく足元をすくわれる。金属産業に働く労働者の付託に応え、職場を全面的にまきこむ闘争態勢をつくり、何としても結果を出さなければならない」と訴えた。

5産別が業種・企業業績や要求のポイントを説明

集会では、5産別から書記長・事務局長が参加し、今次交渉に向けたパネル討論を行った。パネル討論では、各産別が、産業の置かれた状況や企業業績の動向と、要求基準のポイントを説明した。自動車総連の郡司典好事務局長は、自動車産業の現状として、販売台数や企業収益見通しなどを説明。2013年の四輪車の国内販売台数は537万台で、リーマン・ショック前の2007年と同水準にある。国内販売台数を対前年同期比でみると、駆け込み需要などで2013年9月以降はプラスに転じている。一方、2013年の四輪車の国内生産は、5年連続で1,000万台を割り込む見込み。それに対して海外生産台数は過去最高を更新する見込みとなっている。企業収益は、メーカー、車体部品ともに増収増益傾向にある。販売会社も、2012年度の収益は売上、経常利益ともに前年を上回るなどと報告した。

賃金の要求基準については、すべての単組で、賃金カーブ維持分を確保するとともに、賃金改善分を要求し、賃金改善分は明確な額で要求するとの方針内容を報告。自動車総連組合員の世帯あたり平均年間総収入額の水準が依然として2007年レベルにあることなどを、全員で月例賃金の底上げに取り組む理由にあげた。

電機連合は、浅沼弘一書記長が報告。産業の状況について、電子部品・デバイスは秋から生産が増加傾向にあり、電気機械機器は増加傾向にあるが夏に勢いが鈍っている。情報通信機器は前年実績割れであり、情報サービス産業はほぼ前年並みとなっている。携帯電話や太陽電池では、輸入が増加して海外メーカーとの競争が激しくなっているなどと説明した。

一方、企業収益は、12の大手メーカー(中闘組合の企業)の売上の合計をみると、回復傾向にあり、当期利益の合計の2013年度最終見通しも、過去2年は赤字だったが、6,500億円の黒字となる見込みだと述べた。春闘方針では、勤務間インターバルの導入を求めていくことなども紹介した。

JAMは、宮本礼一書記長が報告。JAMは、さまざまな業種の中小労組を抱えていることから、中小の動向について説明した。それによると、大都市にあるサプライヤーでは、受注が増えているところがあり、時間外労働も増えてきているという。一方、企業城下町にあるサプライヤーで、親企業が不振になるところでは、一時帰休も発生している。円安については、輸入素材価格の上昇で、むしろデメリットになっている中小も多いなどと報告した。賃金水準の引き上げ額は、「過年度物価上昇分と生活改善分を勘案して4,500円」としたが、率での要求としなかったことについて、「率表示にすると、もともと中小は絶対額が低いので、格差拡大を招く。だから、あえて額で4,500円とした」と説明した。

2月5日の中央委員会で2年分の賃上げ要求を正式に決める基幹労連は、工藤智司事務局長が報告。企業収益について、鉄鋼は大幅な増益、船重は増収増益、非鉄は増収だが増益の幅は微増であることなどを説明した。各業種の動向は、鉄鋼については、「世界需要は先進国でも回復の兆しだ」とし、「ただし、供給が過剰で競争が激化している」などと述べた。造船については、世界の海運市況は序々に回復傾向にあるが、船価が低位にあるとした。非鉄については、世界的に、資源メジャーによる資源囲い込みの動きが強く、寡占化にどう立ち向かうかが課題だとした。賃金の要求額は、2014年度3,500円、2015年度3,500円を基準とする。

全電線は、1月31日に中央委員会を開き、春闘方針を決定する予定。市川雅朗書記長代行が報告した。電線業界の状況については、銅電線はやや増加の見通しだが、電力設備の減少分をカバーできていないという。光ケーブルは、携帯インフラ需要はあるものの総需要見通しは前年を下回るなどと説明した。

賃金要求については、案の段階であるが、「定期昇給をはじめとする賃金構造維持分の確保」を図った上で賃金引き上げに取り組み、賃上げについては、「35歳標準労働者賃金で1%以上を個別賃金方式で要求する」としている。市川書記長代行は、大手単組からは賃上げ要求をすると聞いている。率で、1%や1%以上を掲げる組合と、額で3,000円を要求するところがあると聞いている」と述べた。