4,500円の賃金水準引き上げ方針を決定/JAMの中央委員会

(2014年1月22日 調査・解析部)

[労使]

金属、機械関連の中小労組を多く組織するJAM(眞中行雄会長、約36万人)は17日、都内で中央委員会を開催し、2014年春季生活闘争方針を決めた。すべての組合が賃金構造維持分に加えて賃金水準の引き上げ分を要求する。具体的な賃金水準の引き上げ額は4,500円とし、水準の回復が必要な組合はこれに1,500円以上を加えて要求する。

挨拶した眞中会長は2014春闘について、「状況はここ数年の状況とは大きく変わっている。きっかけは安倍総理の動きだったとしても、長らく続いたデフレから脱却するためには経済成長と家計の拡大を同時に成し遂げなければならない。連合、金属労協は1%以上の賃金引き上げ、いわゆるベアを5年ぶりに掲げている。JAMも討論集会以降、ベア4,500円を中心に議論してきた。連合、JCMの一員としてその責任を果たしたい」と強調。「1月15日には経団連が経営側の方針である経労委報告について会見し、一斉に6年ぶりのベア容認と報道され、一部企業の幹部からも前向きなコメントがあったが、あくまでもこれらは空中戦であり、実際は、単組の役員が、わが社がどうあるべきかについて経営側と膝をつきあわせて交渉しないと絵にかいた餅となる。交渉で成果を出すのはあくまでも単組の役員であり、2015、16春闘の入り口となる2014春闘で、いかにベアの緒をつけられるか、ここにかかっている」と呼びかけた。

消費者物価以上の賃上げ獲得を

JAMが賃金構造維持分のほかに、すべての組合が賃金水準引き上げの方針を示したのは2009年以来、5年ぶり。方針は、「2014春季生活闘争は、連合全体、JAM全体の共闘運動である」とし、「(共闘運動に)参加するすべての単組は、賃金水準の引き上げに向けた要求提出に取り組む」と明記した。中央委員会で方針案を提案した宮本礼一書記長は、「まだら模様ではあるが、景気回復が中小にも及んできた」とし、「消費者物価指数以上の賃上げを獲得しないと、生活防衛となるだけで経済の好循環につながらない」と、過年度物価を上回る賃金水準引き上げの必要性を訴えた。

決定した具体的な賃上げ要求基準をみると、賃金構造維持分に加える賃金水準の引き上げ額は、「過年度物価上昇分と生活改善分を勘案して4,500円」とし、「是正が必要な場合には上記に加えて1,500円以上」とした。

ベア分を4,500円とした根拠について、JAMでは、過年度物価上昇率を1%、生活改善分が0.5%で、引き上げが必要な率を合計の1.5%と考え、JAMの平均所定内賃金が約30万円であることから、その1.5%分として4,500円を算出した。過年度物価上昇率については、2013年度の消費者物価指数の直近の数値(11月総合)が0.88%となり、また、最終的な指数がこれ以下にならないと見込めるとして1%と設定した。一方、生活改善分の0.5%については、「デフレ脱却に向けた消費拡大分」とし、過年度物価上昇分以外のすべての要素を合わせて勘案したと説明。マクロの指標をみると、例えば2013年度の就業者一人当たり実質GDPは2.09%の水準にあるが、「中小企業の現状も勘案する必要もある」として0.5%にとどめた。

是正が必要な場合は1万500円以上で

是正分については、賃金水準の低下がみられる単組が要求に織り込む。JAMの構成組織で、2000年と2010年の300人未満の年齢別平均賃金のカーブを比較すると、約7,500円の水準低下がみられる。JAMでは5年以内で、低下した賃金水準の回復をめざす取り組みを進めており、該当する組合は毎年1,500円以上の是正要求を組み立てる。

なお、賃金制度がないものの、賃金実態の把握に基づいて賃金構造維持分が推計できる場合は、賃金構造維持分の相当分に加えて、上記の引き上げ額を要求する。賃金制度がなく、賃金構造分の推計もできない場合は、平均賃上げ方式で9,000円を要求し、是正が必要な場合は1万500円以上を要求する。

企業内最低賃金の取り組みでは、18歳企業内最低賃金協定を締結していない単組では、まず、18歳以上最賃協定と年齢別最賃協定の締結をはかる。なお、本部が示す18歳での最低協定額は15万6,000円で、30歳では19万2,000円、35歳では21万6,000円となっている。

一時金の要求基準は、「年間5カ月基準または半期2.5カ月基準の要求とする」とし、最低到達基準を「年間4カ月または半期2カ月」に設定した。方針は「1~99人規模での年収の回復が遅れていることを厳しく受け止める必要がある」としている。

闘争体制については、統一要求日を2月18日に設定し、全単組が同日までに要求提出する。昨年は、統一要求日に提出できた組合が全体の18%と過去最低だったことから、要求集約活動を徹底する。今年は3月月内決着にこだわるとしている。