2009春闘以来の賃金改善要求方針を決定/自動車総連の中央委員会

(2014年1月10日 調査・解析部)

[労使]

自動車大手メーカーの労働組合などでつくる自動車総連(相原康伸会長、76万4,000人)は9日、都内で中央委員会を開催し、2014春闘方針を決定した。方針は、賃金の具体的な要求基準について、すべての単組が賃金カーブ維持分を確保したうえで「実質生活の維持・向上、生産性向上への成果配分、賃金実態を踏まえた格差・体系の是正などに向け、賃金改善分を要求する」とし、賃金改善分の具体的な金額設定については各グループ労連の決定に委ねた。

写真:自動車総連中央委員会

賃上げは明確な「額」で要求

挨拶した相原会長は2014春闘方針について、「マクロの情勢認識と要求根拠との関係、連合、JCMの要求方針と主体性ある要求との関係、さらには、賃金改善要求と一時金要求をはじめとする要求項目間の関係など、例年にも増して率直に意見をぶつけ合ってきた」とし、「マクロに対する健全な危機感と、職場のたゆまぬ努力とその成果に何としても報いるというミクロの視点を考えあわせ抜いた末に導かれた、そして最大限の成果を生み出し得る要求方針となったものと確信する」と強調した。

自動車総連が春闘方針の要求基準において、賃金改善の要求を掲げるのは2009年以来のこと。「平均賃金要求」の場合の具体的な要求基準をみると、「すべての単組は、賃金カーブ維持分を確保するとともに、実質生活の維持・向上、生産性向上への成果配分、賃金実態を踏まえた格差・体系の是正などに向け、賃金改善分を要求する」とし、「賃金改善分については、経済成長と所得向上を同時に推し進めるためにも、労働組合としてその一翼を担うべく明確な額で要求する」とした。今回は、「4,000円以上」と明記した2009年の時と違い、産別方針としての賃金改善分の下限や幅は示さなかった。

メーカーの方針は連合、JCMから外れない

同日、中央委員会の前に会見した相原会長は、「懸念するのは日本経済の先行きだ。順調にみえる経済対策やそのほかの政策にもプラスとマイナスの面がある。例えば、金利の高まりやインフレにつながるのではないか、財政健全化ができるのか、社会保障制度の改革が国民の納得を得られながら進められるかなど、経済と巡航速度をあわせた取り組みも必要。民間の労使が力を合わせて経済を立て直す節目のいま、経営側には健全な行動を求めたい」と話すとともに、「リーマンショック後、為替をみても厳しい状況のなか、組合員は労働の価値を高めるのにひとかたならぬ努力をしてきた。正々堂々と経営側に要求の正当性を訴えていく」と今春闘への抱負を語った。

今回の方針で賃金改善分の額を示さなかったことについては、「一定の水準を示すことが最高の結果につながるのか、強い要求とするためにはいかなる検討の進め方がいいか、がこれまでの議論のポイントとなった」とし、「1%や何千円などという書き方をする議論をメーカー部会では当初から進めていない」と説明。「ベースとなる賃金水準に労組によって差があり、仮に30万円の賃金の組合があったとすると1%は3,000円となる。25万円では2,500円。こうした要求を掲げていては、格差是正はできず、むしろ格差は開きかねない」とし、「よってメーカー部会での検討で腐心したのは、いかに(企業間の)格差が拡がらないようにするかということと、いかに固い要求とするかということを両立させること。難しい議論の入り口にわざわざ自分たちから入った。自らで要求根拠を積み上げないと固い要求にならない」強調した。また、今後、決定されるメーカー労組の要求方針について、「連合やJCM(金属労協)が方針で示した水準をみたこともないというような議論はしていないし、むしろ総連はこうした議論をリードしてきた立場でもある。上部方針から外れるような方針がメーカーから導き出されるようなことはない」ときっぱり述べた。

なお、各部門の賃金に関する要求方針では、「メーカー」部門は「自動車総連の基本方針に準じた取り組みを推進する」としたが、「車体、部品」部門は「1%以上の賃金改善分を明確な額で要求する」とし、「販売」部門も「1%以上の賃金改善分を明確な額で要求する」と明記した。

すべての企業内最賃協定化をめざす

賃上げ以外の方針では、企業内最低賃金協定の締結を掲げた。現在、自動車総連の全構成組織(1,089組合)で企業内最低賃金協定を締結できている組合は63%(711組合)にとどまる。そのため、すべての組合での協定締結をめざすとともに、18歳の最低賃金水準15万6,000円以上への引き上げを求める。

年間一時金の具体的な要求基準は、昨年と同様、「年間5カ月を基準とし、最低でも昨年獲得実績以上とする」とした。

非正規労働者に関する取り組みでは、組合員化した非正規労働者の労働条件向上のため、「正規社員の組合員に準じた取り組みを積極的に進める」とした。自動車総連の加盟組織での非正規労働者比率は18%程度となっている。

要求提出は2月12日

春闘方針の討議では、ヤマハ、日野、ダイハツなど5つのグループ労連が意見表明を行い、「今回の賃金の具体的な要求基準では、難しい環境のなか、様々な議論を行い、導き出したものと聞く。組合員の生活実態や自組織の賃金実態などをふまえ、課題をしっかりと認識したうえで各組織が具体的な成果に向け取り組んでいこうという前向きな要求基準であると受け止める。これを踏まえわれわれも主体的な要求を組み立てたい」(ヤマハ労連)などの発言があった。

自動車総連加盟の各グループ労連の方針は2月上旬までに出揃う予定。トヨタや日産など大手メーカーを含む拡大戦術会議登録組合(12組合)は2月12日に統一して要求を提出する。