メールマガジン労働情報 No.1872

■□――【メールマガジン労働情報/No.1872】

「こども未来戦略方針」案を提示、加速化プランの具体化目指す/こども未来戦略会議 ほか

―2023年6月2日発行――――――――――――――□■

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  本号の主な内容
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【行政】「こども未来戦略方針」案を提示、加速化プランの具体化目指す/こども未来戦略会議 ほか
【統計】労働災害の状況、度数率は低下、強度率は横ばい/労働災害動向調査
【労使】「未来につながる転換点となり得る」とする2023春季生活闘争中間まとめ/連合の中央委員会 ほか
【企業】役職定年の廃止とシニアの処遇改善へ、「地域総合職」転換制度の拡充も/大和物流 ほか
【海外】慢性化する人材不足の対応策/ドイツ ほか
【イベント】「東京都の雇用・労働関連施策説明会―人材の確保・育成に活用できる支援策・助成金」 ほか

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【JILPTからのお知らせ】
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☆常設展示「職業紹介と職業訓練―千束屋看板と豊原又男―」/労働図書館

 JILPT労働図書館では、1日より「千束屋看板と豊原又男」を常設展示しています。
当館で所蔵する「千束屋看板」と、職業紹介事業の父であり千束屋看板の所有者であった
「豊原又男」について関連資料をご紹介しています。
https://www.jil.go.jp/lib/exhibition/index.html

☆JILPTリサーチアイ 第78回
 裁判所における解雇の金銭解決の実態・令和編
 JILPT研究所長 濱口 桂一郎(5月31日)

 2023年4月末に、労働政策研究報告書No.226「労働審判及び裁判上の和解における
雇用終了事案の比較分析」を上梓した。本リサーチアイでは、今回の報告書に至る
この分野の先行研究の推移を概観した上で、前回の平成調査との比較に重点を置いて、
今回の令和調査の結果を図解していく。
https://www.jil.go.jp/researcheye/bn/078_230531.html

☆2023年度・第72回東京労働大学講座 総合講座

「労働法」部門 受講者募集中!
  2023年7月11日(火曜)~8月31日(木曜)

開催方式:オンライン開催(Zoomウェビナー)
講義時間:午後6時30分~8時30分まで(120分)
https://www.jil.go.jp/kouza/sogo/index.html

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【行政】
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●「こども未来戦略方針」案を提示、加速化プランの具体化目指す/こども未来戦略会議

 政府は1日、第5回こども未来戦略会議で「こども未来戦略方針」案を提示した。
首相は議論を踏まえ、「今後3年間の集中的な取組である加速化プランの内容を具体化
する」とし、予算額は、「全体として3兆円半ばの充実を図る」と述べた。
 加速化プランには、児童手当の拡充(所得制限の撤廃、支給期間の高校卒業までの
延長等)、高等教育費の負担軽減(奨学金制度の充実、授業料後払い制度の創設等)、
就労要件を問わず保育所を利用できる「こども誰でも通園制度」の創設、「産後パパ
育休」の給付率引き上げ(手取りで8割相当から10割相当)、等が盛り込まれている。
https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202306/1kodomo.html
(議事次第・資料)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kodomo_mirai/dai5/gijisidai.html

●今後の仕事と育児・介護の両立支援の報告書案/厚労省研究会

 厚生労働省は5月30日、第8回「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会」
を開催し、報告書案が示された。子が3歳までの両立支援では、現在、努力義務となって
いる出社・退社時間の調整などに加えて、テレワークを努力義務として位置づけること、
3歳以降小学校就学前までについては、各職場の事情に応じて短時間勤務、テレワーク等
の措置を2つ以上講じることを事業主に義務づけること、現在3歳になるまで請求できる
残業免除(所定外労働の制限)について、小学校就学前まで請求可能とすること、中小企
業に対する、制度利用のための代替要員雇用等への助成措置の強化などが示された。
 他に、介護離職を防止のための労働者への仕事と介護の両立支援制度の周知の強化や、
障害児等を育てる親等に配慮した両立支援などについても案が示された。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33382.html
(今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会報告書案)
https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/001102307.pdf

●次期制度改正に向けた主な検討事項案を提出/厚労省

 厚生労働省は5月30日、「社会保障審議会年金部会」を開催し、今後の議論の日程、
次期制度改正に向けた主な検討事項案と被用者保険の適用拡大についての資料を提出
した。検討事項案は、被用者保険の適用拡大(勤労者皆保険)、女性の就労の制約と
指摘される制度等(「年収の壁」等)、第3号被保険者制度、高齢期の働き方(在職
老齢年金制度等)、基礎年金の拠出期間延長など16項目。被用者保険の適用拡大について
は、短時間労働者や、非適用業種である個人事務所への適用拡大が提示されている。
2024年末までに年金部会の議論を取りまとめる予定。参考資料として、JILPT調査
(5月16日発表)を紹介している。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/nenkin_230530.html
(次期制度改正に向けた主な検討事項案)
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/001101665.pdf
(被用者保険の適用拡大)
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/001101666.pdf
(JILPT調査)
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/001101667.pdf

●今後の労働市場の在り方など検討・議論を開始/厚労省研究会

 厚生労働省は1日、2023年度「第1回雇用政策研究会」を開催した。同研究会では、
2020年度及び22年度に、コロナが社会経済活動や雇用・失業情勢に及ぼす影響や課題等
について報告書等を取りまとめた。今年度は、労働者の職業選択に資する労働市場の
基盤整備、労働生産性向上に資する人的資本投資、ウェルビーイングの向上に向けた多様
なキャリア形成・働き方、非正規雇用対策・セーフティネットの強化、人口減少に備えた
労働供給量の確保等を議論すべき課題とし、これら課題への取組を通じ労働参加が進む
ことを前提として労働力需給の推計を行う、としている。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_030127159_001_00046.html
(論点案等)
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001102034.pdf

●2022年度「雇用の分野における障害者差別等に関する相談実績」を公表/厚労省

 厚生労働省は5月31日、都道府県労働局や公共職業安定所における「雇用の分野に
おける障害者の差別禁止・合理的配慮の提供義務に係る相談等実績」を公表した。2022
年度の障害者差別および合理的配慮の提供に関する相談は225件(対前年度比7.8%減)、
うち障害者差別に関する相談は37件(同32.7%減)、合理的配慮の提供に関する相談は
188件(同0.5%減)。一方、労働局長による紛争解決の援助申立受理件数は1件と前年度
2件から減少、障害者雇用調停会議による調停申請受理件数は9件と前年度10件から減少。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33325.html

●職場における熱中症による死傷災害の発生状況を公表/厚労省

 厚生労働省は5月29日、2022年の職場における熱中症による死傷災害の発生状況
(確報値)を発表した。職場での熱中症による死傷者(死亡および休業4日以上
の業務上疾病者)数は827人、うち死亡者数は30人。過去10年間の死傷者数をみると、
2013年~17年は400~500人台で推移。記録的猛暑となった2018年(1,178人)に最多
を記録して以降、変動があるものの減少している。18年以降の発生状況について、
業種別では建設業、製造業で多く、年齢別では全体の約5割を50歳以上が占めている。
また、あわせて実施中の「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」(5月31日から
9月30日まで)について、周知している。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33275.html
(令和4年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況)
https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/001100761.pdf
(「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」実施要綱)
https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/001100767.pdf
(同リーフレット)
https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/001100768.pdf

●縦断調査の改善に向け検討を開始/厚労省ワーキンググループ

 厚生労働省は1日、第1回「縦断調査の改善に関するワーキンググループ」を
開催した。縦断調査とは、同一個人を追跡する調査で、同省が所管する縦断調査には
「21世紀出生児縦断調査」「21世紀成年者縦断調査」「中高年者縦断調査」がある。
縦断調査の特性を生かし、複数年分のデータを用いて各調査対象者の行動変化を分析して
まとめている。ワーキンググループでは、今後の改善や方向性等を検討していく予定。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32893.html

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【統計】
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●労働災害の状況、度数率は低下、強度率は横ばい/労働災害動向調査

 厚生労働省は1日、「労働災害動向調査」結果を公表した。
2022年の労働災害の状況(事業所規模100人以上)を調査産業計でみると、
度数率(災害発生の頻度)は2.06(前年2.09)、強度率(災害の重さの程度)は
0.09(同0.09)、死傷者1人平均労働損失日数は44.3日(同41.0日)となっている。
無災害事業所の割合は54.9%(同55.0%)。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/saigai/22/
(結果の概要)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/saigai/22/dl/2022kekka.pdf
(報道発表資料)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/saigai/22/dl/2022houdou.pdf

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【労使】
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●「未来につながる転換点となり得る」とする2023春季生活闘争中間まとめを確認/連合の中央委員会

 連合(芳野友子会長、683万7,000人)は1日、都内で中央委員会を開催し、2023春季
生活闘争の中間まとめを確認した。30年ぶりとなる高水準の賃上げを獲得した今年の
交渉結果について、「労使が中期的視点を持って粘り強くかつ真摯に交渉した結果で
あり、未来につながる転換点となり得るものと受け止める」と評価。一方、「経済の
ステージを転換するには、一度きりの賃上げでは不十分」として、賃上げを継続する
ことの重要性を強調した。(JILPT調査部)
https://www.jil.go.jp/kokunai/topics/mm/20230602a.html

●物価高や民間企業の賃上げ状況を踏まえ、公務員労働者の賃上げを積極的に求める当面の方針を決定/自治労中央委員会

 地方自治体の職員などを組織する自治労(川本淳委員長、73万4,000人)は5月
25、26の両日、全面ウェブにて中央委員会を開催し、当面の闘争方針を決定した。
方針は、2023人勧期に向けた取り組みとして、物価高や2023春闘における民間企業
の状況を踏まえて、公務員労働者の賃金引き上げを積極的に求めることを強調。
川本委員長は、「公務員労働者の賃上げを強く求めていくのは当然」として、職員・
組合員のモチベーション維持のための賃金・労働条件の改善の必要性を訴えた。
(JILPT調査部)
https://www.jil.go.jp/kokunai/topics/mm/20230602b.html

●業況DIは3カ月連続改善、賃上げ実施企業は6割超/日商LOBO調査

 日本商工会議所は5月31日、「商工会議所LOBO(早期景気観測)調査」結果を発表した。
5月の業況DI(全産業合計)はマイナス6.2で、前月比4.9ポイントの上昇。コロナの5類
移行による消費マインドの改善、インバウンド・国内観光需要の回復で、飲食・宿泊関連
のサービス業、百貨店・土産品販売等の小売業で改善。コスト負担増、人手不足等は
あるが、中小企業の業況は改善が続いているとしている。先行き見通しDIはマイナス9.5
で、今月比3.3ポイントの低下。経済活動改善が期待される一方、「コスト負担増や価格
転嫁が不十分」など先行き不安は根強いとしている。
 また、あわせて実施した賃金の動向に関する調査では、2023年度に所定内賃金引上げを
実施した企業(予定を含む)は62.3%で、前年6月調査の50.9%から11.4ポイント増加。
賃金引上げの主な理由(複数回答)は「人材確保・定着等」が85.0%、「物価上昇」が
54.4%だった。
https://www.jcci.or.jp/news/2023/0531110000.html
(5月調査結果)
https://cci-lobo.jcci.or.jp/wp-content/uploads/2023/05/LOBO202305.pdf

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【企業】
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●役職定年の廃止とシニアの処遇改善へ、「地域総合職」転換制度の拡充も/大和物流

 大和物流は5月31日、60歳での役職定年の廃止、および転居を伴う異動がない「地域
総合職」への転換制度の拡充について発表した。2013年に導入した65歳定年制では、
60歳到達時以降の給与・賞与が一律低下する設定だったが、シニアの流出抑止や
モチベーション向上のため、60歳以降の処遇を改善するとしている。また、社員のワーク
ライフバランス実現をサポートするため、育児・介護以外の事由でも「地域総合職」への
転換を申請できる制度に改定した。
https://www.daiwabutsuryu.co.jp/news/202305310900

●社会人採用の採用給を大幅アップ/JR西日本

 JR西日本は5月31日、社会人採用の採用給を大幅に見直すことを発表した。同社は、
経験・年齢を問わない社会人採用を通年で取り組んできたが、今回の見直しにより、
一例として、大卒で社会人経験(鉄道以外の就業経験)が10年の場合、年収水準(手当・
賞与除く)を340万円程度から460万円程度に引き上げ、20年の場合は340万円程度から
540万円程度と200万円程度引き上げる。同社では、2023年度の社会人採用を約550名、
24年度新卒採用を840名、それぞれ計画している。
https://www.westjr.co.jp/press/article/items/230531_00_shakaijinsaiyou.pdf

●男性育休取得日数に応じ、子ども誕生の一時金を増額/大和リース

 大和リースは5月30日、育児・介護休業法の改正に伴い、子どもが誕生した職員に
一時金を支給する「エンジェル奨励金」制度の支給基準を見直し、男性の育児休業
取得日数に応じて支給額を最大100万円に増額すると発表した。変更前は、第一子誕生
に30万円、第二子に50万円を支給するところ、変更後は、第一子誕生で男性育休が30日
未満は変更前と同額(30万円)だが、30日以上90日未満は50万円、90日以上は100万円が
支給される。第二子についても、30日未満は変更ない(50万円)が、30日以上90日未満は
70万円、90日以上は100万円に増額される。
https://www.daiwalease.co.jp/press/230530_i.pdf

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【海外】
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●国別労働トピック/JILPT

<ドイツ>
▽慢性化する人材不足の対応策

 ドイツの雇用主は伝統的に、仕事に合致した正式な資格(職業資格・教育資格)を
有する人材を採用してきた。しかし、現在、多くの産業で人材不足が慢性化しており、
「他産業からの転職者(Quereinsteiger)」や「職業転換訓練(Umschulung)」の活用に
注目が集まっている。(JILPT調査部)
https://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2023/06/germany_01.html

▽賃金ダンピング防止のための「業種別最低賃金」

 ドイツにおける2023年の法定最低賃金は時給12ユーロだが、それとは別に複数の業種
で「業種別最低賃金」が存在する。業種別最低賃金は、賃金ダンピングを防ぐために、
ドイツで当該業種に従事する者を雇用するすべての事業所に、労働協約に拘束されない
国内外の事業所も含めて、適用される。(JILPT調査部)
https://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2023/06/germany_02.html

<中国>
▽国務院が「雇用安定化政策」を発表―若年者の雇用を支援

 国務院は4月26日、「雇用政策措置の最適化、調整、安定化により国民生活の向上に
全力を尽くす通知(以下、「雇用安定化政策」)」を発表した。若年層の失業率改善には、
景気回復に加えて、雇用を多く生み出す企業を支援する政策の強化が必要であることか
ら、企業等の雇用吸収力の拡充、大卒者向け雇用支援、職業実習規模のさらなる拡大等を
提案している。(JILPT調査部)
https://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2023/06/china_01.html

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【イベント】
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●「東京都の雇用・労働関連施策説明会―人材の確保・育成に活用できる支援策・助成金」/東京商工会議所

 東京商工会議所は6月30日(金)、セミナー「東京都の雇用・労働関連施策説明会」
を千代田区で開催する。障害者雇用、女性活躍推進、中小企業人材スキルアップ支援を
中心に、人材の確保・育成に活用できる支援策や助成金など、東京都の雇用・労働関連
施策について担当者が説明する。対象は、東京都内の事業所。受講料無料、定員40名。
事前に同商工会議所HPから申し込む。
https://myevent.tokyo-cci.or.jp/detail.php?event_kanri_id=201989

●日本労務学会設立50周年記念プロジェクト「人事労務研究を深掘りする全6夜」/労務学会

 日本労務学会は、7月14日(金)からセミナー「人事労務研究を深掘りする全6夜」
をオンライン(Zoom)で開催する。学会設立50周年記念プロジェクトとして、『日本の
人事労務研究』執筆陣が6回にわたり各テーマについて議論する。学会員以外も視聴可、
参加無料。7月13日(木)までに学会HPから申し込む。
https://www.ibi-japan.co.jp/jshrm/usefull-info/other_event.html