国務院が「雇用安定化政策」を発表
 ―若年者の雇用を支援

カテゴリー:雇用・失業問題若年者雇用

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  • 国別労働トピック:2023年6月

国務院は4月26日、「雇用政策措置の最適化、調整、安定化により国民生活の向上に全力を尽くす通知(以下、「雇用安定化政策」)」を発表した。若年層の失業率改善には、景気回復に加えて、雇用を多く生み出す企業を支援する政策の強化が必要であることから、企業等の雇用吸収力の拡充、大卒者向け雇用支援、職業実習規模のさらなる拡大等を提案している。

高止まりの若年失業率

コロナ禍後、若年層の失業率が上昇している。中国国家統計局の発表によると、2023年4月には16歳~24歳の失業率が20.4%となり、2018年1月以降で最高の水準に達した(図1)。この状況は、新型コロナウイルスの感染拡大や、それに伴う急激な景気後退、雇用環境の悪化などによって引き起こされ、若年層の就職に深刻な影響を与えている。

一方で、大卒者の数も年々増加しており、2023年の大卒者は約1,158万人に達する見込みである。こうした供給側の要因も、若年層の失業率上昇に拍車をかけている。大学や高等教育機関から卒業する学生の数が増えるなか、雇用市場の衰退で十分な仕事を提供できず、就職に向けた競争が激しくなっている。

図1:16-24歳の若年者失業率
画像:図1

出所:中国国家統計局

企業の雇用吸収力を強化

国務院が4月26日に発表した「雇用安定化政策」(注1)には、雇用を促進するために、以下の措置を実施することが盛り込まれた。

まず、失業保険と労働災害保険の保険料率を引き下げる政策を2024年末まで延長し、企業の雇用コストの削減と雇用吸収を支援する。人的資源・社会保障部の局長は発表翌日の記者会見で、これにより年平均約1,800億元の企業の負担削減を見込むと述べている。

企業の資金需要に応えるとともに、創業や雇用の安定・拡大を支援するための融資を実施する。一定の割合で対象者を採用した中小企業には、最大300万元の保証付き融資を提供できるようにする。また、雇用維持などの条件のもとで、中小企業は前年度に支払った実際の雇用保険料の60%以下、大企業は30%以下の保険料の還付を受けられるようにする。

さらに、雇用補助政策の実施を拡大する。大卒者、脱貧困者、就職困難者など重要な支援対象者を受け入れる企業に補助金を支給する。具体的には、大学新卒者や卒業後2年以内の者、未就職者、失業登録者などを雇用する企業に対して、1回限りの雇用補助金を支給する(実施期間は2023年末まで)。

また、企業が職業訓練を実施し、従業員のスキルアップを促進することを支援する。新たに雇用した従業員の職業技能訓練を実施する企業に職業訓練補助金を支給する。1年以上失業保険に加入している従業員や、失業保険給付を受けて職業資格証明書や職業技能レベル証明書を取得した者には、技能向上補助金の申請を可能とする(実施期間は2023年末まで)。

若年層の雇用支援に重点

若年層の高い失業率を受け、「雇用安定化政策」では以下の支援策を打ち出した。

第一に、企業の雇用拡大を促す。一括支給の補助金政策を引き続き実施し、補助対象を当該年度の新規大卒者から、卒業して2年以内の無職の大卒者や登録失業者まで広げるとともに、中小・零細企業だけでなくあらゆる企業が受給できるようにする。同時に、国有企業の雇用規模の拡大を支援する。

第二に、大卒者の「基層就職」を支援する。中国の農村部や中西部地域のコミュニティ、各種組織などを大卒者の就職先とすることを「大卒者基層就職」と呼ぶ。この支援策として、例えば、大卒者に農村医療への従事を促す特別プログラムを実施する。また、大卒者が中西部地域や貧困地域、旧工業基地(基幹産業などの大型国有企業が立地したが、経済改革後の産業構造の転換により衰退した地域)に就職する場合に、学費補償や賃金引上げなどの支援策を行う。

第三に、公共部門の職業の安定を図る。政府機関や政府系事業組織のポストを積極的に活用し、自然減と補充により職員を入れ替え、大卒者の募集・採用における規模の安定、時期の合理化を進める。

第四に、職業実習生の規模を拡大する。2023年には100万人の職業実習生を育成する計画を実施し、科学研究や各種技能、管理職の職業能力開発に重点を置く。職業訓練期間中に実習生が雇用契約を結ぶ場合、残りの訓練期間に対して、企業に補助金を支給する。

参考文献

  • 新浪網、中国国務院、中国国家統計局

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