物価高や民間企業の賃上げ状況を踏まえ、公務員労働者の賃上げを積極的に求める当面の方針を決定/自治労中央委員会

2023年6月2日 調査部

地方自治体の職員などを組織する自治労(川本淳委員長、73万4,000人)は5月25、26の両日、全面ウェブにて中央委員会を開催し、当面の闘争方針を決定した。方針は、2023人勧期に向けた取り組みとして、物価高や2023春闘における民間企業の状況を踏まえて、公務員労働者の賃金引き上げを積極的に求めることを強調。川本委員長は、「公務員労働者の賃上げを強く求めていくのは当然」として、職員・組合員のモチベーション維持のための賃金・労働条件の改善の必要性を訴えた。また、会計年度任用職員の勤務手当支給の条例化を目指すことも提示している。

民間の動向を踏まえ公平・公正な官民比較に基づく月例給・一時金の引き上げを求める

中央委員会では、賃金・労働条件改善をめぐる人勧期を中心とした取り組みをはじめ、職場の権利と勤務条件の確立、男女平等参画推進、公共サービス労働者の総結集と組織の拡大――に対する取り組みなど、14本を柱とする当面の闘争方針を決定した。

賃金・労働条件改善をめぐる人勧期を中心とした取り組みでは、上部団体である連合の2023春闘において、多くの組合が前年超えの要求を掲げ、要求組合数も前年を上回ったことに言及。「賃金をはじめとする公務員の労働条件については、交渉・合意によって決定されるべきものである」との基本的考え方に立った上で、2023人勧における「給与改定にあたっては、精確な調査による公平・公正な官民比較に基づき、月例給・一時金の引き上げを求める」と強調した。特に「本年は消費税引き上げの影響を除いて約30年ぶりに消費者物価上昇率が3%となり、生活防衛の観点からも2023春闘における民間企業の賃上げを踏まえ、公務員労働者の賃金引き上げを積極的に求める」としている。

川本委員長は、「今般の物価高、2023春闘における賃上げの動向などを踏まえれば、公務員労働者として賃上げを強く求めていくのは当然」と指摘。その上で、「職員・組合員のモチベーションを維持していくためには、賃金・労働条件の改善が不可欠であり、物価高に苦しむ組合員の期待に応えるためにも、運用改善も含めしっかりと賃上げを求めていくことが労働組合の役割である」と述べた。

2023人事院勧告に向けた人事院への要求事項としては、①公務員労働者の賃金・一時金の引き上げや賃金水準の改善②非常勤職員等の制度及び処遇の改善③労働時間の短縮やワーク・ライフ・バランスの実現等に向けた労働諸条件の改善――について掲げている。

すべての世代のモチベーション向上につながる給与制度の見直しを

また、中央委員会では合わせて、社会と公務の変化に応じた給与制度の整備についても言及。2022人事院勧告では、2024年に予定されている給与制度の見直しに向けて、2023年夏に骨格案が示される予定となっていることから、「見直しにあたっては、民間の初任給および若年層の賃金水準を踏まえたものとするとともに、中高年層も含めたすべての世代のモチベーション向上につながる見直しを求める」としている。

なお、60歳前後の給与水準を連続的なものとする給与カーブの見直しについては、「中高年層の大幅な賃金引き下げとならないよう求めるとともに、2023年骨格案、2024年成案で拙速に結論づけることなく、定年引き上げ完成を見据え、中長期的に議論することを求める」としている。

会計年度任用職員の勤勉手当支給の条例化を目指す

会計年度任用職員の処遇改善に関しては、勤勉手当支給を盛り込んだ改正地方自治法が4月26日に可決・成立し、2024年4月から施行されることを受け、「単組は、勤勉手当の支給を開始できるよう、少なくとも12月議会までにすべての自治体で確実な条例化を目指す」と指摘している。

川本委員長は、改正自治法について、「あくまでも支給が可能になっただけであって、条例改正を含め、まさにこれからがスタートである。当事者の声を集め、しっかり当局と交渉し、職場の仲間の処遇改善へとつなげたい」と強調した。

LGBTQ+への差別防止等を包含した「ジェンダー平等推進計画」の策定を討議

男女平等参画推進の取り組みでは、2023男女平等推進闘争の取り組みを指摘。自治労運動のすべての場面で男女平等を推進すべく、「6月の男女平等推進闘争に取り組み、進捗状況を確認しながら、確定期においても積み残し課題の実現にむけて継続して取り組む」としている。

取り組みにあたっては、「組合の男女平等参画」「職場の男女平等の実現」「男女平等の法制度・社会環境の整備」を3本柱とし、全県本部において県本部闘争委員会を立ち上げ、男女平等参画社会の実現に向け、自治労全体で推進をはかることを示した。

また、中央委員会では合わせて、新たな計画策定の取り組みとして、「ジェンダー平等推進計画」の討議案を提示。自治労ではこれまで、「男女がともに担う自治労計画」(2011年に第4次計画が策定)など、具体的目標を示しながら男女平等参画の取り組みを進めてきたが、今回より「ジェンダー平等」と名称を変更し、LGBTQ+を包含した計画として、2023年9月から2030年8月までの7年間の計画とすることを示している。

職場ぐるみで新規採用者や若年層未加入者の早期加入に取り組む

公共サービス労働者の総結集と組織の拡大に関しては、新規採用者100%加入と若年層未加入者対策の強化に向けて、単組では「4~5月の取り組み状況を踏まえて未加入者をリスト化し、『職場ぐるみ』で早期加入を促すとともに、全員加入を目指して粘り強く取り組む」こと、県本部では「単組の取り組み状況を定期的に集約・把握した上で、競合組織をはじめ厳しい状況に置かれた単組などの支援に取り組む」ことなどを掲げている。

また、脱退対策の強化として、本部では各県における実態把握とともに、魅力ある組合活動の事例収集と発信を行うことや、対応策の検討と「組合脱退者対応の手引き」の充実に努めることなどを示している。

川本委員長は、「全ての活動の根幹となるのは組織の強さであって、労働組合活動をさらに強化していくためにも多くの職場の仲間の組合結集を目指していかなければならない」と強調した。

また、中央委員会では合わせて2023年9月以降の組織化計画である「第6次組織強化・拡大のための推進計画」の討議案も提示。2019年9月~2023年8月までの「第5次組織強化・拡大のための推進計画」の内容に引き続き取り組みつつ、具体的な行動のためのアクションプランとして位置づけるとしている。