資料シリーズNo.296
若年者の就業状況・キャリア・職業能力開発の現状④
―令和4年版「就業構造基本調査」より―
概要
研究の目的
総務省『就業構造基本調査』個票の二次分析を通じて、若者の雇用の状況の変化とその背景を探る。
研究の方法
二次分析(過去の分析との比較を含む)
主な事実発見
全体として若年者雇用は改善の方向にあるが、若年非求職無業者であるニートは高止まりしていた(図表は省略)。
また過去の二次分析によれば、男性については収入が高いほど有配偶率が高く、今回の分析についても同様の傾向が確認された。ただし5年前に比べると全体として有配偶率は低下し、低収入層だけでなく高収入層でも有配偶率が低下していた(図表1)。
図表1 30~34歳男性の就業状況・年収別有配偶率の推移(在学者を除く)

「就職氷河期前期」を1993~98年卒、「就職氷河期後期」を1999~2004年卒、と定義し、就職氷河期世代後期を取り出して、5年前の状況と今回の状況を疑似コーホート(同じ個人ではなく集団の変化を把握するための分析)としてキャリアを分析した(図表2)。男女とも「他形態から正社員」(初職は正社員以外だが、現在は正社員)の割合が2017年調査よりも増加しており、正社員への移行が進んだことが把握される。人手不足を背景に、就職氷河期支援の効果が現れたと解釈される。
図表2「就職氷河期後期」の高卒・大卒の男女のキャリアの変化(在学中、および専業主婦(夫)除く)

他方で、当機構で実施した氷河期世代50人(ハローワーク・サポステ利用経験者)へのインタビュー調査によれば、次の3点が明らかになった。
第一に、一度正社員になっても再び非正社員・無業・失業状態にもどってしまう「ヨーヨー型キャリア」の者が多くを占めるため、中年になって正社員になったからといってこれまでの積み重ねである低年金が解消されるわけではなく、低年金の不安を持っている。このため、働ける限りは働きたいと希望する氷河期世代が多くなっており、年金拠出期間の45年化や高齢者雇用への支援の充実は欠かせない。
第二に、非正規雇用の経験しかなくても、これまで働いてきた経験を生かせるような仕事を選べば、50歳前後でも正社員転換をしている事例が複数あった。沢山の応募者の中から履歴書による選考でまず勝ち抜かなくてはいけない「大きな労働市場」ではなく、面接から入れるような「小さな労働市場」であれば、人柄や経験を雇用主に直接見てもらうことができるため、年齢が高くても採用される可能性が高くなる。また希望する仕事の発想を広げるための支援や職業訓練の機会の拡充も効果的であることがうかがえた。さらに、非正規雇用の既婚女性は主な家計の担い手ではないため、正社員化へのニーズは低いとされてきたが、今回の調査では子供の手が離れてきているため、正社員か正社員化が見込める仕事に就きたいという既婚女性が大半を占めており、既婚女性の正社員化への支援にも力を入れる必要がある。
第三に、無業者については、仕事をゆるやかに掲げた交流の場がいずれも求められていたが、それぞれのニーズが多様であるため、ハローワーク・サポステのみならず、多様な支援の場が必要である。
氷河期世代はバブル崩壊以降の日本社会の不安定化に最初に直面し、試行錯誤してきたトップランナーであり、氷河期世代に対して若者支援が始まったことにより、氷河期世代以降の若い世代も支援を受けることが可能になった。より若い世代が中年期を迎えたときにも、氷河期世代支援の経験が有益な支援の手がかりとなることが期待される。今後の日本社会をよりよくするための一つの方策として、氷河期世代支援のあり方を改めて議論していくことが求められる。
政策的インプリケーション
- 若年非求職無業者であるニートは高止まりしており、支援の継続が求められる。
- 就職氷河期世代の正社員化は進みつつあり、人手不足を背景とした支援の効果と解釈される。
政策への貢献
若年者雇用に関する基礎資料となる。
本文
分割版
研究の区分
プロジェクト研究「技術革新と人材開発に関する研究」
サブテーマ「技術革新と人材育成に関する研究」
研究期間
令和6~7年度


