資料シリーズ No.217
若年者の就業状況・キャリア・職業能力開発の現状③
―平成29年版「就業構造基本調査」より―

2019年6月26日

概要

研究の目的

若者の就業状況・キャリア・職業能力開発について整理する。また「就職氷河期世代」の状況についても併せて整理する。

研究の方法

総務省統計局「就業構造基本調査」の二次分析

主な事実発見

本資料シリーズの内容は多岐にわたるが、本成果の概要では「就職氷河期世代」についてのみ要点を取りまとめることとする。「就職氷河期世代」は、政策的には1993年~2004年に卒業を迎えた世代とされることが多く、本資料シリーズで活用している調査においては、調査実施時に大卒者は概ね35-46歳に、高卒者は31-42歳に分布している。なおかっこ内は本文の図表番号である。

フリーターの推移を確認すると(図表2-27)、20代前半にピークを迎えてその後減少するというのはどの世代でも同じだが、景気状況によってそのタイミングは異なり、「就職氷河期世代」は正社員への移行のタイミングが遅い。むろん35-44歳になっている「就職氷河期フリーター」(本文では「年齢超えフリーター」)は若い時期に比べて量的にかなり減少してはいるのだが、人口サイズが大きいため、現状では一定数はまだまとまって存在している。

次に正社員以外の雇用から正社員への移行率をみると(図表2-44)、35-39歳層、40-44歳層においても、2007年や2012年の同じ年齢層と比較して高くなっている。他方で現在フリーターである者の就業継続・転職希望を見ると(図表2-29)、35-44歳にあたる層の就業継続希望は高く、転職希望は低くなっている。先ほどの結果と考え合わせると、すでに正社員に移行できる状況にある者はかなり正社員に移行しており、「就職氷河期フリーター」においては何らかの理由があってフリーターを継続している者が一定数を占めている可能性が高い。

ところで非求職無業者数の推移についてはフリーターのように景気の影響は大きくなく、景気とは別の問題であることがうかがえる。35-44歳の非求職無業者38.9万人のうち、就業希望があるのは16.4万人である。就業希望の有無にかかわらず、求職活動をしない理由として最も多いのが「病気・けがのため」である(図表3-8、3-11)。

さて「就職氷河期世代」の非求職無業者の世帯収入についてみると、非求職無業者が世帯主の場合には年金・恩給がおよそ4割弱を占めている(図表3-23)。さらに非求職無業者が「子」である場合の世帯主の主な収入の種類は(図表3-27)、「子」が15-34歳の若者である場合には「賃金・給料」が7割を占めるが、「子」が35-44歳になると「賃金・給料」の割合は2割に落ち込み、「年金・恩給」が7割に迫る。また世帯全体の収入額も大きく減少する(図表3-28)。世帯主である親の年金で「就職氷河期世代」の非求職無業者と親が何とか暮らしている状況が浮かび上がる。

最後に「就職氷河期世代」は初職だけでなくその後の職業キャリアが不安定であることが指摘されている。本資料シリーズの分析結果からもそのことは裏付けられるが、男性のみ傾向を指摘する。男性の職業キャリアを見ると(図表1)、高卒者の場合には30-34歳、35-39歳、大卒者の場合には35-39歳、40-44歳において、「正社員定着」割合が低く、「他形態から正社員」が多くなっている。先行世代と比べても、そして若い世代と比べても特徴的である。

図表1 性・学歴・年齢別キャリア類型(在学中、および専業主婦(夫)を除く)抜粋

図表1

新卒で正社員になれなくても後から正社員になれば問題はないようにも思われるが、キャリア別の収入の違いは大きい(図表2)。男性の35-44歳の年間収入の平均は「正社員定着」が530.7万円であるのにたいして、「他形態から正社員」は400.7万円とかなり差がある。初職の状況が後から正社員になった場合においても影響を及ぼし続けていることが分かる。

図表2 正社員のキャリア別労働時間・収入(在学中を除く、実測値)35-44歳 抜粋

図表2

注:ウエイトバック前の実測値による。
週労働時間は、「だいたい規則的に」または「年間200日以上」働いている場合のみ。
時間当たり収入は年収/(週労働時間×50週)で求めた。

政策的インプリケーション

「就職氷河期世代」の3つの特徴を、現在正社員層、フリーター層、非求職無業者層のそれぞれについて指摘したい。

第一に、先行世代や若い世代に比べて「就職氷河期世代」は現在正社員である者であっても、正社員転職者や後から正社員になった層の割合が大きく、後から正社員になった者については正社員定着者に比べて収入も低い。

第二に、フリーターについては正社員への移行は進み、現状の人手不足の中でフリーターという人は何らかの理由があってアルバイトを継続している人も多いものと推測される。正社員化も重要であるが、非正規雇用の「質」の向上や雇用の安定化も期待される。

第三に、非求職無業者については課題がかなり大きいため、就労だけでなく福祉との連携や、さらには世帯全体を視野に入れた支援も重要である。就職氷河期世代は量的に多いので課題は大きいが、続く世代でも同様の困難を抱える人が存在する。今後の日本社会の継続的な課題となろう。

政策への貢献

若年者雇用政策にて活用予定。

本文

本文がスムーズに表示しない場合は下記からご参照をお願いします。

お知らせ

付属集計表の付表2-3(①男性、分類不能の産業区分)(PDF:172KB)および付表2-4(②女性、サービス職業従事者区分)(PDF:172KB)において、本来掲載すべき数値とは別の数値が掲載されていました。お詫びして訂正いたします。本HP掲載のPDFには訂正が反映されています。(2023年1月16日)

付属集計表の付表4-6 ①15~34歳部分(PDF:461KB)において、本来掲載すべき数値とは別の数値が掲載されていました。お詫びして訂正いたします。本HP掲載のPDFには訂正が反映されています。(2020年1月6日)

研究の区分

プロジェクト研究「多様なニーズに対応した職業能力開発に関する研究」
サブテーマ「若者の職業への円滑な移行とキャリア形成に関する研究」
課題研究「平成29年度就業構造基本調査の二次集計・分析」を含む

研究期間

平成30年度~令和元年度

執筆担当者

堀 有喜衣
労働政策研究・研修機構 主任研究員
小杉 礼子
労働政策研究・研修機構 研究顧問

関連の研究成果

入手方法等

入手方法

刊行物のご注文方法をご確認ください。

お問合せ先

内容について
研究調整部 研究調整課 お問合せフォーム新しいウィンドウ
ご購入について
成果普及課 03-5903-6263 

GET Adobe Acrobat Reader新しいウィンドウ PDF形式のファイルをご覧になるためにはAdobe Acrobat Readerが必要です。バナーのリンク先から最新版をダウンロードしてご利用ください(無償)。