資料シリーズNo.295
「job tag」(職業情報提供サイト)の
インプットデータ開発に関する研究(2024年度)

2025年11月19日

概要

研究の目的

2018年度と2019年度に当機構が初期開発し、その後毎年度情報の拡充・更新を行っている職業情報のデータセットについて、2024年度は14の職業の情報収集を主たる目的とした。

研究の方法

企業・団体等へのヒアリング調査、Webモニターを用いた就業者調査、および関連団体等経由で依頼した就業者調査
(Web調査の実査期間:2025年1月~2月、スクリーニング後の有効回答数:404件)

主な事実発見

14の職業について全ての情報領域(職業興味、仕事価値観、スキル、知識、仕事の内容(ワーク・アクティビティ)、仕事の性質、アビリティ、教育と訓練、タスク)で情報収集を目指して調査を実施し、概ね各職業の特徴が反映された結果が得られた。ただし昨年度までと同様、収録基準である最低サンプルサイズ20件を下回る職業もあった。また回答者負担の軽減のために調査は冒頭共通票、A票、B票、C票、末尾共通票に5分割されていたため、領域によって収録可能職業数には違いがある。

例えば図表1はB票の職業興味6項目の収録データ例である。B票では8職業が収録可能となり、研究的な職業(調香師、アクチュアリー、社会学研究者)は「研究的」が最も高い、社会的な職業(養護教諭、イベントの企画・運営、児童発達支援管理責任者)は「社会的」が最も高い等、職業の内容と合致した結果と言える。

図表1 職業興味(B票、得点範囲1~5点)の収録データ例
(設問内容:あなたが従事している仕事に合っているのは、どのような人ですか?)

職業興味の6項目、すなわち現実的、研究的、芸術的、社会的、企業的、慣習的の6項目について、8つの職業の収録値である就業者平均値が表に示されている。また、各職業で最も平均値が高かったもの、2番目に高かったものにそれぞれ色づけされている。調香師は研究的が1位、芸術的が2位。アクチュアリーは研究的が1位、企業的が2位。社会学研究者は研究的が1位、社会的が2位。鉄道車両の設計・開発は現実的が1位、慣習的が2位。養護教諭は社会的が1位、企業的が2位。イベントの企画・運営は社会的が1位、企業的が2位。学校事務(私立大学)は企業的が1位、社会的が2位。児童発達支援管理責任者は社会的が1位、企業的が2位。
収録番号 職業名 n 現実的 研究的 芸術的 社会的 企業的 慣習的
419 調香師 31 3.65 4.68 4.26 4.06 3.68 2.81
468 アクチュアリー 86 2.95 4.59 2.27 3.80 4.20 3.56
560 社会学研究者 26 3.35 4.35 3.04 3.69 3.54 3.00
561 鉄道車両の設計・開発 22 3.77 3.36 2.64 2.86 3.45 3.50
565 養護教諭 22 3.32 3.27 2.68 4.68 3.45 2.77
566 イベントの企画・運営 28 3.43 3.25 3.50 4.25 4.11 3.18
567 学校事務(私立大学) 33 2.97 3.15 2.55 3.58 3.64 3.36
568 児童発達支援管理責任者 33 3.27 3.09 3.24 4.39 3.58 3.06

濃い橙色:最も平均値が高いもの  薄い橙色:2番目に平均値が高いもの

次に図表2はC表のアビリティ35項目のうち、各職業の最高値か、または職業間の平均値差が2.0以上であった8項目を抜粋したものである。C表でも8職業が収録可能となり、高度な数式を扱うアクチュアリーでは数学的推論、論文執筆が主たる仕事の社会学研究者では記述表現、学校で児童と向き合う養護教諭では発話表現、人命を預かる鉄道車両の設計・開発ではトラブルの察知など、概ね各職業の特徴が表れていると言える。

図表2 アビリティ(C票、得点範囲1~5点)の収録データ例
(各職業の最高値、または職業間の平均値差が2.0以上の8項目を抜粋)
(設問内容:以下の能力についてあなたの現在の仕事での重要度を回答してください)

8つのアビリティ領域の項目について、8職業の収録値となる就業者平均値が表で示されている。項目名は左から順に、発話表現、記述表現、独創性、トラブルの察知、数学的推論、一瞬で素早く反応する力、聴覚の感度、聴覚的注意、である。また各職業で最も平均値が高かった項目に色付けされている。調香師では独創性が、アクチュアリーでは数学的推論が、社会学研究者では記述表現が、養護教諭では発話表現が最も高く、その他4つの職業、すなわち鉄道車両の設計・開発、イベントの企画・運営、学校事務(私立大学)、児童発達支援管理責任者の4職業ではトラブルの察知が最も平均値が高かった。
AB_3 AB_4 AB_6 AB_7 AB_12 AB_23 AB_33 AB_34
収録番号 職業名 n 発話表現 記述表現 独創性  トラブル
の察知
数学的推
一瞬で素
早く反 応
する力
聴覚の感
聴覚的注
意(特定
の音を聞
き分ける
力)
419 調香師 27 3.89 3.85 4.37 3.70 2.19 1.52 1.19 1.22
468 アクチュアリー 68 4.03 4.22 3.13 3.65 4.57 1.21 1.00 1.01
560 社会学研究者 23 3.91 4.30 4.26 3.70 3.70 2.48 2.17 2.35
561 鉄道車両の設計・開発 20 3.45 3.35 3.00 3.50 3.10 2.45 2.50 2.60
565 養護教諭 20 4.05 3.80 3.05 3.90 2.35 3.25 2.90 2.70
566 イベントの企画・運営 29 3.66 3.59 3.69 3.79 2.55 3.00 3.07 3.17
567 学校事務(私立大学) 27 3.26 3.44 2.81 3.48 2.70 2.11 2.00 2.07
568 児童発達支援管理責任者 31 3.74 3.55 3.32 4.03 2.45 2.97 2.65 2.71

政策への貢献

作成したデータは厚生労働省が開発・運営する「job tag」(職業情報提供サイト)に収録され、全国のキャリア教育、キャリア支援の現場で活用されることが期待される。

本文

分割版

研究の区分

プロジェクト研究「職業構造・キャリア形成支援に関する研究」
サブテーマ「職業構造・職務分析(job tag含む)に関する研究」

研究期間

令和6年度

執筆担当者

田中 歩
労働政策研究・研修機構 前統括研究員
鎌倉 哲史
労働政策研究・研修機構 副主任研究員
大橋 英永
労働政策研究・研修機構 元研究助手

関連の研究成果

お問合せ先

内容について
研究調整部 研究調整課 お問合せフォーム新しいウィンドウ

GET Adobe Acrobat Reader新しいウィンドウ PDF形式のファイルをご覧になるためにはAdobe Acrobat Readerが必要です。バナーのリンク先から最新版をダウンロードしてご利用ください(無償)。