資料シリーズNo.260
「job tag」(職業情報提供サイト(日本版 O-NET))のインプットデータ開発に関する研究(2021年度)

2022年10月25日

概要

研究の目的

2018年度と2019年度に当機構が初期開発し、2020年度に「仕事の内容」等を追加開発した職業情報のデータセットについて、2021年度は既存7領域のうち「仕事価値観」領域の新項目での情報再取得と、「スキル」領域の情報更新を主たる目的とした。また、AIの普及と関連する就業不安について特別調査を併せて実施した。

研究の方法

企業・団体等へのヒアリング調査、およびWebモニターを用いた就業者調査
(Web調査の実査期間:2022年1~2月、スクリーニング後の有効回答数:2万1,332件)

主な事実発見

本研究の主たる目的である公共の職業情報インフラの作成については事実発見という考え方は馴染まないが、職業大分類ごとに集約してデータを整理したところ、概ね各大分類の特徴と合致する結果が得られた。たとえば「スキル」については、全ての職業群で「読解力」「傾聴力」「説明力」は共通に一定のレベルが求められる一方、管理的な仕事では「説得」「交渉」「指導」等の対人的スキルが、生産工程の仕事では「クオリティチェック」が、輸送・機械運転の仕事では「操作と制御」がそれぞれの群内で平均値上位となっている(図表1)。

図表1 スキル領域の職業大分類別の平均値・標準偏差(全39項目のうち、いずれかの職業群で平均値が上位5位以内、もしくは平均値4.00以上となる13項目のみ抜粋)

スキル領域の職業大分類別の平均値・標準偏差
SK1 SK2 SK3 SK4 SK15 SK16 SK17 SK18 SK19 SK24 SK28 SK32 SK36
職業大分類 該当職業数 読解力 傾聴力 文章力 説明力 他者の反応の理解 他者との調整 説得 交渉 指導 道具、機器、設備の選択 操作と制御 クオリティチェック 時間管理
A 管理的な仕事 8 4.38 4.80 4.34 4.37 4.07 4.26 4.20 4.16 4.23 3.12 2.09 2.40 4.09
(0.18) (0.37) (0.27) (0.22) (0.38) (0.34) (0.32) (0.40) (0.41) (0.32) (0.26) (0.36) (0.60)
B 専門的・技術的な仕事 154 4.57 4.81 4.41 4.54 3.99 4.02 3.86 3.65 4.04 3.23 2.33 2.75 3.47
(0.62) (0.59) (0.66) (0.56) (0.61) (0.56) (0.59) (0.62) (0.59) (0.77) (0.83) (0.98) (0.51)
C 事務の仕事 47 3.86 4.35 3.87 3.97 3.38 3.46 3.31 3.20 3.44 2.17 1.72 2.00 2.93
(0.65) (0.61) (0.70) (0.64) (0.65) (0.84) (0.81) (0.82) (0.71) (0.67) (0.57) (0.64) (0.79)
D 販売の仕事 39 3.40 4.15 3.28 3.63 3.16 2.88 2.99 3.06 3.16 2.05 1.59 1.75 2.55
(0.55) (0.51) (0.62) (0.61) (0.50) (0.77) (0.74) (0.84) (0.53) (0.65) (0.44) (0.54) (0.68)
E サービスの仕事 41 3.14 4.04 2.88 3.43 3.14 2.73 2.69 2.48 2.98 2.14 1.41 1.69 2.53
(0.60) (0.75) (0.65) (0.73) (0.70) (0.65) (0.67) (0.66) (0.54) (0.59) (0.40) (0.43) (0.70)
F 保安の仕事 11 3.81 4.43 3.83 3.94 3.44 3.58 3.57 3.19 3.98 2.74 2.49 2.26 3.12
(0.68) (0.73) (0.73) (0.66) (0.66) (0.74) (0.90) (0.77) (0.79) (0.74) (0.74) (0.68) (0.68)
G 農林漁業の仕事 8 2.89 3.16 2.40 2.86 2.32 2.54 2.15 2.24 2.71 3.02 2.33 2.13 2.34
(0.29) (0.33) (0.39) (0.36) (0.33) (0.28) (0.31) (0.34) (0.39) (0.45) (0.49) (0.29) (0.34)
H 生産工程の仕事 59 3.10 3.25 2.75 2.97 2.55 2.66 2.37 2.28 2.94 2.80 2.51 2.82 2.47
(0.58) (0.58) (0.56) (0.57) (0.46) (0.53) (0.48) (0.49) (0.44) (0.59) (0.63) (0.55) (0.49)
I 輸送・機械運転の仕事 19 2.94 3.40 2.62 2.94 2.53 2.42 2.21 2.13 2.78 2.30 2.91 1.87 2.42
(0.67) (0.65) (0.63) (0.58) (0.58) (0.70) (0.66) (0.68) (0.77) (0.77) (1.05) (0.82) (0.63)
J 建設・採掘の仕事 13 3.24 3.58 2.78 3.20 2.74 3.08 2.75 2.82 3.27 3.39 2.14 2.36 2.45
(0.46) (0.41) (0.40) (0.40) (0.38) (0.46) (0.49) (0.47) (0.44) (0.55) (0.45) (0.56) (0.45)
K 運搬・清掃・包装等の仕事 20 2.22 2.56 1.95 2.33 2.01 1.99 1.77 1.71 2.25 1.69 1.35 1.35 1.86
(0.39) (0.56) (0.42) (0.55) (0.50) (0.57) (0.55) (0.51) (0.63) (0.62) (0.44) (0.57) (0.52)
全体 419 3.75 4.15 3.56 3.79 3.31 3.30 3.15 3.02 3.44 2.70 2.10 2.33 2.91
(0.93) (0.90) (1.01) (0.91) (0.86) (0.91) (0.93) (0.91) (0.81) (0.86) (0.80) (0.89) (0.78)

※各職業群で平均値が高かった上位5項目を太字に、平均値が4.00以上のセルを網掛けにしている。

一方、AIの普及に関連する就業不安についての特別調査ではすべての職業群で「AIという言葉を知っていて、何となく意味も知っている」が最も比率が高かった(図表2左列)。テクノロジーの詳細はともかく、我が国での概念としての認知度自体は高まっている様子が窺われる。

AI関連の就業不安に関する3項目を尋ねた結果、および同3項目の加算得点の平均値を図表2の中列に示す。3項目の多重比較を行ったところ、全体では不安得点は「就業者数」>「仕事」>「収入・賃金」の順で有意差が見られた。職業群単位で見ると、A、B、C、D、E、H、J、Kの8群にて「就業者数」の得点が「仕事」、「収入・賃金」のいずれか、または両方よりも有意に高い。したがって全体としては「AI普及によって就業者数が減るのではないか」との不安が比較的高いことが示唆される。

就業不安3項目の加算得点を「AI関連就業不安得点」として11群間の多重比較を実施した結果が図表2の最右列である。大まかにまとめれば「C 事務の仕事」と「D 販売の仕事」はAI関連就業不安得点が多くの他群より有意に高く、逆に「J 建設・採掘の仕事」は多くの他群より有意に低い(i.e. あまり不安に感じていない)。その他の8群は中間程度、と整理できる。

図表2 AI理解度の回答分布、およびAI関連就業不安の職業大分類別の平均値・標準偏差、多重比較結果

AI理解度の回答分布・等
AI理解度 「AIという言葉を……」   「AIの普及によって 私の現在の職業では……」  AI関連 就業不安得点 (3項目の加算値) 群間の 多重比較
職業大分類 該当職業数 全く聞いたことがなく、意味も知らない 聞いたことはあるが、意味は知らない 知っていて、何となく意味も知っている 知っていて、意味を理解している 仕事が減るかもしれない 収入・賃金が減るかもしれない 就業者数が減るかもしれない
A 管理的な仕事 8 1.6% 3.2% 48.1% 47.1% 1.92 a,b 1.75 b 2.00 a 5.67 >J
(0.65) (2.86) (7.51) (8.77) (0.48) (0.35) (0.49) (1.30)  
B 専門的・技術的な仕事 154 0.9% 4.9% 49.6% 44.6% 1.73 b 1.70 b 1.77 a 5.20 >J
(2.03) (4.32) (14.49) (16.55) (0.41) (0.38) (0.42) (1.18) <C,D
C 事務の仕事 47 0.9% 7.1% 56.2% 35.8% 2.14 a 2.02 b 2.16 a 6.32 B,E,F,G,H,J,K
(1.27) (5.03) (9.82) (12.53) (0.33) (0.31) (0.32) (0.94)  
D 販売の仕事 39 1.0% 9.9% 59.5% 29.6% 1.97 b 1.94 b 2.04 a 5.94 >B,D,F,G,J,K
(1.61) (5.52) (8.26) (11.26) (0.41) (0.34) (0.39) (1.12)  
E サービスの仕事 41 1.9% 11.1% 59.6% 27.4% 1.46 b 1.52 a 1.55 a 4.52  
(2.38) (4.79) (8.04) (10.11) (0.41) (0.41) (0.45) (1.25) <C,D
F 保安の仕事 11 1.5% 7.2% 58.0% 33.4% 1.55 - 1.39 - 1.51 - 4.45  
(1.57) (4.59) (10.12) (10.62) (0.25) (0.23) (0.28) (0.68) <C,D
G 農林漁業の仕事 8 1.2% 11.2% 54.0% 33.6% 1.31 - 1.28 - 1.34 - 3.93  
(1.39) (4.52) (7.22) (4.22) (0.43) (0.27) (0.37) (1.05) <C,D
H 生産工程の仕事 59 2.0% 11.5% 57.9% 28.6% 1.74 b 1.72 b 1.81 a 5.27 >J
(2.51) (6.06) (9.00) (9.45) (0.35) (0.32) (0.34) (0.99) <C
I 輸送・機械運転の仕事 19 2.6% 12.1% 59.3% 26.0% 1.79 - 1.77 - 1.84 - 5.40 >J
(2.67) (5.91) (7.69) (9.65) (0.48) (0.48) (0.52) (1.46)  
J 建設・採掘の仕事 13 1.9% 12.7% 62.2% 23.3% 1.08 b 1.20 a 1.18 a 3.46  
(2.63) (6.06) (10.47) (7.79) (0.31) (0.28) (0.31) (0.89) <A,B,C,D,H,I,K
K 運搬・清掃・包装等の仕事 20 3.0% 14.0% 57.1% 25.8% 1.56 b 1.62 a 1.67 a 4.85 >J
(2.64) (5.81) (7.41) (9.43) (0.27) (0.24) (0.28) (0.77) <C,D
全体 419 1.4% 8.3% 54.9% 35.4% 1.74 b 1.71 c 1.79 a 5.24
(2.15) (5.92) (11.98) (15.10) (0.44) (0.40) (0.44) (1.26)

※各職業群で比率または平均値が最も高かった項目を網掛けにしている。

※就業不安3項目の多重比較の結果、有意差が見られた場合には高群から順にアルファベットを、有意差が無いペアには同じアルファベットを付している。「-」は、有意差のあるペアが無かったことを示す。

※群間の多重比較はHolm法で全体5%に有意水準を調整した上で対比較(マンホイットニーのU検定)を実施し、有意差が見られた場合にどの群よりも高かった(>)のか、低かった(<)のかを表す。

政策への貢献

作成したデータの一部は厚生労働省が開発・運営する「job tag」(職業情報提供サイト(日本版O-NET))に収録され、全国のキャリア教育、キャリア支援の現場で活用されることが期待される。

本文

研究の区分

プロジェクト研究「職業構造・キャリア形成支援に関する研究」
サブテーマ「職業構造・職務分析(日本版 O-NET含む)に関する研究」

研究期間

令和3年度

執筆担当者

田中 歩
労働政策研究・研修機構 統括研究員 
鎌倉 哲史
労働政策研究・研修機構 研究員
吉田 航
国立社会保障・人口問題研究所 研究員

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