調査シリーズNo.252
「同一労働同一賃金の対応状況等に関する調査」
(労働者Webアンケート調査)結果

2025年3月27日

概要

研究の目的

いわゆる正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消に向けて、「パートタイム・有期雇用労働法」及び「改正労働者派遣法」とこれに伴う「同一労働同一賃金ガイドライン」が、2020年4月1日より施行(2021年4月1日より全面施行)され、「不合理な待遇差の禁止」が規定されるとともに、「待遇に関する説明義務の強化」等が図られた。その施行前後に於ける、パートタイム・有期雇用労働者及び派遣労働者の待遇や納得性の変化等について把握するため、労働者Webアンケート調査を実施した。

研究の方法

インターネット調査会社の登録モニターを対象に、令和5年9月5~13日に実査を行い、国内在住かつ国内企業に勤務する、満15歳以上のパートタイム・有期雇用労働者及び派遣労働者計10,000人の有効回答を、性別・年齢層別に層化割付回収した。

主な事実発見

  • 全有効回答労働者(n=10,000人)に、2020年4月より「パートタイム・有期雇用労働法」及び「改正労働者派遣法」が施行され、正社員との間の不合理な待遇差を禁止する同一労働同一賃金ルールや、待遇差の内容とその理由の説明義務等が規定されたことの認知度を尋ねると、詳しくあるいは大まかな内容を「知っている」との回答が約1/3(計34.2%)となったが、「まったく知らない・わからない」も2割超(23.9%)みられ、引き続きの周知徹底が求められる(図表1)。

    図表1 同一労働同一賃金ルールや待遇差の内容とその理由の説明義務等が規定されたことについての認知度

    図表2概要:常用雇用者101~500人の企業に勤務する短時間労働者の、適用拡大に伴う働き方や厚生年金・健康保険の適用状況の変化、厚生年金・健康保険に加入した・しなかった理由について紹介。画像クリックで拡大表示

    同一労働同一賃金ルール等が規定されたことについて、約1/3が詳しくあるいは大まかな内容を「知っている」と回答したが、2割超が「まったく知らない・わからない」とし、引き続きの周知徹底が求められる。

  • 全有効回答労働者のうち、2020年3月当時はパートタイム・有期雇用労働者あるいは派遣労働者でなかった者を除き(n=8,705人)、同年4月以降、自身に新たに支給・適用された待遇や労働条件の有無について尋ねると、約3割(30.8%)が何らか「あった」と回答した。同様に、2020年3月以前から支給・適用されていたが、4月以降に増額・改善された待遇や労働条件についても、1割以上(13.6%)が「あった」と回答し、総じて、新たに支給・適用あるいは増額・改善のいずれかが「あった」割合は、3人に一人超(計34.5%)となった(図表2)。

    その上で、新たに支給・適用された待遇や労働条件の内容を具体的にみると(複数回答)、「賞与・ボーナス」(36.8%)が最多で、これに「通勤手当(交通費支給を含む)」(29.9%)、「定期的な昇給制度」(24.0%)、「時間外、深夜・休日労働に対する手当(割増率を含む)」(19.4%)、「特定の日に勤務したことに対する手当」(13.6%)等が続いた。同様に、2020年3月以前から支給・適用されていたが、4月以降に増額・改善された待遇や労働条件については(複数回答)、「定期的な昇給制度」(22.2%)が最も多く、次いで「その他(前の選択肢以外の待遇・労働条件)」(19.2%)、「賞与・ボーナス」(15.1%)、「通勤手当(交通費支給を含む)」(10.2%)、「時間外、深夜・休日労働に対する手当(割増率を含む)」(9.9%)等があがった。

    すなわち、いかなる待遇差が不合理なものであるか(ないか)等について具体例を示した「同一労働同一賃金ガイドライン」等で、同一の支給や相違に応じた支給等が規定された待遇要素が上位にあがり、不合理性の判断に当たっては、個々の待遇毎に当該待遇の性質・目的に照らし、適切と認められるものを考慮して行われるべき旨が明確化されたことを受け、具体的な取組が進んでいる様子がうかがえる。

    図表2 2020年4月(パートタイム・有期雇用労働法等の施行)以降の待遇や労働条件の変化

    図表2概要:常用雇用者101~500人の企業に勤務する短時間労働者の、適用拡大に伴う働き方や厚生年金・健康保険の適用状況の変化、厚生年金・健康保険に加入した・しなかった理由について紹介。画像クリックで拡大表示

    パートタイム・有期雇用労働者あるいは派遣労働者の3人に一人超(計34.5%)が、2020年4月以降、新たに支給・適用、増額・改善された待遇や労働条件が「あった」と回答した。具体的な内容(複数回答)としては、「賞与・ボーナス」や「通勤手当(交通費支給を含む)」「定期的な昇給制度」「時間外、深夜・休日労働に対する手当(割増率を含む)」等、「同一労働同一賃金ガイドライン」で、同一の支給や相違に応じた支給等が規定された待遇要素が上位にあがった。

  • 全有効回答労働者(n=10,000人)に、正社員との待遇差の内容や理由について、現在の勤め先に説明を求めた経験や、現在の勤め先から説明を受けた経験があるか尋ねると、「説明を求めたことがある」割合は8.0%となったが、「勤め先から説明があった」割合は5.4%にとどまり、改めて第14条の周知徹底が求められる(図表3)。なお、(労働者からの求めの有無にかかわらず)、勤め先から「説明や書面等交付があった」割合は約3割(29.1%)で、うち「すべての内容について納得できた」割合は半数超(57.5%)となっている。

    図表3 現在の勤め先との間で説明を求めた経験(左)や説明(書面等交付含む)を受けた経験とその納得度(右)

    図表2概要:常用雇用者101~500人の企業に勤務する短時間労働者の、適用拡大に伴う働き方や厚生年金・健康保険の適用状況の変化、厚生年金・健康保険に加入した・しなかった理由について紹介。画像クリックで拡大表示

    現在の勤め先に「説明を求めたことがある」割合は8.0%で、「勤め先から説明があった」割合は5.4%となった。また、(労働者からの求めの有無にかかわらず)「説明や書面等交付があった」割合は約3割(29.1%)で、うち「すべての内容について納得できた」割合は半数超(57.5%)となっている。

  • 全有効回答労働者(n=10,000人)に、現在の勤め先や仕事(「派遣労働者」は現在の派遣先の会社での仕事や働き方)に対する満足度について尋ねると、「満足している」(16.5%)と「どちらかというと、満足している」(38.6%)を合わせて満足計が半数を超え、「どちらかというと、不満である」(12.0%)と「不満である」(6.7%)を合わせた不満計を大きく(約3倍)上回った(図表4)。

    満足計の割合は、「パートタイム・有期雇用労働法」等について「詳しく、知っている」あるいは「詳しくはわからないが、大まかな内容は知っている」場合(同順に計61.0%、計60.0%)に高い。また、2020年4月以降、新たに支給・適用、増額・改善された待遇や労働条件があった場合(計59.8%)に高く、正社員との待遇差の内容や理由について「説明を求めたことがあり、勤め先から説明があった」場合(計60.6%)のほか、「説明を求めたことはないが、勤め先から説明があった」場合(計66.1%)や「説明を求めたことはないが、説明に代わる書面等が交付された」場合(計60.2%)に高くなっている。中でも、勤め先からの説明の「すべての内容に、納得できた」場合(計74.7%)に顕著に高いのに対し、「説明を求めたことはあるが、勤め先から説明はなかった」場合は、不満計の割合(計42.2%)が顕著に高く、(労働者より求めがあった場合に説明義務を果たすことは言うまでも無く)満足度を高める雇用管理を行う上では、求めに依らず納得性を高めるような説明や書面等交付を行うことが重要であることが分かる。

    図表4 現在の勤め先や仕事に対する満足度

    図表2概要:常用雇用者101~500人の企業に勤務する短時間労働者の、適用拡大に伴う働き方や厚生年金・健康保険の適用状況の変化、厚生年金・健康保険に加入した・しなかった理由について紹介。画像クリックで拡大表示

    全有効回答労働者に現在の勤め先や仕事に対する満足度について尋ねると、どちらかというとを含めた満足計が半数を超え、不満計を大きく上回った。満足計の割合は、「パートタイム・有期雇用労働法」等について「詳しく、知っている」場合や2020年4月以降、新たに支給・適用、増額・改善された待遇や労働条件があった場合、また、正社員との待遇差の内容や理由について「説明を求めたことはないが、勤め先から説明があった」場合に高く、中でも、勤め先からの説明の「すべての内容に、納得できた」場合に顕著に高い。これに対し、「説明を求めたことはあるが、勤め先から説明はなかった」場合は不満計の割合が高くなっている。

政策への貢献

本文

分割版

研究の区分

情報収集

研究期間

令和5~6年度

執筆担当者

渡邉 学
調査部 統計解析 担当部長(当時)
渡邊 木綿子
調査部 次長

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研究調整部 研究調整課 お問合せフォーム新しいウィンドウ

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