調査シリーズNo.251
同一労働同一賃金の対応状況等に関する調査(企業調査)

2025年3月27日

概要

研究の目的

今後想定される同一労働同一賃金ルールの見直し検討に資するため、同一労働同一賃金ルール施行後の各企業における対応状況について把握することを目的として、厚生労働省からの要請調査研究として実施したもの。

研究の方法

中小企業を対象としたウェブモニター調査及び大企業を対象とした郵送調査。中小企業調査は2023年10月2日~16日に実査。大企業調査は2023年9月29日~10月20日に実査。有効回収数は、中小企業調査で2,677社(有効回収率22.5%)、大企業調査で761社(有効回収率15.2%)。

主な事実発見

1.待遇見直しの具体的内容

パート・有期社員又は正社員の待遇の見直しを行った企業のうち、パート・有期社員の各待遇を拡充した割合についてみると、基本給では、中小企業調査で約6割、大企業調査で約4割。基本給の昇給の仕組みでは、中小企業で約4割、大企業で約3割。

賞与では、中小企業・大企業ともに約4割。退職金では、中小企業・大企業ともに約1割。

家族手当では、中小企業で約1割、大企業で約3割。通勤手当では、中小企業で約3割、大企業で約2割。

休暇制度(拡充割合が高いもの)では、中小企業で約3割、大企業で約5割。教育訓練では、中小企業で約2割、大企業で約1割。

図表1 パート・有期社員の待遇の新設・拡充等を行った企業の割合

図表1画像:パート・有期社員又は正社員の待遇の見直しを行った企業のうち、パート・有期社員の各待遇を拡充した割合についてみると、基本給では、中小企業調査で約6割、大企業調査で約4割。基本給の昇給の仕組みでは、中小企業で約4割、大企業で約3割。賞与では、中小企業・大企業ともに約4割。退職金では、中小企業・大企業ともに約1割。家族手当では、中小企業で約1割、大企業で約3割。通勤手当では、中小企業で約3割、大企業で約2割。休暇制度(拡充割合が高いもの)では、中小企業で約3割、大企業で約5割。教育訓練では、中小企業で約2割、大企業で約1割。

2.同一労働同一賃金ルールへの対応前後の給与・賞与の変化

パート・有期社員又は正社員の待遇の見直しを行った企業における同一労働同一賃金ルールへの対応前後における毎月の給与の変化についてみると、中小企業調査では約9割の企業で増加し、「1~3%増」が約4~5割 、「4~5%増」が約3割、「6%以上増」が約1~2割。大企業調査では約8割の企業で増加し、「1~3%増」が約5~6割、「4~5%増」が約1~2割、「6%以上増」が約1割。中小企業の方で増加幅がやや大きい。

同様に年間の賞与の変化についてみると、中小企業調査では約7~9割の企業で増加し、「1~3%増」が約2~3割、「4~5%増」が約1~3割、「6%以上増」が約1~2割、「新設」が約1~2割。大企業調査では約8~9割の企業で増加し、「新設」が約3~4割に上り、「1~3%増」が約3割、「4~5%増」が約0~1割、「6%以上増」が約1~2割。大企業の方が新設した企業の割合が高い一方、中小企業では、増加幅の大きい企業の割合が相対的に高い。

図表2-1 同一労働同一賃金ルールへの対応によるパート・有期社員の毎月の給与(1人当たり)の状況

図表2-1画像:パート・有期社員又は正社員の待遇の見直しを行った企業における同一労働同一賃金ルールへの対応前後における毎月の給与の変化についてみると、中小企業調査では約9割の企業で増加し、「1~3%増」が約4~5割 、「4~5%増」が約3割、「6%以上増」が約1~2割。大企業調査では約8割の企業で増加し、「1~3%増」が約5~6割、「4~5%増」が約1~2割、「6%以上増」が約1割。中小企業の方で増加幅がやや大きい。同様に年間の賞与の変化についてみると、中小企業調査では約7~9割の企業で増加し、「1~3%増」が約2~3割、「4~5%増」が約1~3割、「6%以上増」が約1~2割、「新設」が約1~2割。大企業調査では約8~9割の企業で増加し、「新設」が約3~4割に上り、「1~3%増」が約3割、「4~5%増」が約0~1割、「6%以上増」が約1~2割。大企業の方が新設した企業の割合が高い一方、中小企業では、増加幅の大きい企業の割合が相対的に高い。

図表2-2 同一労働同一賃金ルールへの対応によるパート・有期社員の賞与(1人当たり)の状況

図表2-2画像

3.パート・有期社員への各待遇の適用状況、正社員の算定・付与基準との相違

(※パート・有期社員の各雇用形態(有期フルタイム、有期パートタイム、無期パートタイム)の労働者を雇用する企業を対象にした割合)

基本給の算定基準は、中小企業調査では約7~8割の企業で、大企業調査では約8~9割の企業で「正社員とは異なる基準」。

賞与は、中小企業では約6~7割の企業で支給対象だが、約4~5割の企業で異なる基準(分母は同じ。以下同様。)。大企業では約6~8割の企業で支給対象だが、約6割の企業で異なる基準。

退職金は、中小企業では約2~3割の企業で支給対象だが、約1~2割の企業で異なる基準。大企業では約2~3割の企業で支給対象だが、約2割の企業で異なる基準。

図表3-1 パート・有期社員への各処遇の適用状況(正社員への適用を100とした場合)(中小企業)

図表3-1画像:賞与は、中小企業では約6~7割、大企業では約6~8割の企業で支給対象。退職金は、中小企業、大企業ともに約2~3割の企業で支給対象。

図表3-2 パート・有期社員への各処遇の適用状況(正社員への適用を100とした場合)(大企業)

図表3-1画像:賞与は、中小企業では約6~7割、大企業では約6~8割の企業で支給対象。退職金は、中小企業、大企業ともに約2~3割の企業で支給対象。

4.同一労働同一賃金ルールへの対応に当たっての労使の話合い

同一労働同一賃金ルールへの対応に当たっての労使の話合いの実施状況についてみると、中小企業調査では、パート・有期社員を雇用する企業のうち半数で労使の話合いを行わず。パート・有期社員を含めた話合いを行った企業は約3割、含めないで行った企業は約2割。大企業調査では、同様に約4割の企業で話合いを行わず。パート・有期社員を含めて話合いを行った企業は約2割、含めないで行った企業は約4割。

5.人事評価の実施状況

パート・有期社員を雇用する企業における人事評価の実施状況についてみると、中小企業調査・大企業調査ともに、正社員の人事評価は定期・不定期含め約9割の企業で実施。一方で、パート・有期社員への人事評価は約6~8割の企業で実施。

政策への貢献

労働政策審議会同一労働同一賃金部会において調査結果(速報値)を活用。

本文

分割版

研究の区分

プロジェクト研究「労働市場とセーフティネットに関する研究」
サブテーマ「企業の人材戦略の変化とその影響に関する研究」

研究期間

令和5~6年度

執筆担当者

髙松 利光
労働政策研究・研修機構 統括研究員
山口 哲司
労働政策研究・研修機構 アシスタントフェロー

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