調査シリーズNo.204
デジタル技術の進展に対応した
ものづくり人材の確保・育成に関する調査結果

2020年10月30日

概要

研究の目的

I o T(Internet of Things)やビッグデータ、人工知能(AI)などを活用した第四次産業革命が注目を集めている。人手不足への対応や生産性向上のため、大企業に限らず中小企業でもこれらの先進テクノロジーを導入・活用することが求められるものの、現状ではまだ、中小企業の多くで導入・活用が進んでいないものと推測される。99%以上が中小企業である製造業では、新卒の大企業志向の高まりや若者のものづくり離れ、少子化等によって人手不足が深刻化している。

「ものづくり基盤技術振興基本法」の基本理念では、ものづくり労働者が不足していることを鑑み、ものづくり労働者の確保及び資質の向上が図られなければならないとしている。一方、2018年に政府が閣議決定した「未来投資戦略2018」は、第四次産業革命に対応できる人材投資と労働移動の円滑化を進めるとうたい、IT(情報技術)人材に焦点を当てている。こうしたなか、ものづくり産業におけるICT(情報通信技術)などデジタル技術に対応した人材の育成や育成の取り組みの現状がどのようになっているのか明らかにするため、実態等を把握する企業アンケート調査を行った。

研究の方法

企業アンケート調査(郵送方式)。

全国の日本標準産業分類(平成25年10月改訂)による項目「E 製造業」に分類される企業(以下「製造業の企業」という)のうち、〔プラスチック製品製造業〕〔鉄鋼業〕〔非鉄金属製造業〕〔金属製品製造業〕〔はん用機械器具製造業〕〔生産用機械器具製造業〕〔業務用機械器具製造業〕〔電子部品・デバイス・電子回路製造業〕〔電気機械器具製造業〕〔情報通信機械器具製造業〕〔輸送用機械器具製造業〕の従業員数30人以上の企業20,000社。総務省の経済センサス基礎調査(平成26年版)の確報集計での企業分布に従い、民間信用調査機関所有の企業データベースから業種・規模別に層化無作為抽出した。

主な事実発見

◆ほぼ半数の企業がいずれかの工程・活動でデジタル技術を活用。活用理由のトップは「人の作業負担の軽減」

図表1にある〈a.開発・設計〉~〈i.顧客や製品市場に関する情報の収集〉までのものづくりの工程・活動のなかで、1つの工程・活動でも「すでに活用している」との回答があった企業(以下、「デジタル技術を活用している企業」と略)は2,151社で、回答企業に占める割合は49.3%となっている。

「該当する工程・活動がない」と回答した企業と無回答を除いて、工程・活動ごとに「すでに活用している」と回答した企業割合を集計したところ、同割合が最も高い工程・活動は〈f.受・発注管理〉(34.0%)で、次いで〈a.開発・設計〉(30.4%)、〈h.取引先とのネットワーク化〉(29.9%)、〈c.生産管理〉(29.8%)、〈b.製造〉(28.0%)などの順で高い。

図表1 ものづくりの各工程・活動におけるデジタル技術の活用状況

(「該当する工程・活動がない」および無回答を除いて集計)(単位:%)

図表1画像

〈a.開発・設計〉~〈i.顧客や製品市場に関する情報の収集〉までの工程・活動のなかで、1つの工程・活動でも「すでに活用している」または「活用を検討中」との回答があった企業(n=3,209)に対し、デジタル技術を活用する理由を尋ねると(複数回答)、「人の作業負担の軽減」(58.8%)が最も割合が高く、次いで「生産態勢の安定」(52.1%)、「労働時間の短縮」(46.5%)、「開発・製造等のリードタイムの削減」(46.2%)および「在庫管理の効率化」(46.2%)などの順で高い(図表2)。

図表2 デジタル技術を活用する理由 (複数回答)

1つの工程でも「すでに活用している」「活用を検討中」との回答があった企業n=3,209(単位:%)

図表2画像

◆デジタル技術活用を進めるための取り組みとして、デジタル技術活用企業では「研修・講習会への参加」の回答割合(24.5%)が3番目に高い。

デジタル技術の活用を進めるため、現在行っている取り組みを尋ねたところ(複数回答)、デジタル技術を活用している企業では、「会社が必要とするデジタル技術活用の要件の明確化」が29.8%で最も回答割合が高く、「会社の指示による社外機関での研修・講習会への参加」(24.5%)が3番目に高い回答割合となっている(図表3)。

図表3 デジタル技術の活用を進めるため現在行っている取り組み(複数回答)

デジタル技術を活用している企業だけで集計 n=2,151(単位:%)

図表3画像

◆デジタル技術活用企業の4割が、5年後に鍵となる技術社員の技能として、デジタル技術導入・活用能力をあげる

主力製品の製造にあたって、研究・開発、生産管理などを担当する技術系正社員にとって5年後に鍵となっている技能(見通し)についての回答結果をみていくと、デジタル技術活用企業では、「ICTなどデジタル技術をものづくり現場等へ導入・活用していく能力」をあげる企業が約4割(39.7%)にのぼり、デジタル技術未活用企業の同割合を10ポイント以上上回っている(図表4)。

図表4 主力製品の製造にあたって、5年後に、研究・開発、生産管理などを担当する技術系正社員にとって鍵となる技能の見通し (複数回答) 

(単位:%)

図表4画像

◆デジタル技術活用企業がより、先を見越して人材育成・能力開発を行っている様子

ものづくり人材の育成・能力開発の方針について、最も近いものを選んでもらったところ、「数年先の事業展開を考慮して、その時必要となる人材を想定しながら能力開発を行っている」との回答割合は、デジタル技術活用企業の方が未活用企業よりも高くなっており、デジタル技術活用企業がより、先を見越した視点で人材育成を行っている様子がうかがえる(図表5)。

図表5 ものづくり人材の育成・能力開発の方針

(単位:%)

図表5画像

◆デジタル技術活用企業の5割以上が社内人材のOJTやOFF-JTにより、デジタル技術活用を担う人材を確保していく意向

デジタル技術を活用している企業の、デジタル技術の活用を担う人材の今後の確保方法に対する考え方(複数回答)をみていくと、「自社の既存の人材をOJT(職場での仕事を通じた教育訓練)で育成する」(57.0%)が最も回答割合が高く、「自社の既存の人材をOFF―JT(外部セミナー・講習等への参加など職場を離れた教育訓練)で育成する」(51.5%)も5割以上の回答割合となっている(図表6)。

図表6 デジタル技術の活用を担う人材の今後の確保方法に対する考え方 (複数回答)

(単位:%)

図表6画像

政策的インプリケーション

デジタル技術の進展に伴って、ものづくり企業においても今後、デジタル技術を導入したり活用できる人材へのニーズが高まるものの、デジタル技術活用企業の半数は、そうした人材を今後、社内でのOJTやOFF-JTの活用により確保していくとの見通しであることから、デジタル技術の進展に対応した企業の人材開発に対する行政側の支援が今後も重要となる。

政策への貢献

「令和元年度ものづくり基盤技術の振興施策」(令和2年版ものづくり白書)に活用。また、人材開発行政にかかる政策立案のための基礎資料として活用される。

本文

全文がスムーズに表示しない場合は下記からご参照をお願いします。

研究の区分

情報収集

研究期間

令和元年度~令和2年度

研究担当者

郡司 正人
労働政策研究・研修機構 調査部長
藤本 真
労働政策研究・研修機構 人材育成部門主任研究員
荒川 創太
労働政策研究・研修機構 調査部主任調査員補佐

入手方法等

入手方法

刊行物のご注文方法をご確認ください。

お問合せ先

内容について
研究調整部 研究調整課 お問合せフォーム新しいウィンドウ
ご購入について
成果普及課 03(5903)6263

Adobe Readerのダウンロード新しいウィンドウ PDF形式のファイルをご覧になるためにはAdobe Readerが必要です。バナーのリンク先から最新版をダウンロードしてご利用ください(無償)。Adobe Readerをダウンロードしても、PDFファイルが正常に表示されない場合は「閲覧に必要なソフトウェアについて」をご覧ください。