調査シリーズNo.189
民間教育訓練プロバイダーの活動

2019年3月29日

概要

研究の目的

主に社会人向けに教育訓練サービスを提供する「教育訓練プロバイダー」の活動状況を把握し、教育訓練サービスの供給構造を明らかにしようとする取り組みは、2004~2007年の第1期中期計画において当機構で実施してきた。その後、現在に至るまでのあいだに、離職者訓練の民間委託の大幅な進展、基本的には委託を受けた民間教育訓練機関により実施される求職者支援制度の発足、職業訓練サービスの質向上に対する意識の高まり、教育訓練給付の拡充など、教育訓練サービスの供給をめぐる環境は大きく変化した。

本調査では、以上のような環境変化の中での教育訓練プロバイダーの活動について実態を把握し、教育訓練サービスの供給構造の解明を改めて進め、民間教育訓練プロバイダーを活用した各種能力開発推進施策の検討につなげることを目的としている。

研究の方法

アンケート調査『教育訓練活動に関する調査』の実施(2016年2~3月)

対象は社会人を対象とした教育訓練サービスを提供している組織及び提供している可能性の高い組織(①+②):9,986組織

  • ① a.株式会社・有限会社・合名会社・合資会社、b. 財団法人・社団法人、c. 職業訓練法人、d.商工会議所・商工会、e. 協同組合・商工組合、f.任意団体、g.専修学校・各種学校、h.医療法人・社会福祉法人、i.NPO法人
  • ② 大学(国公立・私立)、短大(国公立・私立)、高専

主な事実発見

  1. 対面型の講義形式である講習会・セミナーについて、1コース当たりの人数の傾向と、延べコース数の中央値を用いて各組織形態の教育訓練プロバイダーを整理してみると、図表1のように示すことができる。

    比較的多数のコースを実施し、それぞれのコースの受講者も多い傾向にあるのは、公益法人、大学である。一方、同じく比較的多数のコースを実施しながら、各コースの受講者数は少ないのは、職業訓練法人、高専、民間訓練法人である。

    1コース当たりの受講者数は多数ではあるものの実施するコースは比較的少ないのが、経営者団体、専修学校・各種学校、短大で、コースの数も1コース当たりの受講者数も比較的少ない傾向にあるのがNPOである。

図表1 コース数と1コース当たりの受講者数の傾向による民間教育訓練プロバイダーの分類

図表1画像

  1. 最も多く実施されている短期(開催期間1ヶ月未満)の対面型講義について、各組織形態のプロバイダーが実施するコースを分野別に集計してみたところ、民間営利法人はOA・コンピュータの比重が他の組織形態に比べて高く、経営者団体は「マネジメント」分野の比重が比較的高い。また、公益法人・高専は「技術・技能」分野の占める比重が、職業訓練法人のコースは「資格取得研修」の占める比重が相対的に高い。専修・各種学校、NPOは「医療・看護・福祉」の比重が相対的に高く、大学、短大は「教養・趣味」分野の比重が高い(図表2)。

図表2 短期コースで実施しているコースの分野(複数回答)

図表2画像

  1. 同じく短期コースについて、どのような雇用・就業上の地位にある人が受講しているかを集計してみると、民間営利法人、公益法人、職業訓練法人、高専は「中小企業サラリーマン」を対象としたコースの占める比重が最も高く、大学は「公務員・団体職員」、短大は「主婦、学生」、NPO法人は「離職者、無業者」が受講するコースの割合が最も高い。経営者団体の実施するコースでは、「自営業・自由業」の受講するコースの割合がとりわけ高かった(図表3)。

図表3 短期コースを受講している人(複数回答)

図表3画像

  1. 離職者訓練、求職者支援訓練ともに、他の形態に比べて実施率が高いのは、民間営利法人、専門学校・各種学校、職業訓練法人である。対照的に、公益法人、経営者団体、大学などには、公共職業訓練を手がけている組織がほとんど見られない。

政策的インプリケーション

  1. 公共訓練の受託機会の拡大や、教育訓練給付の充実などは、教育訓練サービスの提供を主な事業とする民間営利法人の、品質に対する関心・取り組みを高めているが、一方でコスト面での問題も抱えつつある。取り組みに見合う収益があがっているか、あるいは取り組みを可能にする収益を維持し続けられるかに留意する必要があろう。
  2. 公益法人や経営者団体は、主に中小企業サラリーマンや自営業・自由業層の教育訓練において一定の役割を果たしている。しかし、公益法人・経営者団体の教育訓練機会の提供は、本来的な事業と並行して行われることが多いため、品質の向上などに関心がむきにくい。今後、公益法人・経営者団体を通じて提供される教育訓練の充実をどのように図るかのさらなる検討が求められる。

政策への貢献

民間教育訓練プロバイダーの活動に対する支援や指導にあたっての基礎的資料として活用される予定。

本文

全文がスムーズに表示しない場合は下記からご参照をお願いします。

研究の区分

プロジェクト研究「多様なニーズに対応した職業能力開発に関する研究」
サブテーマ「職業能力開発インフラと生産性向上に向けた人材の育成に関する研究」

研究期間

平成27~30年度

研究担当者

藤本 真
労働政策研究・研修機構 主任研究員

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