調査シリーズNo.142
企業における資格・検定等の活用、大学院・大学等の受講支援に関する調査

平成27年 5月29日

概要

研究の目的

働く人々の多くが自主的な職業生活設計を希望し 、一方で経済のグローバル化やサービス化が進んでより高度な専門的知識・スキルに対する要請が強まる中で、労働者による自発的なキャリアアップの機会をいかにして充実していくかが社会的、政策的課題として注目を集めつつある。こうした状況を踏まえて企業に対するアンケート調査を実施し、①労働者がキャリアアップ、キャリアチェンジを図ろうとする際、あるいは学び直しを進める際、その取得が目標となることが多い、各種の資格・検定に対する企業のニーズや、企業内における資格・検定の扱い、②社会人の学び直しの際に活用されることが多い、大学院、大学、専門学校、各種学校等での受講に対する企業の活動や評価について明らかにしようと試みた。

研究の方法

2014年1~2月にかけて、アンケート調査「企業における資格・検定等の活用、大学院・大学等の受講支援に関する調査」を実施。農林漁業と公務を除く常用雇用者100人以上の9,976社を調査対象とし、1,475社から有効な回答を得た(有効回答率:14.8%) 。

主な事実発見

  1. 企業が資格・検定を重視する理由にそって、各種資格・検定を分類していくと、①基礎的な知識・技能および担当業務で必要な知識・技能の習得に役立つという理由から重視される「知識・技能習得貢献型」、②法規対応上の必要から重視される「法規対応型」、③「中長期的なキャリア形成に役立つ」という理由から重視される「キャリア形成寄与型」の3つのタイプを見出すことができる。
  2. 採用にあたって資格・検定の所持を重視する企業の割合は、正社員の新卒採用で20.0%、正社員の中途採用で37.3%、非正社員の採用で18.5%である。採用にあたって資格・検定を重視する傾向は、業種間の差が大きい。他業種と比べ群を抜いて割合が高いのは医療・福祉で、正社員の中途採用に限ると、建設業や教育・学習支援業も重視するという回答の割合が高い(図表1)。対照的に飲食・宿泊業では、資格・検定の所持を重視するという回答が8~15%台にとどまっている。

    図表1 採用にあたって「資格・検定の所持」を重視する企業の割合:業種別(単位:%)

    図表1画像

  3. 従業員の大学院、大学、専修学校・各種学校等の民間の教育機関での受講に対し、支援等を行っているかについてたずねたところ、「業務命令で受講させている事例がある」という回答企業が9.3%、「業務命令の受講はないが、会社として支援」という回答企業が13.4%であった。医療・福祉で「業務命令の受講はないが、会社として支援」の回答率が36.6%と、他業種より目立って高い。

    従業員が大学院、大学、専修学校・各種学校等で受講することについての評価をたずねてみたところ、4割弱の企業は「評価は特にない」と回答した。何らかの評価として最も多くの企業が挙げたのは、「従業員が幅広い知識を習得することができる」(34.5%)で、以下回答の多い順に「担当業務における専門性を高める事ができる」(34.2%)、「従業員のやる気を高めることができる」(22.5%)、「従業員の資格取得につながる」(20.8%)と続く。「受講が、仕事上の成果につながっていない」、「受講した従業員は、離職しやすい」といった否定的な評価を挙げた企業はいずれも5%未満と、ごくわずかであった。

政策的インプリケーション

  1. 調査結果からは、医療・福祉における採用や建設業、教育・学習支援業、運輸業などにおける中途採用の機会が、資格・検定の所持がとりわけ有利にはたらく機会と考えることができる。したがって資格・検定取得に対する政策的支援の対象としては、こうした場面で用いられる資格・検定を念頭に置くのが有意義であると思われる。
  2. 大学院、大学、専修学校・各種学校等で従業員が受講することに対し現在、支援を行っていない企業が多数を占めてはいるが、こうした企業においても「受講が、仕事上の成果につながっていない」、「受講した従業員は、離職しやすい」といった、受講に対する否定的な意見の割合は非常に小さい。従業員に幅広い知識や高い専門性が求められるような場面になれば、受講支援の必要性が認識されるようになり、受講支援を支える政策的取組みに対する企業のニーズも増していくものと思われる。

政策への貢献

平成26年3月の雇用保険法の改正により拡充された、「専門実践教育訓練給付制度」(平成26年10月1日より施行)の対象資格・講座に関する検討において、基礎資料として活用された。

本文

全文がスムーズに表示しない場合は下記からご参照をお願いします。

研究の区分

緊急調査

研究期間

平成25年10月~平成27年3月

執筆担当者

藤本 真
労働政策研究・研修機構 副主任研究員

データ・アーカイブ

本調査のデータが収録されています(アーカイブNo.108)。

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