労働政策研究報告書 No.213
大都市の若者の就業行動と意識の変容
―「第5回 若者のワークスタイル調査」から―

2022年3月10日

概要

研究の目的

この20年間の若者の働き方や意識の変化について把握し、最新の状況を位置づけること。

研究の方法

アンケート調査(住民基本台帳から無作為に抽出された東京都の若者8000人に対して郵送にて調査を依頼。回答は郵送とWEBを併用。)回収率39.5%。

主な事実発見

正社員転換者の減少

この5年間の雇用状況の良さを反映して、離学直後から正社員の者が高卒女性や中退者を除くと増加し、相対的に離学直後に正社員ではない状態の者の割合が減少した。他方で離学直後に正社員でなかった者がその後正社員に転換する割合は男性で特に減少した。

次に、非正規雇用を継続している者の職業意識をみると、やりたい仕事なら正社員でもフリーターでもこだわらないとする者や、うつや障害などで働きづらさを感じたことがあるという割合が高くなっている。また非正規雇用の中でもフリーターについては、経年的にフリーターから正社員になろうとする割合はこの5年間減少している。非正規雇用を継続している者の中には、理由があって継続している者が一定数を占めていることが推測できる。

若者の職業意識の変化

この20年間の若者の職業意識については、フリーター共感が低下し、「堅実化」の状況が継続してきた。しかし第5回調査は傾向が大きく変化した。

男女ともにフリーター共感意識(「今の世の中、定職に就かなくても暮らしていける」「若いうちは自分のやりたいことを優先させたい」)は低下傾向にあったが反転した。一社志向(「一つの企業に長く勤める方がよい」)は大きく低下したが、独立志向は下げ止まったままである。他方で仕事離れ(「できれば仕事はしたくない」)が大きく上昇した。特に仕事離れと「堅実化」傾向の弱まりはこの20年間の観察において大きな変化と捉えることができる。

図表1 若者の職業意識の変化(抜粋)・上段:男性 下段:女性

図表1画像

正社員定着者・転職者の意識の変化

今回調査で今ひとつ特徴的な点として、正社員定着者のやりがいの低下がみられた。

以下は正社員のキャリア別・現職への評価であるが、2021年の正社員定着者の様々な観点からみた職場でのやりがいは、正社員転職者よりもあきらかに低い。2016年調査でもその兆候はみられたものの、よりはっきりした傾向となっている。

図表2 正社員のキャリア別・現職への評価

図表2画像

さらに職業意識の面からみても、正社員定着者は、一社志向こそ高いものの、独立志向もフリーランス志向も弱くなっており、やりがいを感じないながらも定着するという将来展望になっている。

この若年正社員のやりがい低下の背景についての解釈は困難ではあるが、この5年間、若者全体における仕事離れが広がっているものの、早期離職ではない転職者の割合も高まっていた。転職者では、転職過程でのキャリア探索を経て「自分に向いている仕事がわからない」は低下するが、他方で定着者の中で「自分に向いている仕事がわからない」という迷いを感じる者が増加するなど、迷いの中で現在の仕事のやりがいを感じにくくなり、また、今後の勤務先でのキャリアに見通しを持てなくなっているものと解釈した。

政策的インプリケーション

  1. 若い非正規雇用者の変化に対応した支援:正社員になれないので非正規で働いているわけではない若者層は支援機関を訪れるモチベーションは高いとは言えないため、今まで以上に学校を含む公的機関の網目をさらに広げ、連携とリファーを中心に進めることが肝要である。とはいえ景気が悪化すればフリーター層は増加するとともに、内実も変化することはまちがいない。景気悪化局面への備えも必要である。
  2. 若年正社員に対する支援:職業意識の変化(「堅実化」傾向の低下、「一社志向」減少、「仕事離れ」増加、独立志向低下)が若者全体で進行している。正社員転職者の増加により、正社員定着者での迷いが高まりやすくなっているものの、次の新しいキャリア像は不在である。こうした状況下においては、若手の正社員についての支援を拡充することが効果的であろう(セルフ・キャリアドッグ)。特に自己理解など若者ならではの支援内容の充実が鍵になる。さらにはキャリア教育においても、新卒時に正社員になることをある種のゴールとして置いてきた側面があったが、就職時点だけでなくその先まで視野に入れたアプローチも今後は求められるようになるだろう。

政策への貢献

政策立案のための基礎資料に貢献。

本文

研究の区分

プロジェクト研究「多様なニーズに対応した職業能力開発に関する研究」
サブテーマ「若者の職業への円滑な移行とキャリア形成に関する研究」

研究期間

令和2年~3年度

執筆担当者

堀 有喜衣
労働政策研究・研修機構 副統括研究員
小杉 礼子
労働政策研究・研修機構 研究顧問
柳 煌碩
労働政策研究・研修機構 研究助手
小黒 恵
秋田大学 非常勤講師

関連の研究成果

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