資料シリーズNo.237
変化するフリーターの意識と実態
―新型コロナ感染症拡大の影響を視野に入れたインタビュー調査から―

2021年3月30日

概要

研究の目的

「第5回若者のワークスタイル調査」の実施に先立ち、インタビューを通じて、より実態に即したかたちで不安定な状況で働く若者のありようを捉えることを目的とする。

研究の方法

フリーターへのオンラインインタビュー調査

主な事実発見

フリーター20人へのオンラインインタビュー調査により、以下の3点が把握された。

第一に、2020年4月7日発出の緊急事態宣言は本調査の対象者にも強い影響があったが、休業補償がない場合には勤務先と交渉するのではなく、自ら別の職場での追加就業で補うか状況を甘受していた。

図表 緊急事態宣言時から調査時(7月末から8月)の就業状況

図表画像

注:●は休業補償なし、〇は休業補償あり

第二に、日本労働研究機構(2000)の過去の調査と比較した今回の調査対象者においては、1999年調査で散見された浪人生活からアルバイトという経路のフリーターは存在せず、他方で奨学金が将来の見通しに影を落としている事例がいくつか見られるという変化があった。また過去に多数見られた、芸能関係で成功するために東京に出てくる必要性は動画共有サイト等の普及によりかつてよりもかなり薄れており、労働環境の変化に加えて、教育政策の変化や情報インフラの充実がフリーターの働き方や将来展望にも影響を及ぼしていた。

第三に、フリーターの職業能力開発については、過去には希望する職場でアルバイトするという方法がしばしばとられていたが、今回の調査では高等教育機関において学ぶ内容がバレエや漫画など多様化し、また簿記の資格を取るために大卒後にさらに専門学校に行くなど、学校の活用が目立った。ただし自分の希望と実際の労働市場における仕事を結び付けるための相談機会やマッチングのための体制や情報整備はまだ十分ではないため必ずしもその努力が実を結ぶわけではなく、迷走する例もあった。

第四に、フリーターになったきっかけや契機に基づき、夢追求型(芸能関係を目指しながらアルバイト)、モラトリアム型(やりたいことを探したい、正社員になりたくない、何となく、自由でいたいからアルバイト)、やむを得ず型(正社員になりたいが、なれないためアルバイト)、ステップアップ型(社会的に評価が高い専門職を目指しながらアルバイト)をこれまで析出してきたが、フリーター類型の内実も変化しつつあった。「夢追求型」は高学歴者が増加し、「モラトリアム型」は様々な経験や自由な働き方を追求するというよりは、正社員経験者が正社員ではない働き方として選択する傾向が濃くなっていた。また「やむを得ず型」は雇用状況の好転により、正社員になれなかったのではなく、メンタルの課題を抱える若者が中心となっていた。また新たに追加した「ステップアップ型」は、恵まれた資本を元手に自由に人生を選択する若者層から構成されていた。フリーターの支援について多様なニーズがあるという点に変化はないものの、雇用状況の悪化という構造的な制約が改善される中で、それぞれのニーズや置かれた状況の相違がより明確化される方向にあった。

政策的インプリケーション

以上の調査研究に基づき、3点の示唆を得た。

第一に、フリーターの職業能力開発について、専門的・技術的職業の増加により、従来以上に学校や職業訓練機関等の役割は重要になっている。ただし若者の希望を労働社会の中で生かすためにどのような手段があるのかについては当事者には分かりづらいため、職業経験が十分でない若者に対するキャリア形成に関する相談、支援が重要である。

第二に、高学歴化については、高卒者とは異なり、大卒者は方向付けがより明確なので、うまくいかなかった場合の気持ちの切り替えが難しい。このことはキャリアコンサルティングの重要性を示すとともに、学歴上昇に伴う職種の多様化に応じた公共職業訓練のメニューの拡充も考えられる。

第三に、好景気が続いたことから正社員になれずにフリーターになるという層は減少した。その結果として、フリーターの置かれた状況や意識、目標などはより複雑化し、支援がより困難度を増しつつあるように推測される。困難に対応した包括的な支援のため、労働関係の支援機関だけではなく福祉関係の支援機関との連携がさらに必要だと考えられる。

政策への貢献

若者政策への基礎資料とする。

本文

研究の区分

プロジェクト研究「多様なニーズに対応した職業能力開発に関する研究」
サブテーマ「若者の職業への円滑な移行とキャリア形成に関する研究」

研究期間

令和2年度

執筆担当者

堀 有喜衣
労働政策研究・研修機構 副統括研究員

関連の研究成果

入手方法等

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