スウェーデンの雇用仲介庁におけるAIの導入状況

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はじめに

公共職業安定機関である雇用仲介庁(Arbetsförmedlingen)は、求人・求職マッチングや違法求人の検出、誤支給・不正受給の検知などにAI(人工知能)を活用している(注1)。本稿では、第1節で組織概要、第2節でAIの活用状況、第3節でその効果と課題、最後にまとめを示す。

第1節 公共職業安定機関の概要

雇用仲介庁の経緯は、1902年に設立された最初の雇用事務所に遡る。その後、1948年には、全国的な雇用サービスを提供する機関へと発展し、2008年には「労働市場庁」と各広域自治体の「雇用委員会」が統合され、現在の名称である雇用仲介庁が成立した(注2)

雇用や失業対策などに関する労働政策は、中央府省である雇用省(Arbetsmarknadsdepartementet)が法律や予算を策定する。一方、細則の制定や実際の行政事務については、独立行政機関に相当する中央行政庁(myndighet)である雇用仲介庁に、実施と細則策定が幅広く委任されている(注3)

主な業務は、求人情報の収集・提供、求職者と企業の効率的なマッチング、助成金の活用による就職困難者の就労促進、さらにエンプロイアビリティ(就業可能性)向上のための訓練情報の提供などである。

図表1:雇用仲介庁の職員数(年平均、人、2022年~2024年)
  2022年 2023年 2024年
正規職員 10,603 11,063 10,278
有期契約職員 349 76 47
合計 10,952 11,140 10,325

出所:Arbetsförmedlingen(2025a), p.98.

図表1に示すように、職員数は10,325人(2024年)で、うち約1,000人がIT部門に所属している(注4)。2018年時点では、全国に242の地方事務所が設置され、13,700人の職員が配置されていた。しかし、2019年から2020年にかけて実施された組織改革により、地方事務所は112にまで半減し(130か所以上が閉鎖)、職員数も約3,000人減少した(注5)。この改革に伴い、一部を除き、求職者支援業務の多くは、民間へ委託された(注6)

図表2:雇用仲介庁の予算と支出(2024年)(単位:千SEK)
  予算(千SEK) 支出(千SEK)
管理費 7,414,656 7,453,464
(10.3%)
失業給付・活動支援 42,525,610 42,333,657
(58.7%)
労働市場政策プログラム 7,157,802 6,173,062
(8.6%)
賃金補助・サムハル 12,971,827 11,816,484
(16.4%)
新規雇用支援、起業支援、職業導入支援 5,342,163 3,592,398
(5.0%)
特定の移民に対する定住支援 873,970 787,206
(1.1%)
合計 76,286,028 72,156,271
(100%)

出所:Arbetsförmedlingen(2025a), p.117.

2024年の予算は約763億SEK(スウェーデン・クローナ)で、支出は約722億SEKであった。支出の内訳は、失業給付・活動支援が58.7%、賃金補助・サムハル(障がい者雇用を担う公企業)(注7)が16.4%、労働市場政策プログラムが8.6%を占めていた(図表2)。

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第2節 公共職業安定機関のAI活用状況

図表3に示すとおり、雇用仲介庁では複数の業務領域において、第1.5世代から第3世代までのAIが活用されている(注8)

図表3:雇用仲介庁のAI活用状況
本稿の説明箇所 名称 領域 目的 利用者 AIの世代
第2節1(1)求職者ニーズの特定 Bedömningsstöd(評価支援) 求職者のプロファイリング 就職のしやすさ(労働市場からの距離)の分類 雇用仲介庁職員・求職者 第1.5世代
第2節1(3)キャリア設計・就労支援 Picture to text(画像からテキストへ) キャリアガイダンス 画像内のテキストとオブジェクトの検出 求職者 第2世代
第2節2(1)求職者と求人のマッチング Breddad Matchning(幅広いマッチング) 求職者のプロファイリングとマッチング より広範な職業提案 求職者・雇用主 第3世代
第2節2(3)求人広告の違法性・差別要素の検出 Identifiering av Diskriminering(差別の識別) 求人情報のプロファイリング、違法性・差別要素の検出 求人情報の分析と差別的要素の有無の確認 雇用仲介庁職員・雇用主 第2世代
第2節3(1)誤支給・不正受給の検知 Felaktiga Utbetalningar(誤支給・不正受給) 誤支給・不正受給の検知 誤支給・不正受給を含む給付管理 雇用仲介庁職員 第2世代

出所:EU(2025), Willem Pieterson(2025)を基に作成。

各世代のAIの分類と使用技術については、図表4に示すとおりである。

図表4:AI世代の分類と利用されている技術
画像:図表4
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注:第5世代は、登場予測はされているが、まだ実現していない技術。

出所:EU(2025), Willem Pieterson(2025)を基に作成。

第1.5世代は、第1世代を高度化し、職員の解釈・意思決定を前提に、第2世代ほど高度ではないものの、柔軟な照合を可能にする技術群を指す。

また、「AI」と「生成AI」の違いについては諸説あるが、一般的に「AI」は、大量のデータを基にパターン認識、将来予測、検出などを行う技術を指し、「生成AI」はこれに加え、学習したデータを基に画像や文章などを生成する技術を指す。そのため、従来型のAIは「伝統的分析(TA)」や「先進的分析(AA)」に相当する第1・第2世代に位置づけられ、生成AIは、特化型AI(ANI)に相当する第3世代以降に属すると考えられる(注9)

なお、雇用仲介庁が実際にどのようにAIを業務に活用しているかについては、次項以降で詳述する。

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1.求職者のニーズに基づく、的を絞った支援

(1)求職者ニーズの特定

雇用仲介庁は、求職者が失業給付を申請する際、オンラインで年齢・居住地・求職期間、保有資格(教育分野・レベル)、スキル、職歴などを登録し、識別番号を付与する。同庁はAIを活用して、登録情報に基づき、求職者のプロファイリングと支援ニーズの特定(Bedömningsstöd)を行う(注10)。さらに、求職者の就職のしやすさ(労働市場からの距離)に応じて3類型に分類し、類型に合致した支援を提供する(図表5)(注11)

図表5:求職者の3分類とニーズに基づく支援内容
  分類 支援内容
タイプ1 3カ月以内に就職や学業開始が可能な求職者 デジタル化された完全自立支援システムにより完結。
タイプ2 3カ月以内に就職する見込みが限定的、もしくは具体的な個別の就労計画が必要な求職者 求職者自身が民間プロバイダーを選択。
タイプ3 特に脆弱な状況、または労働市場から著しく離れている求職者 雇用仲介庁が支援。

出所:Brigitte Bourguignon et al.(2023).

最終的な支援内容の決定は、雇用仲介庁の相談員が実施する最初の電話インタビューに基づいて下される。

電話インタビューの前に求職者が雇用仲介庁を訪問することは原則認められていない。また、3カ月以内に就職や学業を開始することが明らかな場合には、最初の電話インタビューは省略され、サイト内の自動システムによって手続きが完結する。

電話インタビューに進む場合、求職者は円滑かつ効率的に対応できるよう、事前に履歴書や希望条件を整理しておくことが求められる(注12)

インタビュー終了後に、求職者に対する具体的な支援計画が策定され、支援を開始する。計画には「実施すべき活動」「就職目標」「希望職種」などが明記され、求職者の月次報告に基づいて随時更新される。

さらに、雇用仲介庁は求職者向け動画(注13)の中で、履歴書の作成・分析や面接準備に生成AI (ChatGPT、Gemini、Claudeなど)の活用を推奨している。動画では、履歴書をアップロードして内容を更新する方法や、生成AIを用いた面接準備の進め方などを解説している(図表6)。

図表6:雇用仲介庁動画:就職活動にAIを活用する方法
画像:図表6

出所:Arbetsförmedlingen.

(2)チャットボットによる情報提供

雇用仲介庁のサイトでは、チャットボットを通じた利用者への情報提供が行われている(図表7)。

図表7:雇用仲介庁のチャットボット
画像:図表7

出所:Arbetsförmedlingen.

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(3)キャリア設計・就労支援

雇用仲介庁では、「読み書きに困難を抱える障がい者」や「スウェーデン語が不自由な移民」を含むすべての求職者に対し、適切なキャリアガイダンスを提供するためにAIを活用している(Picture to Text)。例えば、スウェーデン語が不自由な移民の求職者に対しては、母国語で記載された資格証明などの画像資料からテキストを抽出し、それを翻訳・分析する支援などが行われている。

2.労働市場マッチングサービス

(1)求職者と求人のマッチング

雇用仲介庁は、労働市場におけるマッチングプロセスの効率化を目的として、2023年からAIを活用したサービス「Breddad Matchning」を開発している(図表8)。

Breddad Matchningは、2023年に特定地域を対象とするパイロットプロジェクトとして開始され、2024年には求職者向けの通常サービスとして全国に展開された。導入には、中央政府が雇用仲介庁に対し、求職者のプロファイリングに基づき、異なる産業や職務を提案するなど、職業紹介の幅を広げる方策を検討するよう指示したことが背景にある。この指示を受けて雇用仲介庁は、急速に変化する労働市場に対応するため、AIを活用して各職業に必要なスキルやタスクを抽出・分解・分類し、より多様な職業紹介を実現できる仕組みの構築を進めた。当初は、収集されたデータがAIによる職業提案にどのように反映されるかを分析・理解することに重点が置かれていたが、その後、分析手法は職種間の類似性を判定するアルゴリズムへと発展した。これにより求職者は、保有スキルに加えて、趣味やライフスタイルなどの詳細情報を入力することで、AIの支援により従来想定しなかった職種や分野にも就職可能性が拡大した。さらに、AIは新たなキャリアの方向性を提示するだけでなく、全国の求人情報の中から個々の希望に最も合致する具体的な求人を提案する機能も備えている。そのため、求職者は希望に応じて、異業種を含む幅広い職業提案を受けることが可能となっている(注14)

今後は、雇用主に対する人材提案機能(注15)、訓練プログラムの提案、障がいのある求職者への専門的・個別的な支援など、さらなる機能強化と適用範囲の拡大が予定されている(注16)

【パイロットプロジェクトの利用者満足度】
2023年パイロットでは肯定評価78%、提案検討68%の一方で離脱率の高さが課題となった。これを受け、クリック履歴に依拠する協調フィルタリングから、求人広告から抽出したスキル(ハード/ソフト)、職務、教育要件を用いるスキル分解型マッチングへと転換した。2024年に全国展開し、今後は雇用主向け人材提案や訓練提案、障害のある求職者への個別支援機能を拡充する。

【結論】
AIマッチングは、従来の職業分類体系を補完し、労働市場の変化をリアルタイムで把握できる手段として有用である。動的かつ最新の労働市場理解を可能にし、職業紹介の精度と幅を向上させる。

【手法・課題・判明したこと】

  • 協調フィルタリングからの転換:
    当初は求職者のクリック履歴に基づいて、他の興味関心を推測する協調フィルタリング(Collaborative Filtering)手法が採用されていた。しかし、検索パターン外の職業を求職者自身が見つけ出すとは限らないという限界が明らかになったため、後に職業スキルの構成要素を分解し、求職者のスキルとマッチングさせる方法に転換された(つまり、AIが求職者のスキル構成を直接分析して提案する方式へ転換した)。
  • 求人情報からのスキル抽出と分類:
    AIが全求人広告から職業スキルに関するキーワードを抽出。異なる表現がされている同一スキルも含め、以下の4つの主要カテゴリー(1.ハードスキル、2.ソフトスキル、3.職務内容、4.教育要件)にクラスタリングして求職者に提示。
  • 求人情報の非均質性:
    一部の職業(例:看護師やウェブデザイナー)は、他と比べて職務説明が簡潔な場合が多く、求人広告に記載される情報量にばらつきがある。
  • 選択に影響する要因:
    求職者の年齢や新しい職業を模索する意欲など、選択行動に影響を及ぼす要因は多岐にわたる。
  • 個別対応のリスク:
    求職者の個人設定に基づいてサービスを調整すべきか否かについては議論があり、個人データの取り扱いにはプライバシー保護の観点から慎重さが求められる。
  • 学歴とのマッチング課題:
    多くの求職者(80%)は、自身の教育レベルを下回る職業には関心を示さなかった。これは職業提案の多様性に一定の制約を与えている。

出所:EU(2025)を基に作成。

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(2)求人広告のデザイン支援

前述のAIマッチングの取り組みには、雇用仲介庁内のユーザーインターフェース(UI)デザイナーやプログラム開発者など、複数の専門人材が参画している(注17)

なお、求人広告のデザインそのものではなく、表現方法に関しても、AIが活用されている。雇用仲介庁のAI開発担当者によれば、求人広告において雇用主が用いる言葉遣いや表現によって、特定の層の応募者を惹きつけやすくなる傾向が確認されているという。

例えば、IT職の募集において男性の応募傾向を強める表現が使われている場合、AIはその傾向を是正するために、より中立的で多様な応募者を引きつける別の表現方法を提案する。これにより、より幅広い層に開かれた効果的な求人広告の作成が可能となる(注18)

(3)求人広告の違法性・差別要素の検出

雇用仲介庁は、求人広告に違法性・差別的な要素が含まれていないかを検出するため、深層学習(Deep learning)や自然言語処理(NLP)を活用したAIサービス(Identifiering av Diskriminering)を2023年から導入している。同システムは、公開された求人広告を審査するケースマネージャーの業務を補完・支援する役割を担っている(注19)

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3. 行政活動と知識創造

(1)誤支給・不正受給の検知

雇用仲介庁は2024年初頭、AIを活用した大規模な誤支給・不正受給検知システム「Felaktiga Utbetalningar」を開発・構築した。このシステムは、求職者・労働者・雇用主・サプライヤーなど、労働市場や契約に関するあらゆるデータを対象に、機械学習、深層学習、グラフ解析など複数の技術を組み合わせて分析を行う。これにより、給付金の誤支給や不正受給の兆候を早期に検出・分析し、ケースマネージャーや担当職員による判断・対応を支援している(注20)

(2)労働市場情報の作成・監視

信頼性の高い最新の労働市場情報は、職業訓練や職業紹介、雇用助成金の支給など、労働市場への積極的な介入を行う積極的労働市場政策(ALMP)において不可欠である。このため雇用仲介庁では、過去2年間の求人情報を、自然言語処理(NLP)を用いたAI技術で解析し、各職業に求められるスキル、教育要件、業務内容などを把握している。これにより、労働需要の変化を含む市場の動向を常時監視・分析するAIソリューションを構築し、より深い理解の獲得を目指している。こうして得られたデータは、キャリアガイダンスや職業マッチングツールにも活用されており、求職者・雇用主双方のニーズを的確に把握・支援する基盤となっている(注21)

(3)求職者の制裁管理

雇用仲介庁は、失業給付の適正な運用を担う機関でもあり、求職者が就職活動などの義務を履行しない場合には、制裁を科すことがある。AIの導入により案件処理の効率が大幅に向上し、従来に比べて違反行為を迅速に把握できるようになった。その結果、案件処理の迅速化により可視化が進み、結果として制裁実施件数が増加傾向にあるとの指摘がある(注22)

(4)雇用仲介庁組織内の自動化

雇用仲介庁は、AIと密接に関連する自動化技術―RPAやプロセスマイニング(注23)―を活用し、組織内の複数部門にまたがる共通業務の集約を進めている。これにより、人事や財務に関わる業務プロセスの最適化も図られている。

具体的には、請求書処理、購買、給与計算、福利厚生管理などの業務が自動化され、大量の処理を短時間で完了できるようになった。その結果、職員は反復的で付加価値の低いタスクから解放され、数百万SEK規模のコスト削減が実現したとされる(注24)

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第3節 AI導入の経緯、効果、課題、改善の方向性

1.AI導入の経緯

AI導入の契機の一つとして、2018年7月に施行された行政手続法第28条(意思決定の方法)の改正が挙げられる(注25)。この法改正により、政府機関(地方自治体を除く)において、AIを用いた意思決定を可能とする法的枠組みが整備され、行政分野におけるAI導入が進展した(注26)

その後、2019年2月には政府出資によるAI推進機関「AI Innovation of Sweden」が設立され、スウェーデン社会全体でのAI活用が一層促進された。さらに、2019年から2020年にかけて実施された雇用仲介庁の大規模な組織改革を契機に、業務効率化の要請のもとでAI導入が急速に拡大した(注27)

2.AI導入の効果

2024年に行政管理庁(Statskontoret)が実施した「行政機関におけるAI活用状況」に関する調査では、雇用仲介庁のAIジョブマッチングについて高く評価している。同庁は、「従来のマッチングは職業や分野が限定的で柔軟性に欠ける傾向があったが、AIを活用して求職者の趣味やライフスタイルなどの追加情報を取得・分析することで、本人が想定していなかった分野における新たな就業機会を見出す可能性が高まった」と指摘している。さらに、「このAIサービスが期待どおりの効果を発揮すれば、労働市場におけるマッチングプロセスは従来以上に効率的に機能する可能性がある」としている。

また、違法求人や給付金の誤支給・不正受給の検知にAIを活用している点についても、「手作業と比較して、大量の案件からリスクの高い事案を迅速に特定できる。早期発見によって様々な問題を未然に防ぐことで、国のリソースを大幅に節約できる」と評価している(注28)

3.AI導入後の課題

前述の行政管理庁調査によれば、AI導入後の課題として、政府全体で導入の動きが鈍く、活用が一般化していない点や、各行政機関によって活用度に差がある点が指摘されている。主な要因としては「活用条件の変動による将来の不透明さ」や「専門知識・ノウハウ不足による不確実性の増大」が挙げられている。一方で、AI導入の遅れは、各機関がリスクを十分に認識し、政府原則に反する可能性のある施策を安易に進めないという慎重な姿勢の表れとも言え、「遅さ」自体が賢明な判断である可能性も示唆されている。

さらに、各機関が個別にAI導入を進める一方で、全体を俯瞰し課題を共有・調整する統括組織となる意思決定機関が存在しない点も課題として挙げられている(注29)。この課題への対応として、2024年11月に「AI委員会(AI-kommissionen)」が発足した(注30)

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4.改善の方向性

前述のAI委員会は、2025年2月4日に行政全体のAI計画(ロードマップ)を公表し、関係省庁からの意見を求めた(注31)。これに対し、雇用仲介庁は「多くの提案が行政機関における具体的な改善につながる可能性を有している」として、概ね肯定的な評価を示した。

図表9:AI委員会の提案(ロードマップ)に対する雇用仲介庁の同意と反対
同意 反対
  • 行政機関同士のデータ共有拡大可能性を模索
  • 全求職者へのAI知識向上コースの義務付けについて
    雇用仲介庁の任務は、失業および求職期間の短縮であり、一般的な知識の向上を目的とはしていない。仮に本提案が義務化される場合、相応のリソースと予算措置が不可欠である。
  • 個人データ処理に関する関連法の更新
  • GDPR(EU一般データ保護規則)の施行と適用に関する調査の実施
  • デジタル化への対応とデータの影響評価を行う
  • AIの影響に関する労働市場および教育ニーズの予測
    当庁ではすでに、すべてのスキルニーズに関する予測を行っている。AIの進展は労働市場に影響を与える一要素に過ぎず、AIに特化した予測を別途行う必要性は低いと考える。
  • 行政機関における適切なデータ管理とデータ計画の策定
  • 行政機関のクラウドサービス利用に関する要件を明確化
  • 大規模言語モデル(LLM)の開発に関する全国調整機関の設置
  • 行政担当者向けAIワークショップ、AI活用支援を提供
  • 行政機関におけるAI活用の促進および報告義務について
    行政機関におけるAI活用の促進方針には概ね賛成するが、政府への定期的な活用状況の報告義務については反対である。限られた人員が報告作業に割かれる恐れや、AIの利用が手段でなく目的化する懸念があるためである。
  • プライバシー保護局(IMY)のAIおよびデータ保護規則解釈に関する指針作成、デジタル庁(DIGG)のAI活用指針作成
  • EUのAI関連部局におけるスウェーデン人職員の増強
  • EUのAIプロジェクトとの連携、安全保障上の欧州AI主権の構築

出所:Arbetsförmedlingen(2025).

一方で、図表9に示すとおり、一部の提案については明確な理由を付して反対しており、また、提案の中には内容が広範に及ぶものも多く、実施にあたってはより詳細な調整が不可欠であるとの見解を示している(注32)

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おわりに

以上、雇用仲介庁では、2019年から2020年にかけて実施された組織改革を経て、限られた人員と予算の下で、複数の業務領域でAIを活用して効率化を進めている。もっとも、こうした雇用仲介庁においてAI活用が個別最適化される一方で、政府全体のAI活用を俯瞰し、課題を共有しつつ方向性を示す統括組織の不在が新たな課題として浮上している。この課題への対応として、2024年11月に「AI委員会」が発足した。今後、同委員会が行政全体におけるAI活用の共通基盤や枠組みづくりにどのように寄与していくのか、引き続き注視する必要があるだろう。

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参考文献

※サイト最終閲覧日:2025年10月27日

参考レート

諸外国の公共職業安定機関等におけるAIの導入状況調査―ベルギー、フランス、スウェーデン、韓国

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