諸外国における外国人材受入制度 ―非高度人材の位置づけ
―台湾

本フォーカスの記事一覧をみる

台湾では、1980年代以降国民所得が増加し、教育水準が向上するに伴い、若者を中心に3K職種を忌避する傾向が強まっていった。また、少子高齢化が進行したことから労働力不足が顕著となり、非高度人材の確保が課題となった。当時、非熟練労働力を受け入れる本格的なスキームを持たなかったため、観光ビザで入境し不法就労する者が後を絶たなかった。政府はこうした状況に対処するため、「政府プロジェクト公共工事における労働力需要に応じる対策法」により外国人材3000人の受け入れを決定、非熟練労働者の受け入れを開始した。その後政府は、受入総量数を調整しながら、各分野において二国間協定に基づく形で非熟練労働者を受け入れている。

制度構造としては、「就業サービス法」に「一般外国人専門人材」と「外労」の2種類の規定があり、非熟練労働者は、「外労」(外籍労働者)と呼ばれる区分で受け入れられている。非熟練労働者は、「人口密度が高い地域において、労働者が移民として移住する条件が揃っておらず、同時に域内労働者の就職機会、労働条件に影響を及ぼさず、経済発展を促進することを前提とする、補助的な客工(Guest Workers)」として位置づけられている。就業分野としては、海洋漁業に従事する者(漁船の船員)、家政婦・メイド(家事サービス労働者)、台湾当局の重要建設プロジェクト、または経済発展の必要性に鑑み中央主管機関(行政院労工委員会(注1))が指定した業務に従事する者となっている。

台湾の特徴として、非熟練労働者の雇用に当たり、雇用主が労働部に納付を義務づけられる「就業安定費」がある。この納付金は、非熟練労働者の人数に応じて納付額が定められており、製造業労働者の場合は毎月1人当たり2000台湾ドル、建設労働者の場合は同1900台湾ドル、家事サービス労働者(雇用主が台湾人)の場合は同5000台湾ドルとなっている(注2)。就業安定費は、主として台湾人の雇用の安定(職業訓練の実施、就業情報の提供など)に役立てるために活用されると位置付けられている。

非熟練労働者の規模は、2018年3月時点で約68万人。業種別に見ると、製造業が約41万人(全体の60.4%)と大半を占める。経済危機後、2009年に一時的に人数が減少したが、再び回復して、現在も増加傾向にある。介護業が約25万人(全体の36.8%)と続く。一方、重大投資や、重大プロジェクト、家事サービス業界においては漸減傾向にあり、特に重大投資では、2003年は7万354人であったが、2018年3月にはわずか353人までに減少した。

図表
区分 レベル 業種(職種) スキーム 規模
専門職(外国人材) 一般専門

A類:専門的・技術的業務(通信・輸送、税務・金融、不動産仲介、移民、弁護士・弁理士、技師、医療保健、環境保護、文化・スポーツ及びレクリエーション、学術研究、獣医師等)

B類:華僑もしくは外国人によって投資・設立された事業の経営者

C類:教師(大学・大学院の教師、大学に所属する外国語センターの教師、技術や職業訓練専門学校の教師、外国人学校の教師、高校の教師、中学校または小学校等)

D類:補習クラスの専任外国語教師

E類:スポーツ監督、スポーツ選手

F類:芸術及び演芸

G類:契約技術者

H類:補習機構の技術専門教師

N類:自由芸術者

O類:外国人専門人材の成年子女

雇用許可制
求職許可制
個人業務制
ポイント制(留学生対象)
3万928人(2017年末)
特定専門 科学技術(科技部)、経済(経済部)、教育(教育部)、文化芸術(文化部)、体育(体育部)、金融(金融管理委員会)、法律(法務部)、建築設計(内政部) 「就業ゴールドカード」(有効期間1~3年)雇用許可期間延長(最長5年まで)
非専門職
(外籍労工)
非熟練 海洋漁業、家事サービス業、製造業務、建築業務、屠畜業務、施設介護、家庭介護、非営利団体介護 雇用許可制 67万9,464人(2018年3月末)

受け入れを国籍別に見ると、インドネシアが最も多く4割近くを占め、次いでフィリピン、タイ、ベトナムなどの順になっている。また業種別で見ると、介護業ではインドネシア人が圧倒的に多く8割を占め、製造業ではベトナム人、フィリピン人が多い。

参考レート

2019年1月 フォーカス:諸外国における外国人材受入制度 ―非高度人材の位置づけ ―イギリス、ドイツ、フランス、アメリカ、韓国、台湾、シンガポール

関連情報