諸外国における外国人材受入制度 ―非高度人材の位置づけ
―韓国

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韓国は、従来非熟練労働者の受け入れを原則として禁止していたため、日本の制度とよく似た産業研修制度(後の研修就業制度または就業管理制度)で非熟練分野の労働力不足を補ってきた。しかし、深刻化していた労働力不足と不法滞在者の増加は看過できない状況となり、2004年から実質的な非熟練分野の外国人労働者受入スキームである雇用許可制を導入した。韓国政府は、外国人政策の基本方針(注1)を「外国人の人権保障」、「国家競争力の強化」、「多文化包容と社会統合」の三原則に基づく「外国人と共に生きる開かれた社会の実現」であるとしている。

全体の制度構造としては、就労可能な区分は専門職と非専門職の二区分があり、専門職区分が高度人材、非専門職区分が非高度人材対象となっている。雇用許可制は非熟練分野の外国人労働者の受け入れを可能とするスキームであり、外国人全般を対象とする一般雇用許可制と在外同胞(韓国系外国人)を対象とする特例雇用許可制の2種類に分かれる。在留資格は、一般雇用許可制が非専門就業(E-9)ビザに、特例雇用許可制が訪問就業(H-2)ビザに対応する。対象業種は、E-9ビザが製造業、農畜産業、漁業、サービス業(リサイクル、冷凍倉庫等5業種)、H-2ビザが一般雇用許可制で就業できる業種の他、飲食店、介護、清掃等のサービス業等、合計38業種となっている。特例雇用許可制で入国する在外同胞は韓国語を話せるためより多くの業種での就労が可能である。

さて、彼らはどのくらいの期間滞在が可能なのだろうか。まず、一般雇用許可制については、当初基本的な滞在期間は3年間としていたが、2009年の改正で、事業主の申し出により、1年10カ月の延長が可能となった。さらに2012年の改正(注2)により、滞在期間4年10カ月(基本3年+延長1年10カ月)が終了後、一旦出国し3カ月経過後、同じ事業主が雇用許可申請をする場合においてさらに4年10カ月の滞在を可能(韓国語試験、研修の免除)とした。すなわち、最長で9年8カ月の滞在が可能となっている(注3)

他方、特例雇用許可制の方は、基本的な就労期間は3年で、事業主の申し出により、1年10カ月の延長が可能であるが、再入国に制限はかけていない。H-2ビザは5年間のマルチビザ(出入国自由)である。

また、韓国政府は2011年、一般雇用許可制で就労する外国人労働者を対象とした非専門就業(E-9)の在留資格保持者が、4年以上就業したこと等一定の条件を満たせば、専門人材の特定活動(E-7)の在留資格に切り替えることを可能とする制度改正を実施した。専門職人材は5年滞在すると一般帰化や永住権取得に必要な在留期間を満たすため、雇用許可制により入国した外国人労働者に実質的な定住化の道を開いたわけだ。在外同胞の訪問就業(H-2)についても、4年以上勤務するなどの要件を満たせ、永住(F-5)の在留資格の取得が可能である。

図表
区分 レベル 業種(職種) スキーム 規模
専門職 高度 教授(E-1)、会話指導(E-2)、研究(E-3)、技術指導(E-4)、専門職業(E-5)、芸術興業(E-6)、特定活動(E-7:企業役員、経営管理者、大学学長、金融管理者、情報通信管理者、IT 技術者、デザイナー等) 在留資格 4.8万人
(2016年)
非専門職 非熟練 非専門就業(E-9:製造業、農畜産業、漁業、サービス業(リサイクル、冷凍倉庫等5業種))、訪問就業(H-2:一般雇用許可制で就業できる業種の他、飲食店、介護、清掃等のサービス業等、合計38業種)、船員就業(E-10) 雇用許可制 54.9万人
(2016年)

画像

規模的には、E-9ビザ(一般)の発行件数が27万9000件(2016年)、H-2ビザ(特例)が25万5000件(2016年)。受け入れを国籍別に見ると、中国が最も多く半数近くを占め、次いでベトナム、アメリカ、タイ、フィリピンの順となっている。

なお、雇用許可制下においては、就労期間中の家族の帯同は許されていない。

2019年1月 フォーカス:諸外国における外国人材受入制度 ―非高度人材の位置づけ ―イギリス、ドイツ、フランス、アメリカ、韓国、台湾、シンガポール

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