2019年最低賃金を発表
―全国16%増、北部国境地域は2倍へ
- カテゴリー:労働条件・就業環境
- フォーカス:2018年12月
ロペス・オブラドール大統領率いる新政権発足後、初めての最賃改定が行われる。全国最賃評議会(CONASAMI)は、12月17日、最賃を現行の88.36ペソ(日給)から102.68ペソへ増額、さらに、北部国境地域に新たな特別最賃区域を設置し、同区域については176.72ペソにすることを発表した。新たな最賃は、2019年1月1日より施行される。
初めて最低生活費を満たすレベルに引上げ
以前より、首都・メキシコシティ行政府や使用者連盟COPARMEXなどが、最賃引き上げの必要性を強く訴えてきた(注1)。しかしながら、メキシコ中央銀行が発するインフレ懸念や、連邦政府および政労使からなるCONASAMIの中立的態度によって、これまで大幅な引上げが阻止されてきた。新政権の発足に伴い、14日、CONASAMI会長の座を27年間務め守旧派と目されていたバシリオ・ゴンサレス氏が解任され、その直後にCONASAMIで最賃改定が承認された。
改定は、現行最賃の16.21%増と決定された。これは、既存の議論を踏まえ、個人が最低限度の生活を送るために必要とする収入(貧困収入線)を基準としたものだと考えられる。貧困測定を行う公的機関の社会開発政策評価国家委員会(Coneval)が公表する、最新の貧困収入線(最低生活費)は、都市部において3,001ペソ(約1万6800円)、農村部では1,941ペソ(約1万800円)である。新たな最賃は、月額に換算すると3,080.4ペソ(約1万7200円)で、初めて最賃が都市部最低生活費を満たすこととなる。
表1:貧困収入線(最低生活費)と最低賃金の比較表(月額、メキシコ・ペソ)
※最低生活費は、基礎食料費にその他教育・医療など最低限の支出を加えた額。
出所:CONEVAL資料を元に作成
北部国境に特別最賃区域を設置
メキシコの最賃は、地域別に定められていた最賃設定を段階的に廃止し、2016年より、全国一律の最賃となった経緯がある(ただし別途、職種別の最賃設定がある)。今回の改定により、新たに「国境最低賃金」が定められた。全国最賃より74ペソ高い国境最低賃金(176.72ペソ)は、2019年1月より北部国境沿いの6州43行政区(ムニシピオと呼ばれる最小行政区)で適用される(図1)。
図1:特別最低賃金が適用される州とムニシピオ
出所:CONASAMIの公式ツイッター(2018年12月17日付け)より
グラシエラ・マルケス経済大臣は、「国境地域の最賃上昇により、よりよい機会を求めて米国入国を試みる同国人が国内に残り、メキシコの発展に貢献することが期待される」と述べた。この合意は、オブラドール大統領によれば、「政労使三者の全会一致で得られたもの」であるが、使用者連盟のCOPARMEXは特別賃金区域の設置を批判する声明を出し、早急な最低賃金の全国統一を強く求めた。
注
- 『ビジネス・レーバー・トレンド』(2017年11月号)海外労働事情「メキシコ最低賃金の引き上げへの議論高まる(PDF:830KB)」を参照(本文へ)
参考文献
- El Financiero紙、El País紙、Conevalホームページ
参考レート
- 1メキシコペソ=5.64円(2018年12月28日現在 みずほ銀行ウェブサイト)
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