請負・派遣:フランス
フランスにおける派遣労働(interim)
- カテゴリー:非正規雇用
- フォーカス:2005年1月
派遣労働(interim)
フランスでは、interimという労働契約の形態がある。これは、一時的な職務の遂行のために締結される契約であり、契約期間は、原則として最大18カ月に限られる(それ以上の更新は、原則的に不可能)。労働者の雇用及び賃金支払が、就労先企業によって行われるのではなく、一時就労登録会社によって行われる点が、他の期限付雇用契約と異なる。その意味で、このinterimは、日本でいう派遣労働に近い(注)。以下では、interimを派遣労働と呼ぶこととする。
フランスでは、この派遣労働に関して、対象業種の制限はない。しかし、あくまでも一時的な雇用で、派遣先企業の通常かつ恒常的業務に携わる労働者を、継続的に充足することは禁じられており、常用従業員の代替を防ぐ方策として、派遣事由を限定している。例えば、休職中従業員の代替のため、業務の一時的な増加に対応するため、あるいは季節労働のため――などに限定されている。また、派遣労働者と派遣先の労働者の均等待遇が法律で定められている(雇用形態による差別待遇禁止)。つまり、就労期間中の賃金や社会保障などの労働条件は、派遣先企業内の同様職種・地位の労働者と同等の扱いを受ける。
派遣労働の実態
Unedic(全国商工業雇用連合)が今年12月6日に発表したデータによると、派遣労働者の雇用は、増加傾向にある。2004年10月末現在、フランス国内で、63万4922人が派遣労働者として働いている。2004年9月末と比較して3.2%の増加、2003年同月比では、2.8%、1万7045人の増加であった(季節調整済み)。また、Unedic加入の賃金労働者(主に民間企業の賃金労働者:失業保険制度加入者とほぼ同数)に占める派遣労働者の比率は、3.9%である。
派遣労働者への依存は、工業(主に製造業)および建設業において多く見られる。賃金労働者のうち工業部門に雇用される者は、全産業の22.8%を占めるに過ぎないが、派遣労働者では全体の47.3%が工業に属している。同産業の派遣労働者依存率は、8.2%である。
具体的には、中間財製造業・機械製造業・食品加工業や、建設業で、派遣労働者の占める比率が高くなっている(表1参照)。
また、派遣労働者の増加率をみると、農林水産業における派遣労働者の増加が最も著しく、2004年10月末現在、年率で13.5%の伸びを示している。これに、機械製造業の6.3%増、中間財製造業の6.0%増が続いている。逆に、第3次産業の商業では、派遣労働者は年率で4.9%の減少、同じく金融業で、同3.2%減となっている。
全賃金労働者*に占める 派遣労働者の割合 |
|
農林水産業 | 0.6 |
工業 | 47.3 |
食品加工業 | 6.5 |
消費財製造業 | 5.8 |
自動車産業 | 6.1 |
機械製造業 | 8.7 |
中間財製造業 | 19.6 |
エネルギー産業 | 0.6 |
建設業 | 20.7 |
第3次産業 | 31.5 |
合計 | 100 |
参考資料:Unedic
*:ここでは、Unedic加入の賃金労働者 (主に民間企業の賃金労働者:失業保険制度加入者とほぼ同数)
派遣労働者全体の41%が非熟練労働者で、2004年10月末現在、年率で13.6%の増加を示している。それに、中間・上級管理職の年率7.2%増が続いている。それに対して、事務職は、年率6.3%の減少、熟練労働者も同5.9%減となっている。
地方圏別での派遣労働者への依存率は、フランス北部のピカデリー(依存率:5.5%)やオート・ノルマンディー(同:5.4%)、オート・ノルマンディーの南に位置するサントル(同:5.1%)、東部のフランシュ・コンテ(同:5.4%)が高い。逆に、南仏(ラングドック・ルーションとプロヴァンス・コートダジュール)では同3.0%、パリ首都圏(イル・ド・フランス)で2.8%と低い。パリ首都圏を除くと、派遣労働者の依存率は、北高南低の傾向が見られる。
注
- ただし、日本の派遣労働のように「請負」と区別された概念ではない。
2005年1月 フォーカス: 請負・派遣
- イギリス: 拡大する人材派遣市場
- アメリカ: 人材ビジネス最前線
- ドイツ: ドイツにおける派遣および「見せかけの自営」労働者
- フランス: フランスにおける派遣労働(interim)