プラットフォーム配達員の権利保障法を施行
 ―就業上の保護や取引の透明化推進など

カテゴリー:労働法・働くルール、労働条件・就業環境、多様な働き方

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  • 国別労働トピック:2026年10月

台湾で7月21日、「配達員権利保障及び配達プラットフォーム管理法」(注1)(中国語:「外送員權益保障及外送平臺管理法」)が施行された。プラットフォームを通したフードデリバリーなどの配達員の報酬や契約、保険、不服申立てに関する規定を定め、就業上の保護を強化するとともに、配達プラットフォーム事業者(以下:「事業者」)の運営や取引に関する規制を設けた。労働部などの関係省庁が所管に応じて制度の運用を担い、取引の公平性と透明性を高め、配達サービス産業の持続的な発展につなげる。関係省庁は、同法に基づき、施行細則のほか、配達員の契約終了時の経済的補償、契約の必須記載事項・禁止事項、保険の保障範囲・最低保険金額、安全衛生教育の基準などを定めた。併せて、事業者と加盟店との標準契約書や、配達員の食品衛生安全教育に関する規則も整備した。

事業者と配達員の権利義務の不均衡

労働部によると、フードデリバリーなどの配達サービスの急速な普及に伴い、プラットフォーム事業者は配達の割り振りのシステムやデジタル技術、膨大なデータを掌握し、市場で強い主導権を持つようになった。一方、配達員は車両の購入費、燃料費、維持・修理費などを自ら負担し、交通事故のリスクにも直面している。得られる情報が限られ、契約交渉力も弱いことから、相対的に弱い立場に立たされた。

特に、報酬を事業者が一方的に決定し、十分な保障や透明性が確保されていないことや、アカウントの利用停止や契約終了が一方的に行われ、配達員の就業機会に影響を及ぼすことなどが問題とされてきた。

消費者にとっても、配送料の計算方法、会員サービスの契約・返金、注文の取消し・返金などに関する情報が十分に分からず、紛争時の権益保護が不十分という問題があった。また、小規模な加盟店は、不合理な契約条項を拒否しにくい立場にあった。

配達員の報酬・契約・救済手続きなどを整備

同法及び関連規定等は、配達員の報酬の最低保障や契約上の保護を定めるとともに、配達の割り振りに関する情報の透明化を図ることとした(表1)。最低保障については、配達時間に応じて換算した台湾における最低賃金(2026年10月現在で時給196新台湾ドル)の1.25倍以上、かつ注文1件につき45新台湾ドル以上の保障金額(注2)で、明細を交付する。また、事業者による契約終了は、配達員に重大な法令・契約違反がある場合に限られる。一方、事業者の虚偽説明や契約・法令違反などを理由に、配達員が所定の要件に基づいて契約を終了する場合には、事業者に経済的補償の支払いを義務付けた。さらに、不服申立て制度を設けることや、稼働(事業者とのオンライン状態の維持)・休憩の自主性の保障を定めた。安全面では、民間保険への加入を事業者に義務付けるとともに、職業(労働)災害保険料の自己負担分を事業者に請求できる仕組みを整備した。

なお、事業者と雇用関係にある配達員については、一部の規定を除き、労働基準法等が適用される。

表1:配達員に保障される権利の主な内容
項目 主な内容
契約内容の適正化 契約の必須記載事項・禁止事項(注3)を定め、重要事項の変更には配達員の同意を求める。
報酬の最低保障 配達時間に応じて換算した最低賃金(時給)の1.25倍以上、かつ注文1件につき45新台湾ドル以上の基本報酬を保障し、報酬は月に2回以上支払い、明細を交付する。
配達の割り振りに関する情報開示 注文の提示時に、報酬見込み額、受取先・配達先などを明示する。
事業者による契約終了の制限 配達員に重大な法令・契約違反がある場合に限り契約終了を認め、理由の通知と不服申立ての機会を保障する。
配達員による契約終了・経済的補償 事業者の虚偽説明や契約・法令違反などで損害を受けるおそれがある場合、配達員はその事情や損害の結果を知った日から30日以内に契約を終了し、経済的補償を受けられる。
不服申立て制度 報酬やプラットフォーム利用停止などの不服申立て窓口を設け、契約終了の紛争には独立処理委員会を設置する。申立てを理由とする不利益な取り扱いは禁止する。
稼働・休憩の自主性 稼働時間(事業者とのオンライン状態の維持)の強制や、注文の拒否・休憩を理由とする不利益な取り扱いを禁止する。
民間保険への加入 団体傷害保険と賠償責任保険への加入を事業者に義務付ける。
職業(労働)災害保険料の負担 配達員が負担した職業災害保険料を、申請に基づき事業者が支払う。複数社で働く場合、申請先は1社に限る。

出所:「配達員権利保障及び配達プラットフォーム管理法」などより作成

プラットフォーム事業者の管理と安全対策

同法は、消費者や加盟店との取引、安全管理について、配達プラットフォーム事業者が守るべきルールも定めている。消費者との契約に関しては、政府の交通主管機関が必須記載事項・禁止事項を策定する。加盟店との取引では、経済主管機関が手数料、代金の精算・支払い、紛争処理、契約終了の条件などを盛り込んだ標準契約書を策定。事業者は契約成立後7日以内に書面または電子契約を加盟店に交付する。

事業者には、個人情報の保護とシステムの安全性・安定性の確保を求める。また、消費者の注文・返金、加盟店との取引、配達員の稼働(オンライン状態)や利用停止などに関する記録を少なくとも2年間保存し、関係機関の閲覧要求に応じることを義務付けた。配達員数、配達業務時間、オンライン状態の時間、報酬などの情報は、中央主管機関に定期的に報告する。

安全面では、自然災害により政府機関が出勤停止を発表した地域での営業を停止し、加盟店と配達員に通知する。配達中に死亡事故や1人以上の入院を伴う労働災害が発生した場合は、8時間以内に地域の労働検査機関へ通報し、その後、事故の調査・分析を行って記録を残す。

新規の配達員に安全衛生、交通安全、食品衛生などの教育を提供する。継続して業務を行う配達員にも毎年所定の研修を受けさせる。交通安全に重大な影響を及ぼす違反をした配達員には、指定された期間内に改善のための安全講習を実施し、受講を終えるまで配達業務を行わせてはならないことも規定している。

違反への罰則

同法は、違反した配達プラットフォーム事業者に対する罰則も定めている(表2)。

表2:配達プラットフォーム事業者の違反に対する罰則・罰金額
主な違反内容 罰則・罰金額
(新台湾ドル)
①稼働・休憩の自主性への侵害
②災害時の営業停止違反
③安全講習未修了者の配達業務への従事
10~50万
死亡・入院を伴う配達中の労働災害の通報・調査義務への違反(第21条) 3~30万
監督・検査や記録の閲覧の拒否・妨害など 3~15万
報酬の最低保障・支払い、経済的補償、不服申立て制度、保険加入などの義務への違反 2~10万
契約書の交付、職業(労働)災害保険料の支払い、記録の保存、交通安全・食品衛生安全教育の義務違反について、改善期限までに是正しない場合 2~10万
職業安全衛生教育訓練義務への違反 職業安全衛生法に基づき処罰

出所:「配達員権利保障及び配達プラットフォーム管理法」第24条より作成

違反により罰金を科された事業者に対しては、主管機関が事業者名、責任者名、処分日、違反条文、罰金額を公表し、期限を定めて改善を命じる。期限までに改善しなければ、繰り返し処罰する。

各部門間の連携・協議で制度の定着図る

同法の実効性確保のため、労働部、経済部、交通部、衛生福利部などが所管に応じて管理措置を担う。これにより、配達員の保護、消費者の権益、加盟店の利益を確保できる制度の構築を目指す。労働部は、公式サイトに配達員の保護に関する専用ページを設置し、法令、関連規則、よくある質問などを公開する。また、プラットフォーム事業者、配達員の労働組合、関係機関との継続的な協議を通じて、運用上の疑問や紛争、実施上の課題への対応を検討する方針である。

注

参考文献

参考レート

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