失業率は横ばいも雇用の質の改善は停滞
 ―ILO報告書

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  • 国別労働トピック:2026年4月

ILO(国際労働機関)が1月14日に発表した報告書「雇用と社会トレンド 2026(Employment and Social Trends 2026)」によると、世界の失業率は4.9%で変わらず推移するも、雇用の質の改善は停滞状況にある。長期的には人口動態の変化などによりディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の不足が進むとみており、質の高い雇用へのアクセスを促進するため、各国は国内政策や経済のテコ入れを行い、経済成長を推し進める必要があると指摘している。

極度の貧困労働者は7.9%、21億人がインフォーマル雇用に従事

報告書によると、直近の10年間、雇用の質の改善が鈍化している。

世界経済が依然として堅調に成長する中、世界の失業率は2026年も4.9%で、概ね安定的に推移すると予測。失業者は1億8,600万人と、わずかに増加を見込んでいる。

地域別にはばらつきがあり、失業率は中期的には北アフリカと中南米およびカリブ海地域で更に低下するが、北米では悪化を予測している。

しかし、雇用の質に目を向けると、状況が好転しているわけではない。

極度の貧困状態(1日に3米ドル未満で生活する状態)にある労働者の割合は、2025年に世界で7.9%となり、2億8,400万人に達した。この割合は2015年からの10年間で3.1ポイント減少したが、その前の10年間(15ポイント減)に比べると減少幅は大きく鈍化している。

世界的にみたインフォーマル雇用の割合も、2015~2025年の10年間で0.3ポイント増加したが、その前の10年間では2.2ポイント減少していた。2026年には、21億人がインフォーマル雇用に従事すると推計されている。

低・中低所得国で力強い雇用成長も、人口ボーナスを充分生かせず

雇用成長率をみると、世界の雇用は2027年に1.0%増加すると予想されている。

ただし、国によって大きなばらつきがある。高所得国では、2010年から2019年の10年間で年平均1.1%上昇したが、人口高齢化の影響により、2027年には0%を予測している。中高所得国も同様に減少傾向にあり、2027年の増加は0.4%にとどまる。一方、低中所得国では1.8%の増加を予測する。低所得国では、人口増加により若年層が大量に労働市場に参入し、過去10年間の年平均で2.3%増、2027年には3.1%増の雇用拡大を見込んでいる。

しかし、世界は依然としてディーセントワークの大幅な不足に対応することができていない。報告書は、「生産性の伸び悩みと、質の高い雇用機会の不足により、こうした国々が持つ潜在的な人口ボーナスの恩恵を、充分には生かせないリスクを抱えている」としている。

図表1:所得国グループ別雇用成長率(2010~2027年) (単位:%)
画像:図表1

出所:ILO(2026)

注:2020~22年は年平均雇用成長率を示し、コロナ禍の非常に大きな変動を平準化している。

貿易の混乱が労働の質に悪影響を及ぼす

各地の戦争や紛争などで世界情勢が不安定となり、貿易の不確実性が進み、混乱が生じている。このことが、労働市場に大きな影響をもたらす可能性がある。

報告書は、貿易が特に低・中所得国のディーセントワークを促進する上で有効であることを指摘し、貿易の混乱によって成長が鈍化すれば、世界の労働の質の指標が低下すると危惧する。

各国が国内政策の推進や経済構造の改革に取り組み、ディーセントワークを推し進めることが必要だとしている。

若年者の労働市場と教育・AI

報告書は、若年者の労働市場と教育の関係についても分析している。

若年の労働市場は停滞している。世界の若年失業率は2025年に12.4%に達し、就業、教育、訓練に従事していない(いわゆるNEETの)若者の割合は20.0%となった。特に低所得国で依然として深刻な状況にある。

高い教育はより良い仕事につながるとされるが、高学歴が必ずしも失業率の低下につながっている訳ではない。

高所得国では、高学歴の若年者の失業率は、その他の学歴の若年に比べ低いが、中高所得国においては、高学歴若年者の失業率の方が高くなっている。この主な原因は、教育のミスマッチによるものと解釈している。また、中高所得国では、高学歴の若年者が希望するような、より年収の高い仕事の数が限られていることも指摘している。

学歴間の失業率の差は、2019年までは縮小していたが、コロナ禍を経た2024年までに再び拡大している。

図表2:高・中高所得国における学歴別若年失業率(2005~2024年) (単位:%)
画像:図表2

出所:ILO(2026)

注:着色した部分は、中高所得国、高所得国それぞれの失業率の学歴間格差を示す(右端の数値(単位:ポイント)は両学歴の失業率の差)

また、人工知能(AI)が若年者の雇用に与える影響について考察している。自動化のリスクを15~24歳の若年層で学歴別みると、大学レベルの教育を受けた人の方が、その他学歴に比べ高い。大学レベルの教育を受けた若年層が、AIにさらされる職業により多く就く傾向があるためで、このリスクは、特に高所得国で最も高くなっている。

報告書は、AIが若者の雇用に及ぼす影響は、依然として不明確な部分も多く、リスクとチャンスの両面から厳重に観察することが必要だとしている。

参考資料

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