「並行社会法」はEU人種平等指令違反の可能性
 ―欧州司法裁判所判断

カテゴリー:外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2026年4月

欧州司法裁判所は2025年12月、デンマークで制定された「並行社会(Parallel Society)法」について、民族的出自によって特定の人々が住居を失うリスクを高めるものであり、EUの人種平等指令に違反するおそれがあると判断した。同法は非西欧諸国からの移民が多数を占める地域の公営家族住宅の割合を、物件の解体や売却によって、2030年1月1日までに最大40%まで削減する開発計画などを定めている。

外国人集住地域の公営家族住宅を削減

デンマークでは2018年に、通称「並行社会法」とよばれる複数の法令(旧「ゲットーパッケージ」)が制定された。この法令に基づき、デンマーク政府は、毎年リストで「並行社会地域(parallelsamfund)」と「変革地域(omdannelsesområde)」を指定している(注1)

「並行社会」の定義は、人口1,000人以上の住民が居住する公営住宅地域であり、かつ「非西欧諸国」(注2)からの移民とその子孫が50%以上を超える地域であること、さらに次の条件のうち2つ以上を満たすことである。

  • ①労働市場や教育機関に属していない人の割合が過去2年の平均で40%を超えていること、
  • ②刑法、武器法、嗜好性薬物法に違反して有罪判決を受けた住民の割合が過去2年の平均で全国平均の3倍を超えていること、
  • ③義務教育までしか受けていない30~59歳の住民の割合が60%を超えていること、
  • ④当該地域の15~64歳の納税者の平均総所得(教育を受けている者を除く)が同エリアの同年齢層の平均総所得の55%未満であること。

「変革地域」は、5年連続で並行社会地域に指定された地域である。

デンマーク政府は、「並行社会法」に基づき「変革地域」の公営家族住宅の割合を、物件の解体や売却によって、2030年1月1日までに最大40%まで削減する開発計画を定めている。並行社会地域は2025年12月時点では5か所であり、前年の8か所からは減少した。

EU人種平等指令に違反する可能性あり

首都コペンハーゲンに位置し、変革地域に指定されていたミョルネルパルケン住宅団地の住民たちは、居住地を決める際に民族的出自を基準とすることは差別的で違法であるとして、2020年5月にデンマーク社会住宅省に対して訴訟を起こした。これらの地域の公営住宅の賃貸契約の一部は、開発計画に基づきすでに終了している。本件を審理したデンマーク東部高等裁判所は、欧州司法裁判所に判断を求めて、付託した。

2025年12月18日、欧州司法裁判所は、変革地域を対象としたこれらの法律がEU人種平等指令に違反する可能性があるとの判決を示した。

欧州司法裁判所は、当該地域に居住する住民が、移民の少ない地域に居住する者よりも、賃貸契約の早期解除によって住居を失うリスクを高める可能性があると述べた。また、法律が中立的な表現で書かれているものの、実際には特定民族の人々が特に不利な立場に置かれることになる可能性を検討する必要があるとしている。

さらに、裁判所は、当該地域住民の大多数に民族的出自に基づく不利な待遇が生じているかについては、デンマークの国内裁判所が審査すべきとした。これを受けてデンマーク社会住宅省は、この訴訟は東部高等裁判所に差し戻しされており、欧州司法裁判所の判決を注意深く検討すると述べている。

参考資料

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