競業避止条項・顧客引き抜き禁止条項への規制と実態調査

カテゴリー:労働法・働くルール

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  • 国別労働トピック:2026年4月

国立福祉研究分析センター(VIVE)は2025年12月15日、報告書「デンマークの労働市場における雇用条項」を発表した。本報告書は、デンマークにおける雇用条項法の適用状況を調査したもので、同法施行後、民間企業による雇用条項の適用率が大幅に低下したことが明らかになった。

以下で主な内容を紹介する。

雇用条項法は2016年に施行

デンマークでは2016年1月1日に、「雇用条項法」が施行された。同法は、競業避止条項、顧客引き抜き禁止条項、および両者を組み合わせた複合条項について、有効要件や期間、補償水準等を定めるものである(注1)。競業避止条項および顧客引き抜き禁止条項の期間は、従業員の退職後、最長12か月、複合条項の期間は6か月とされている。

これらの条項を有効に適用するには、雇用主が必要事項を記載した書面を従業員に提供しなければならない。適用対象となる従業員は、原則として6か月以上勤続している必要がある。

また、雇用主は従業員に補償金を支払う必要がある。競業避止条項または顧客引き抜き禁止条項の期間が6か月以内の場合、補償額は退職時の給与の40%以上であり、従業員が別の適切な仕事に就いた場合には3か月目以降は16%以上である。条項の期間が6か月を超える場合には60%以上であり、別の仕事に就いた場合の3か月目以降は24%以上である。なお、補償額の最初の2か月分は退職時に一時金として支給しなければならない。

主に管理職や専門職に適用

この調査はデンマーク国内における民間企業4,900社の回答によるものである。
調査の結果、民間企業の8.5%が雇用条項を適用していた。競業避止条項を適用していた企業が6.3%、顧客引き抜き禁止条項を適用していた企業は6.3%、両者を組み合わせた複合条項を適用している企業は4.0%である。

これらの条項は主に管理職や専門職、高学歴者に対して適用されていた(図1)。

図1:雇用条項の対象となる従業員グループ
画像:図1

出所:VIVE(2025)

企業規模別にみると、雇用条項の適用率は中小企業よりも大企業で高かった。250人以上の大企業では35.5%が競業避止条項を適用しているのに対して、9人未満の小企業では4.9%である。顧客引き抜き禁止条項の適用率も、大企業では28.7%、小企業では5.7%である。複合条項は、大企業では20.2%、小企業では3.6%である。

また、小企業では従業員の大部分に対して雇用条項を適用しているのに対して、大企業及び中規模企業では一部の従業員に限って適用する傾向がみられた。

雇用条項を適用する企業の割合は業種によって異なる。競業避止条項を適用する企業の割合は、情報通信業(12.6%)、工業等(9.9%)、ビジネスサービス業(9.8%)、貿易・運輸業(6.1%)で高いのに対して、文化・レジャー、その他のサービス業(3%)、農業等(0.3%)で低い。顧客引き抜き禁止条項は、ビジネスサービス業(9.9%)、情報通信業(9.2%)不動産・賃貸業(7.8%)で高く、金融・保険(4.3%)、農業等(0.2%)で低い。複合条項は、ビジネスサービス業(6.2%)、不動産・賃貸業(6.2%)、公的行政機関等(5.0%)、情報通信業(4.7%)で高く、文化・レジャー・その他のサービス業(2.8%)、建設業(2.5%)、農業等(1.2%)で低い。

新規採用にはあまり影響せず

雇用条項が企業の新規採用にとって大きな障壁となる可能性は低い。一般的に雇用条項によって採用活動に制約を感じているかをたずねたところ、制約を受けたと回答した企業はわずか1.6%にとどまった。ただし、雇用条項の適用を受けている者が当該求人に応募しない可能性には留意が必要である。

法律施行後に雇用条項適用率が大幅に低下

本報告書では、雇用条項の適用が広範に行われている14業種について法施行前の2015年との比較を行っている(注2)。その結果、雇用条項を適用する企業の割合は30%から10.7%へと大幅に低下していた(図2)。特に50人未満の中小企業では競業避止条項と顧客引き抜き禁止条項いずれも顕著に減少していた。

図2:14業種における雇用条項を適用している企業の割合
画像:図2

出所:VIVE(2025)

参考資料

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