日本で働く韓国人の現状
 ―韓国労働研究院報告

カテゴリー:多様な働き方

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  • 国別労働トピック:2025年11月

韓国労働研究院(KLI)は2025年10月、報告書「日本の労働市場の変化と韓国人の就業現況」を発表した。この報告書では、日本の労働市場の動向に加えて日本で働く韓国人労働者の規模や特徴を分析している。これによると、日本で就業する韓国人は約7万5,000人で、卸・小売業及び宿泊飲食店業で就業している割合が高い。また、他国出身の労働者と比較して情報通信業に従事する割合が高いという特徴がみられた。以下で主な内容を紹介する。

日本の在留韓国人数は16.1万人、就業者数は7.5万人

2024年10月時点で、日本国内で就業する外国人労働者は約230万人であった。出身国別にみるとベトナムが最も多く57万人を占めている(図表1)。

図表1:出身国別・在留資格別の日本の就業者数(2024年10月末基準)(単位:万人)
  全体 専門・技術分野 特定活動 技能実習 資格外活動 身分に基づく在留資格
全体 技術・人文知識・国際 特定技能 全体 永住者 日本人配偶者 定住者
全体 230.3 71.9 41.1 20.7 8.6 47.1 39.8 62.9 38.3 10.0 12.7
韓国 7.5 3.3 2.8 0.0 0.3 0.0 0.7 3.2 2.4 0.6 0.2
ベトナム 57.1 19.6 9.9 9.1 2.8 22.3 10.2 2.2 1.1 0.6 0.4
中国 40.9 16.4 12.2 1.2 0.5 3.3 6.8 14.0 10.5 1.7 1.1
フィリピン 24.6 3.9 1.1 2.1 0.6 4.4 0.4 15.4 9.0 2.1 3.9
ネパール 18.8 4.8 3.5 0.6 0.3 0.3 12.6 0.7 0.4 0.1 0.1
インドネシア 17.0 5.5 0.8 4.4 0.7 9.4 0.7 0.7 0.4 0.2 0.2
ブラジル・ペルー 16.8 0.1 0.1 0.0 0.0 0.0 0.1 16.5 8.9 1.6 5.8
ミャンマー 11.5 3.6 1.3 2.2 1.9 3.4 2.2 0.4 0.1 0.1 0.2
G7 8.4 4.7 2.7 0.0 0.1 0.0 0.3 3.2 1.7 1.4 0.1

出所:KLI(2025)

特別永住者(注1)を除く在留韓国人は2024年時点で16万1,000人である。報告書では、彼らを在留資格によって大きく3つに分類している。まず、永住者や日本人の配偶者など「身分に基づいた在留資格保有者」は、2024年12月時点で9万7,000人であった。第二に、「技術・専門職で就業が可能な在留資格保有者」は3万5,000人(技術・人文知識・国際分野が2.6万人、経営管理が2,700人、企業内活動が1,500人)で、ホワイトカラー従事者の割合が高い。第三に「留学・就学の在留資格保有者」は1万4,000人である。

2024年10月時点で、日本で就労している韓国人労働者数は7万5,003人である。在留資格別にその内訳をみると、まず、専門・技術分野が3万2,514人(その大部分は、技術・人文知識・国際分野の在留資格で日本企業に勤務する韓国人)で、次に、身分に基づく在留資格が3万2,305人である。また、留学など、在留資格に支障がない範囲での就業を認められた資格外活動の在留資格者は6,978人である。ワーキングホリデーなどの特定活動在留資格者は3,186人、技能実習者は19人であった。

産業別に見ると、韓国人労働者は卸・小売業に従事している割合が高く、全体の20%を占める(図表2)。また、情報通信業にも1万人あまりが従事しており、これは他国出身の労働者と比較すると多い。宿泊・飲食業従事者数も多く、訪日韓国人観光客の対応のために採用されているケースが多いとみられる。

図表2:国別・産業別外国人就業者数
  韓国 中国 ベトナム G7等
2014 2024 2014 2024 2014 2024 2014 2024
全産業計 37,262 75,003 311,831 408,805 61,168 570,708 57,212 84,173
建設業   1,490
(2.0)
  14,325
(3.5)
  69,995
(12.3)
  628
(0.7)
製造業 3,698
(9.9)
6,889
(9.2)
102,038
(32.7)
69,742
(17.1)
27,905
(45.6)
218,308
(38.3)
2,670
(4.7)
4,212
(5.0)
情報通信業 4,897
(13.1)
10,048
(13.4)
16,777
(5.4)
42,616
(10.4)
1,061
(1.7)
6,695
(1.2)
3,143
(5.5)
7,401
(8.8)
卸・小売業 7,599
(20.4)
15,013
(20.0)
51,589
(16.5)
85,529
(20.9)
5,812
(9.5)
64,904
(11.4)
3,803
(6.6)
7,573
(9.0)
宿泊・飲食サービス業 5,858
(15.7)
9,842
(13.1)
54,327
(17.4)
53,270
(13.0)
5,997
(9.8)
59,679
(10.5)
1,413
(2.5)
3,849
(4.6)
教育・学習支援業 4,043
(10.9)
5,374
(7.2)
12,165
(3.9)
21,387
(5.2)
792
(1.3)
2,004
(0.4)
25,753
(45.0)
30,063
(35.7)
医療・福祉   3,138
(4.2)
  11,790
(2.9)
  22,843
(4.0)
  1,398
(1.7)
サービス業 3,397
(9.1)
9,259
(12.3)
23,154
(7.4)
44,663
(10.9)
5,728
(9.4)
70,367
(12.3)
4,512
(7.9)
7,808
(9.3)
その他 7,770
(20.9)
13,950
(18.6)
51,781
(16.6)
65,483
(16.0)
13,883
(22.7)
55,913
(9.8)
15,918
(27.8)
21,241
(25.2)

出所:KLI(2025)

他国出身の労働者をみると、日本で働くベトナム人の半数は建設業と製造業分野に従事している。またG7主要国出身者は、多くが教育支援分野で就労している。一方、中国人の産業分布は韓国人と類似しており、韓国人が日本で就業を希望する場合は中国人と競争関係におかれる可能性が高い。

海外就職支援制度を活用

現在、韓国政府は若年層の海外就職支援事業「K-Move」を実施している。同事業では、ポータルサイト「ワールドジョブプラス」を通じて、求人情報の案内や就職相談、履歴書及び面接ガイド、就職説明会など、海外就職に必要な情報とサービスを提供している。また、K-MOVEセンターを東京、大阪、名古屋に設置し、日本就職を希望する求職者への支援を強化している。

求人を希望する海外企業、海外就職を希望する求職者、そして国別の就職情報をみると、海外就職のために求職情報を登録した人数は、過去10年間は2万人台で推移していたが、2024年には3.5万人に急増した。一方、韓国人の採用を希望する海外企業からの求人数は2.4万件前後で推移している(図表3)。

K-MOVE事業の支援を通じて就職に成功した海外就業者は、2024年は5,720人である。日本に就職した人の割合が最も高く、27%にあたる1,531人が就業している。2013年~2024年の間にこの事業を通じて日本に就業した人は1万3,877人にのぼる。

図表3:年度別海外求人数及び求職登録、海外就業者数 (単位:人)
画像:図表3

出所:KLI(2025)

また、日本外務省は日本での就業を希望する韓国人若年者を対象にワーキングホリデー制度を運営している。韓国とのワーキングホリデー制度は1999年に開始され、2025年時点で最大1万人までのビザ発給が可能である。2024年時点では7,444人がワーキングホリデービザで日本に入国しており、これは、日本が発給するワーキングホリデービザ(2.2万人)の34%にあたり、国別では韓国が最も多い。

KLIは、日本が今後も韓国人の主要な海外就業先であり続けると予測しており、就業者の現地適応の難しさや将来計画などを調査し、海外就職支援政策の改善につなげる必要があると指摘している。

参考資料

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