世界の児童の8%が児童労働に従事
 ―ILO報告

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  • 国別労働トピック:2025年9月

ILOは2025年7月11日、UNICEF(国際連合児童基金)との共同報告書「児童労働:2024年の世界予測、傾向、今後の展望(Child Labour: Global estimates 2024, trends and the road forward)」を発表した。この報告書によれば、児童労働は過去4年間で一定の減少を見せたものの、根絶には至っていない。以下で主な内容を紹介する。

児童労働従事者数は過去4年間で約2%ポイント減少

ILOによれば、児童労働とは、児童が従事するには年齢的に早すぎる労働、または業務の性質や状況により、児童の健康、安全、道徳に害を及ぼすおそれがある労働を指す。

2024年時点では、世界の5~17歳の児童のうち、8%に相当する1億3,800万人が児童労働に従事していた。さらに、その約4割が、健康、安全、道徳に対して有害となり得る危険な労働に従事していた。

児童労働従事者数の推移をみると、2016年から2020年にかけては増加傾向にあった一方で、2020年から2024年にかけては2,000万人以上減少した。新型コロナウイルスによるパンデミック危機があったにもかかわらず、このような減少が見られたことは喜ばしいとILOは評価している。

一方でILOは、この減少ペースが依然として不十分であると指摘する。SDGs(持続可能な開発目標)では、2025年までにあらゆる形態の児童労働を撤廃することが目標とされていたが、それは実現しなかった(注1)。ILOは、2030年までに児童労働を根絶するためには、2020年から2024年の削減ペースの11倍の速度で児童労働者数を削減する必要があると推計しており、迅速かつ大幅な行動を強く求めている。

図表:児童労働従事者数(5~17歳)(2000年~2024年)
画像:図表

出所:ILO(2025)

サハラ以南のアフリカが最多

地域別の分布をみると、児童労働はサハラ以南のアフリカに最も集中しており、全体の3分の2を占めている。

所得水準別にみると、低所得国では23.5%の児童が労働に従事しているのに対して、高所得国では0.7%にとどまっている。

また、紛争状態の国々では21.1%、制度的・社会的に脆弱な状況にある国々では15.7%と高い水準にある一方で、そうした状況にない国では4.7%にとどまっている。

約3分の1の児童労働従事者は通学せず

年齢構成をみると、5~11歳が57%、12歳~14歳が20%、15歳~17歳が22%である。
児童労働従事者の割合は、すべての年齢幅で2020年から2024年にかけて減少した。しかし、5~11歳については、2016年~2020年の間に大幅に増加しており、その分を取り戻すには依然として不十分な水準であるとILOは指摘している。

男女別にみると、男児が8.6%、女児が6.9%と、男児の方が高い。しかし、家庭内での家事労働を週21時間行う場合も児童労働に含めた上で、5歳~14歳までの児童労働従事率を比較すると、男児は11.1%、女児は11.8%となり、女児の方がやや高くなる。

産業別構成をみると、農業が61%、サービス業が27%、工業が13%である。この割合は、生産年齢人口(15~64歳)の産業別構成比―農業28%、サービス業49%、工業23%―とは大きく異なっている。

また、義務教育年齢であるにもかかわらず児童労働に従事している者のうち、3分の1は学校に通っていない。特に15歳~17歳においてこの傾向は顕著であり、就労していない児童の学校に通っていない割合が14%であるのに対して、児童労働従事者の場合は60%に達している。

児童労働根絶にはより広範な開発戦略が必要

ILOは、児童労働を根絶するための基本的な政策要請として次の例を挙げている。

  • 少なくとも義務教育年齢までは、無償で質の高い教育を保障すること
  • 児童労働を禁止する法的保護を強化すること
  • 教育制度を整備し、学校から職業への円滑な移行を支援すること
  • 社会的保護を普遍化すること
  • 安全な水や安定した電力といった、基本的サービスへのアクセスを拡大すること
  • 企業活動及びサプライチェーンによる児童労働を撲滅すること

また、ILOは、SDGsを軸に政府、労使団体、国際機関、企業、非政府組織(NGO)などの関係主体が連携し、児童労働の根絶に向けた共同行動を推進していくべきであると強調している。

参考資料

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