各労使団体の力関係に変化なし
 ―労使の代表性に関する政府発表

カテゴリー:労使関係

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  • 国別労働トピック:2025年4月

政府は4月8日、向こう4年間の全国レベルの労使交渉権を持つ代表的な労働組合と使用者団体を公表した(注1)。2013年から実施されている労使の代表性に関する選挙結果をまとめたものだが、各労使団体の勢力図は、前回の2021年の結果から変化していない。ただ、2013年からの変化を見ると、かつて労働組合の最大勢力であったCGT(労働総同盟)の支持率は低下し、管理職組合CFE-CGCの支持率が上昇する傾向が見られる。

「代表的労組」は5つで変わらず

2008年8月20日の法律改正によって、労働組合の代表性は国家権力による付与から、労働者による職場選挙に基づくものへと転換した(注2)。かつては、「組合員数」「財政」等の5つの基準に基づいて国家が代表性を判断していたが(注3)、2008年法によって新たに7つの基準によって判断されることになった。労組が代表性を保持するためには、選挙によって支持を得る必要があるという項目が盛り込まれ(注4)、その基準として、従業員の代表選挙において8%以上の得票率が必要となる(注5)

今回の選挙での労組支持者数の集計は、2021~2024年の4年間に労働組合組織が記録した結果に基づいている。従業員規模11人以上の企業では、企業内委員会である社会経済委員会(Comité social et économique, CSE)による選挙が2021年1月1日から24年12月31日までに実施された。また、従業員数10人以下の零細企業や在宅就労の労働者を対象として24年11月25日から12月9日まで、農業関連の労働者を対象として25年1月7日から30日までの期間にそれぞれの選挙が実施された。その結果が社会対話高等評議会(Haut Conseil du dialogue social, HCDS(注6)の社会パートナー会議に提出され、今回の結果が発表された。

選挙は総数で519万1,216 人の労働者が投票した。今回の選挙全体の参加率は36.5%だったが、CSE選挙に限って言えば、前回の57.5%から58.8%に上昇した。

各労組の支持率は、改革派労組CFDT(フランス民主労働総同盟)が26.58%の得票率でトップとなり、これに強硬派労組CGT(労働総同盟)が22.21%で続いた(図表1参照)。以下、CGT-FO(労働総同盟・労働者の力)が14.91%、CFE-CGC(管理職総同盟)が9.58%、CFTC(フランス・キリスト教労働者同盟)が9.58%を獲得し、この5つの労組が代表的労組に必要な8%のラインを上回った。公共部門で強いUNSA (独立組合全国連合)は6.45%の得票率で、代表的な労組入りには至らなかった。

図表1:各労働組合支持率(単位:%)
主要労働組合名 2025
支持率 五大労組の比重
CFDT(フランス民主労働総同盟) 26.58 30.83
CGT(労働総同盟) 22.21 25.76
CGT-FO(労働総同盟労働者の力) 14.91 17.29
CFE-CGC(管理職総同盟) 12.95 15.02
CFTC(フランス・キリスト教労働者同盟) 9.58 11.10
UNSA(独立組合全国連合) 6.45 -
Solidaire(連帯労組) 3.75 -
その他 3.57 -
合計 100 100

出所:労働省ウェブサイト(Représentativité syndicale et patronale : les résultats de la mesure d’audience 2025)を参照して作成。

2013年の結果と比較すると、CFE-CGCが、3位のCGT-FOとの差を詰めている(図表2参照)。また、2013年には僅差で首位だったCGTは、2017年にCFDTに抜かれ首位を明け渡し、その後、差が広がっている。

図表2:労組支持率の推移(2013年~2025年)(単位:%)
  2013 2017 2021 2025
CGT(労働総同盟) 26.77 24.85 22.96 22.21
CFDT(フランス民主労働総同盟) 26.00 26.39 26.77 26.58
CGT-FO(労働総同盟労働者の力) 15.94 15.60 15.24 14.91
CFE-CGC(管理職総同盟) 9.43 10.69 11.92 12.95
CFTC(フランス・キリスト教労働者同盟) 9.30 9.48 9.50 9.58

出所:労働省ウェブサイト(Représentativité syndicale et patronale : les résultats de la mesure d’audience 2025)等を参照して作成。

使用者団体の支持勢力も変化なし

使用者団体の代表性に関する集計結果も発表された(注7)。代表性の判断は、各使用者団体の加盟企業数に基づいて決定する。使用者団体に加盟する各産業全体の企業数に占める割合が基準となり、8%以上あれば代表性があると判断される(注8)。その上で各産業全体の従業員数に占める割合についても発表された。

使用者団体の代表としての承認を希望する437の組織が、労働省労働総局に申請書を提出して、審査を受けた。その結果、産業レベルの使用者団体の代表性は、MEDEF(フランス企業運動、Mouvement des entreprises de France)、CPME(中小企業連盟、Confédération des petites et moyennes entreprises)、U2P (地元企業連合会、Union des entreprises de proximité)が、前回の支持率の順位と変わらず、引き続き代表的な組織として認められた。最大の使用者団体であるMEDEFが従業員割合で63.42%となり、70%(69.21%)近くあった前回集計から後退したものの、50%以上は確保し全案件に対する拒否権を維持した(注9)図表3参照)。中小企業が主な加盟企業であるCPMEは32.05%を獲得して2位となり、前回の25.54%から勢力を拡大した。さらに、商店主や手工業者など零細事業者が主に加入する経営者団体U2Pが4.53%を獲得して3位となった。

図表3:使用者団体の加盟企業と従業員数とその割合(人、%)
使用者団体名 企業数 従業員数 加盟企業数割合 従業員割合
MEDEF(フランス企業運動) 148,914 10,858,716 24.24 63.42
CPME(中小企業連盟) 243,709 5,488,115 39.66 32.05
U2P (地元企業連合会) 221,772 775,508 36.10 4.53
合計 614,395 17,122,339 100 100

出所:労働省ウェブサイト(Représentativité syndicale et patronale : les résultats de la mesure d’audience 2025)を参照して作成。

なお、使用者団体の加盟企業数の割合は、労働協約の団体交渉において重要な役割を果たす。労働協約を当該産業内の企業レベルに拡張適用させる際に指標となる。労働協約の拡張適用が成立するためには、当該の産業に属する企業の雇用労働者の半数以上を代表する使用者団体が、協約締結に反対していないことが条件になるからである。

参考文献

参照ウェブサイト

(ウェブサイト最終閲覧日:2025年4月21日)

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