収入増加と負担軽減、消費活性化を目指す
―党・政府方針
3月5日に開幕した全国人民代表大会(全人代、国会に相当)において、李強首相が発表した政府活動報告では、「消費」について32回言及し、前年の21回から大幅に増え、過去13年間で最多だった。政府が消費の低迷に対して、危機感を一層強めていることを反映した形だ。これを受け、中国共産党中央弁公庁と国務院(中央政府)弁公庁は3月16日、「消費促進の特別行動計画」を発表した。「消費喚起に向けた30の任務」を示し、都市部および農村部の住民の収入向上や、政府補助金を活用した負担軽減策、労働者の休暇の権利保護などを通じて、消費を高めるための一連の施策を提唱。関連行政機関に対して、その実行を求めている。その主な内容を以下に紹介する。
都市部と農村部の収入増加策
中国共産党と国務院の両弁公庁発表の「消費促進の特別行動計画」は、都市部と農村部の住民の収入増加を目指し、重点地域や重点産業、都市・農村、中小企業を中心とした雇用支援計画や失業保険の還付制度(雇用を維持した中小企業に失業保険料の一定の割合を還付する制度)を活用し、雇用の安定化を図るとした。専門技能訓練を通じてスキルの向上を支援するとともに、最低賃金の引き上げや労働報酬の支払いの拡大を強化する。
農民の収入向上に向けては、利益の保障や土地付加価値の分配メカニズムを整備し、農家住宅の有効活用や農業ブランドの育成を推進する。地域特性に応じた経済モデルを発展させ、農業の利益還元を強化する。また、未払債務問題では、地方政府の責任を明確にし、中小企業への迅速な返済を促進するため、審査・監督体制を強化する。
補助金などによる負担軽減策
以下の四分野に対して支援策を提供して国民の負担を軽減し、消費促進を図る。
育児分野の保障強化では、育児手当制度の研究を進め、フレキシブルワーカーや農民工が育児保険に加入できるよう促す。2025年には「小児科サービス年行動」を実施し、夜間小児科外来の開設時間を増加し、サービスを強化する。
教育分野への支援では、2025年に学生への支援金基準を引き上げる。国家奨学金の無利子化・元本返済猶予措置を続ける。また、高等教育機関では産業との連携を強化し、人材育成を進める。
医療・年金保障の改善では、2025年に基本年金と医療保険の補助基準を引き上げ、退職者の基本年金も増額する。個人年金制度の導入や、フレキシブルワーカーの加入制限撤廃も進める。
さらに、低所得者層には、段階的かつカテゴリー別の支援を行い、生活支援制度を強化する。障害のある高齢者には介護サービスを提供し、生活困難な状況にある者には救助金や一括生活支援金を支給する。また、失業者には速やかに失業保険金を支給する。
休暇の権利の保護
「過剰な残業文化」の問題に対して、「休息と休暇の権利保障」に関する措置を提案している。有給年次休暇制度の実施監督を強化し、労働者の労働時間を違法に延長することを明確に禁止する。また、柔軟な分散休暇の導入を奨励するとともに、勤務時間の違法延長を禁じる。条件が整った地域では、小中学校の春と秋の休暇の導入を推奨する。
政府の意向と財政支援
国務院新聞弁公室によると、国家発展改革委員会の李春臨副主任は3月17日の記者会見で、「消費促進の特別行動計画」は各部門が協力して実行するべき包括的な指針であり、しっかりと実行を進める必要があると述べた。そして、具体的に以下の対策等を説明している。
財政部によると、中央政府は2025年に667.4億元の雇用支援金を投入する。これにより各地での雇用創出の実施を支援するとともに、関連する財源を統合し、完全雇用の促進と雇用の質の向上を図る。特に、重点分野や人手不足の職業については、技能人材の育成を強化し、構造的な雇用問題の解決を促進する。さらに、高校卒業生などの重点グループの雇用支援を継続し、企業による採用を促進する。
都市部・農村部の住民の基本年金(養老保険)を引き上げ、定年退職者基本年金も適切に増額する。住民医療保険に対する補助基準は1人あたり年間700元となる。さらに、医療救助補助金として296.5億元を投入し、基本医療保険、大病保険、医療救助という3つの制度による総合的な保障を強化する。
2025年、基本公共衛生サービスに対する財政補助基準を1人あたり年間99元に引き上げる。中央政府は基本公共衛生サービスへの補助金として805.5億元を配分し、国民の健康を守る「セーフティネット」を強化する。
一部の学生への資金援助基準を引き上げ、政策の適用範囲を拡大する。国家奨学金の無利子化・元本返済猶予措置を継続し、段階的に無償の幼児教育を導入することで、家庭の教育支出の負担を軽減する。
人力資源・社会保障部は、四つの分野に焦点を当て、雇用拡大に取り組む。産業の発展を支えるため、新たな製造業や先進分野での雇用創出を促進し、長期的な経済成長を目指す。消費市場の新たなトレンドを雇用創出に結びつけ、地域や業界に活力を与える。重大プロジェクトを通じて、地方の雇用環境を改善し、都市と農村の均衡ある発展を推進し、全国的な雇用促進を図る。民生サービスを通じて地方経済を活性化し、全市民に雇用機会を提供する。
民間企業や中小企業は、雇用の重要な担い手として魅力を高める。税制優遇措置や雇用補助金、融資支援を活用し、成長を促進する。また、失業保険料率や労災保険料率の段階的引き下げ、企業向け融資の強化などを進め、起業家への支援を強化する。さらに、職位と人材のマッチングを目的とした雇用イベントの推進も行う。
参考文献
- 中央政府、国家発展改革委員会
参考レート
- 1中国人民元(CNY)=20.62円(2025年4月1日現在 みずほ銀行ウェブサイト
)
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