外国人労働者の管理と運用実態

カテゴリー:外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2025年2月

台湾労働部は1月21日、外国人労働者の管理・運用実態に関する調査の結果を公表した。それによると、2024年6月の外国人労働者の賃金(基本給+各種手当+残業代)は製造・建設業で平均3万3,000台湾ドル、家庭介護で2万4,000台湾ドルとなり、前年同月比でともに2,000台湾ドル増加している。外国人労働者の雇用の困難さについては、「言語の壁」などコミュニケーションの困難さをあげる企業が多い。また、過去6年間に製造・建設業の約半数で外国人労働者の行方不明・失踪を経験している。家庭介護の長時間労働の問題は解消されていない。

経常的賃金の増加

調査は2024年7月から8月にかけて、製造業、建設業、家庭介護の雇用主を対象に実施した(注1)。調査結果の一部は、2024年6月の統計データに基づいている。

2024年6月の製造業および建設業における外国人労働者の一人当たり平均の経常的賃金(基本給+各種手当)と残業代を合わせた月額総賃金は、3万3,000台湾ドルに達し、前年同月比で2,000台湾ドル増加した。そのうち経常的賃金の月給は、2024年1月の最低賃金の引き上げ(月額2万6,400台湾ドル→同2万7,470台湾ドル)が影響し、2万9,000台湾ドルとなり、前年同月比で1,500台湾ドル増加した。

一方、2024年6月の家庭介護における外国人労働者の一人当たり平均の経常的賃金と残業代を合わせた総額は2万4,000台湾ドルとなり、前年同月比で2,000台湾ドル増えている。このうち、経常的賃金は月額2万1,000台湾ドルで、前年同月比で1,000台湾ドル、2020年6月比で4,000台湾ドルそれぞれ増加している。これは主に、2022年8月に実施された、家庭介護・家事に従事する外国人労働者向け最低賃金(注2)の引き上げ(月額1万7,000台湾ドル→同2万台湾ドル)が影響している。残業代は前年同月比1,000台湾ドル増の3,000台湾ドルに達した。残業代の増加は、週休日が前年より1日増加したことが一因となっている。

家庭介護は依然として長時間労働

2024年6月の製造業および建設業における外国人労働者の一人当たり平均休日数は11日で、前年より1.9日増加した。これに伴い、同年同月の残業時間を除く労働時間は前年同月より15.2時間減少し、152.2時間となった。一方、残業時間は前年同月より1.9時間増加して26.9時間となった。総労働時間は179.1時間で、前年より13.3時間減少している。

家庭介護に従事する外国人労働者のうち、毎月休暇を取得している者は57%であった。そのうち、「月1回の休暇」を取得している割合が36.4%で最も多く、「月2~3回の休暇」は13%であった。休暇取得者の平均休暇時間は1回あたり14.1時間であり、雇用主が休暇を与えず、残業代を支払って働かせるケースも見られる。

また、家庭介護に従事する外国人労働者の1日当たりの平均労働時間をみると、2024年の6月は10.3時間だった。2020年6月は10.5時間、21年6月は10時間、22年6月は10.2時間、23年6月は9.9時間であり、過去5年間ほぼ横ばいの状況が続いており、長時間労働の改善が進んでいない実態が浮き彫りとなった。

労働力不足への対応

製造業と建設業においては、68.7%の企業が労働力不足に対応するため、何らかの対策を講じている。最も多く挙げられたのは「台湾人労働者の雇用増加」(47.6%)であり、次いで「残業時間の増加」(24%)、さらに「アウトソーシング」(14.5%)の順となった。建設業だけを見ると、85.4%が何らかの対策を講じており、その内容は「台湾人労働者の雇用増加」(50.5%)が最も多く、次いで「派遣労働者の活用」(28.2%)、「アウトソーシング」(24.7%)の順となった。

台湾では就業サービス法第55条に基づき、外国人労働者を雇用する際、雇用主には就業安定費(外国人雇用税)を支払う義務がある。製造業では通常、外国人労働者1人につき月額2,000台湾ドルまたは2,400台湾ドルが必要である(注3)。2013年3月以降は、就業安定費を追加して支払えば、外国人労働者の雇用率(企業の全労働者に占める外国人労働者の割合)を一定程度、増加させることが可能となった。

今回の調査結果によると、製造業の40.6%が就業安定費を追加で支払い、外国人労働者雇用率の増加を申請していたが、59.4%は追加支払いの申請をしていなかった。その理由としては「既に労働力需要が満たされている」(39%)が最も多く、「受注増加が見込めない」(14.4%)や「コストの考慮」(12.4%)も挙げられている。

家庭介護に関しては、外国人労働者を雇う前に、被介護者の80.3%が「家族による介護」を受けていた。「介護スタッフの雇用」は12%にとどまる。また、外国人介護労働者を雇わない場合の代替策をたずねると、「家族による介護」が53.6%を占め、「老人福祉施設、介護施設、宿泊型長期介護施設」の利用は21.8%、「介護スタッフの雇用」は18.2%にとどまった。家族による介護が依然として主要な選択肢であることがわかる。

家庭介護の外国人労働者が休暇を取る際、代替介護策を講じる雇用主の割合は89.3%に達した。そのうち、最も多かったのは「家族による介護」で73%を占め、「政府のレスパイト(介護者休息)サービスや訪問介護サービスの利用」は13.7%となっている。また、政府が提供する代替介護人材使用の費用補助を申請する意向を示した雇用主は45%にとどまり、家族による介護が代替策の主流となっている。

言語の壁と運用の課題

製造業および建設業において、外国人労働者の管理に困難さを感じる企業は39.7%に達した。その最大の問題は「言語の壁」で、27.6%が挙げている。コミュニケーションの難しさや勤務態度の問題も多く報告されている。

また、家庭介護の雇用主の34.7%が、外国人労働者の雇用に困難さを感じており、その主な理由も「言語の障壁」で23.8%を占めている。さらに、「スマートフォンの使用による業務への集中の欠如」(8.8%)や「行方不明、失踪」(7.5%)、「被介護者との相性」(6.8%)なども課題として挙げられている。これらの問題は、外国人介護労働者と雇用主とのコミュニケーションや業務遂行に大きな影響を与えている。

行方不明・失踪の原因

調査結果によれば、過去6年間(2018年7月~2024年6月)で、製造業および建設業の企業の52.1%で、外国人労働者の行方不明・失踪が発生している。その主な原因としては、「他者からの勧誘・紹介」が34.7%で最も多く、次いで「ギャンブルの借金や犯罪から逃れるため」が9.8%、「より高い待遇を求めて」および「契約期間が間もなく終了するため」がそれぞれ約8%を占めている。

一方、同期間中の家庭介護において、外国人労働者の行方不明・失踪が発生した雇用主の割合は3.5%だった。原因別に見ると、「他者からの勧誘・紹介」が2.1%、「より高い待遇を求めて」が0.7%、「契約期間が間もなく終了するため」が0.4%、「仕事や生活環境に適応できなかったため」が0.3%となっている。

外国人労働者の直接雇用

外国人労働者の雇用ルートに関しては(注4)、製造業および建設業の雇用主の33%が、労働部が提供する、仲介会社を通さずに外国人労働者を雇用するルートを知っている(31.9%は「直接雇用総合サービスセンター(以下:直接雇用センター)」を、11.3%は「外国人労働者雇用サポートアプリ」を知っている)。

しかし、実際に直接雇用センターを通して外国人労働者を雇用した企業はわずか3.3%で、28.6%は直接雇用の利用に至らなかった。その主な理由としては、23.5%が「(雇用後の)フォローや管理サービスがないこと」を挙げている。

一方、直接雇用センターを通じて外国人労働者を直接雇用した企業の理由で多いのは「雇用主と外国人労働者が内外の仲介手数料を支払う必要がない」(42.9%)、「外国人労働者との契約終了後の手続きが免除され、再雇用が簡素化される」(42.3%)、「労働部への外国人労働者の雇用申請を代行してくれる」(39.8%)などである。

家庭介護の場合、直接雇用センターを知っている雇用主は29.4%で、外国人労働者の直接雇用に利用した雇用主は10.5%、利用しなかった雇用主は18.9%であった。利用しなかった主な理由は「(雇用後の)フォローや管理サービスがないこと」(13.4%)である。一方、直接雇用センターを利用した理由としては、製造業、建設業と同様に「雇用主と外国人労働者が内外の仲介手数料を支払う必要がない」(51.1%)、「外国人労働者の契約終了後の手続きが免除され、再雇用が簡素化される」(47.1%)、「労働部への外国人労働者の雇用申請を代行してくれる」(40.1%)が多い。

参考文献

  • 労働部労働力発展署

参考レート

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