高齢化社会を見据えた中高年齢者に対する就職支援策強化

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  • 国別労働トピック:2025年2月

2024年7月31日、「中高年齢者および高年齢者就職促進法」の一部が改正された。この改正は、①中高年齢者(45歳以上64歳以下の者)および高年齢者(65歳以上の者)のための就職計画の策定、②雇用促進支援の拡充と退職後の再就職支援、③省庁間の協力強化・連携による雇用機会の創出――を柱として、中高年齢者および高年齢者の就職保障を一層強化していく内容となっている。改正法は同年12月4日から施行された。労働部は改正法の積極的な推進により、40万人以上の中高年齢者および高年齢者が労働市場に参加すると発表した。

超高齢社会への突入

台湾では高齢化と少子化が進行中である。2018年には65歳以上の高年齢者が人口の14.56%を占め、定義上の「高齢社会」に突入した。国家発展委員会によると、2025年には65歳以上が人口の20%を超え、超高齢社会に移行すると予測されている。生産年齢人口(15-64歳)も2015年の1,736万5,715人をピークに年々減少している。こうした中で台湾の労働力不足は深刻化している。

社会・経済の変化や高齢化の進展に伴い、中高年齢者の退職を遅らせる必要性が高まっている。しかし、就職機会の減少や雇用主の採用意欲の低下、長期失業者の増加、転職の難しさなどが影響し、中高年齢者の就職環境は厳しくなっている。これを受けて、台湾当局は中高年齢者の雇用機会を増やすため、長期失業者の再就職支援を強化した。

2019年12月、中高年齢者および高年齢者の労働参加を促進するために「中高年齢者および高年齢者就職促進法」(以下:「促進法」)が公布され、45歳以上64歳以下の中高年齢者と65歳以上の高年齢者の就職に関する権益の保護が定められた。この法律は、中高年齢者および高年齢者の就職における差別や偏見を解消し、労働市場への参入を促進することを目的としている。また、65歳以上の労働力の活用によって、就業経験の継承や世代間の協力を通じた社会的・経済的発展を目指している。さらに、2023年5月1日には10部門(関連省庁等)(注1)と協議の上、「中高年齢者および高年齢者就職促進計画」が策定され、雇用主が中高年齢者および高年齢者を積極的に雇用し、継続的な就職支援を行う方策が盛り込まれた。

就職支援策の強化

今回の「促進法」の改正は、高齢化社会の進展および労働市場の変化に伴うニーズに応じた中高年齢者および高年齢者の就職支援策の強化を主眼としている。

主な改正点は以下の通りである。

「就職計画の策定」(第7条)

中央主管機関(労働部)は、関連業界を所管する中央および地方機関と協議の上、少なくとも3年ごとに中高年齢者および高年齢者の就職計画を策定する。就職計画には、職務再設計(働き方改革)、働きやすさの向上、安全対策の強化、専門知識向上のための職業訓練の実施、失業中の中高年齢者を雇う雇用主への助成金支給、シルバー人材の活用推進、パートタイム勤務の推進、定年延長と定年後再雇用の推進、などが含まれている。

そして、地方所管機関は、就職計画に基づき、地域の産業特性に応じた雇用促進をに取り組む。こうした対策の実施により、働く意欲のある中高年齢者や高年齢者が自分のニーズや状況に応じた仕事や勤務時間を選べるようになり、労働市場において引き続き自身の能力を発揮し、その豊富な経験を次世代へ伝承できるようになることを意図している。

「雇用促進支援の拡充と退職後の再就職」(第9条)

所管省庁は中高年齢者および高年齢者の就職を支援するために、「職場ガイドブック」を提供し、少なくとも2年ごとに更新することとした。

なお、今回の法改正に伴い、退職後の再就職準備や適応に関する支援(注2)の対象も拡大された。従来の制度は「64歳以上」を対象にしていたが、「労働基準法第53条に基づいて定年退職を申請できる者(注3)」や「63歳以上の労働者」も支援対象となった。これにより、中高年齢者や高年齢者が退職後、スムーズに再就職できる環境が整備され、再就職を通じて引き続き労働市場で活躍することが期待されている。

「省庁間の協力強化」(第36条)

この度の改正では、省庁間の協力体制の強化も重要なポイントとなっている。各省庁等が連携し、中高年齢者や高年齢者に適した産業および雇用機会を創出していくことが強調されている。これにより、労働市場での職業の選択肢が拡大し、中高年齢者や高年齢者自身の潜在能力を最大限に発揮できる環境を整えていくことを目指している。

参考資料

  • 台湾労働部、国家発展委員会、全国法規資料庫

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