2025年1月から最賃引き上げ
 ―4.08%増、新法施行後初

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  • 国別労働トピック:2024年11月

労働部は9月4日に最低賃金審議会を開催し、月額最低賃金を2万8,590台湾ドルに改定することを決定した。現在の月額2万7,470台湾ドルから4.08%の増加となる。時間給の最低賃金も現在の183台湾ドルから190台湾ドルに引き上げる。2025年1月1日から発効予定。台湾では2023年12月27日に「最低賃金法」が新たに公布され、最低賃金の法的効力を高めた。今回の引き上げは、初めて同法に基づくプロセスで行われた。

「引き上げで257万人の労働者に恩恵」

新たな「最低賃金法(最低工資法、以後「新法」)」(注1)は2023年12月に立法院で可決され、2024年から施行された。それまでの最低賃金を定めていた法規命令である「基本賃金審議弁法(以後「弁法」)(注2)」は、2024年3月8日に廃止された。

今回の改定により、最低賃金(月額)は2017年以降9年連続で引き上げられることになる()。労働部長(日本の厚生労働大臣に相当)の何佩珊氏は、引き上げによって約257万1,800名の労働者が恩恵を受けると説明した(注3)。改定内容は今後、労働部から行政院に報告され、承認を受けた後に正式に実施される見込みである。

表:台湾における最低賃金の推移

単位:台湾ドル(括弧内は日本円。1台湾ドル=4.75円で計算)

適用開始日 月額 前回比 時間額 前回比
2017年1月1日 21,009(99,895) +5.00% 133(632) +5.56%
2018年1月1日 22,000(104,607) +4.72% 140(666) +5.26%
2019年1月1日 23,100(109,837) +5.00% 150(713) +7,14%
2020年1月1日 23,800(113,166) +3.03% 158(751) +5.33%
2021年1月1日 24,000(114,117) +0.84% 160(760) +1.27%
2022年1月1日 25,250(120,060) +5.21% 168(799) +5.00%
2023年1月1日 26,400(125,528) +4.55% 176(836) +4.76%
2024年1月1日 27,470(130,616) +4.05% 183(870) +3.98%
2025年1月1日 28,590(135,986) +4.08% 190(904) +3.83%

出所:台湾労働部

最低賃金の決定プロセス

新法は従来の「基本賃金」という用語を「最低賃金」に変更し、国際労働機関(ILO)が推奨する基準に準拠することとし、台湾の法制度を、国際労働基準と整合性を持つようにした。具体的には、最低賃金制度を法的に強化し、審議の透明性や賃金調整(改定)の基準を明確に定め、毎年の定期審議を義務化した。

新法に基づき、最低賃金の見直しは毎年、労働部が第3四半期に開催する最低賃金審議会(最低工資審議會議)を通じて行うことが義務付けられた。審議会は計21名のメンバーで構成され、内訳は労働者代表7名、使用者代表7名、学者・専門家4名に労働部、経済部、国家発展委員会の代表3名が加わる(注4)。審議会で決定した最低賃金は、行政院の承認を得た後、原則として翌年の1月1日から施行される。

また、新法では、消費者物価指数(CPI)の年間上昇率をもとに最低賃金を調整(改定)すべきだとした。さらに、労働生産性指数や労働者の平均給与の年間増加率、国家経済発展状況など10項目を改定の参考指標に挙げている(注5)

法的効力高める

新法は、企業において労働者と使用者が合意した賃金が最低賃金を下回る場合、直轄市または県(市)の主管機関は、使用者または事業主に対し、2万台湾ドル以上100万台湾ドル以下の罰金を科すなど、従来の「弁法」より、法的効力を高めた。罰金が科された場合、主管機関は事業主や事業の名称、責任者名、処分日、罰金額を公表し、改善期限を設定する。期限内に改善がなければ、再度罰金を科す。また、罰金額は違反に関係する労働者数や累積違反回数、未払い金額を考慮して決定する。

最低賃金の定期的な引き上げは、台湾の経済に与える影響が大きく、特に中小企業にとっては賃金コストの増加が懸念されている。何部長は、政府として小規模および零細企業に対して関連の支援措置を検討すると述べている。

参考資料

  • 台湾労働部、台湾全国法規資料庫、日本貿易振興機構、各ウェブサイト

参考レート

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