2023年の男女賃金格差18%
―4年連続で横ばい
連邦統計局が1月18日に発表した資料によると、2023年の男女賃金格差(調整前)は18%であった。男性の平均時給25.30ユーロに対して、女性は同20.84ユーロと、4.46ユーロ低かった。男女賃金格差は、コロナ禍の影響を受けた2020年以降、4年連続で横ばいのまま推移している。
過去17年で5ポイント縮小―直近4年は横ばい
連邦統計局は毎年、男女賃金格差の数値を発表している。格差を可視化することで、労働市場における男女の平等を達成しようとする試みの一環だが、ドイツでは、2006年に23%だった男女賃金格差が、17年かけて2023年までに5ポイント縮小した。ただし、2020年以降は進展が見られず、18%のまま横ばいに推移している(図表1)。
図表1:ドイツの男女賃金格差の推移(2006年、2014~2023年)
出所:連邦統計局(2024)
男女間の賃金格差は30歳前半から拡大
男女の平均時給を年齢別に見ると、図表2の通りとなる。女性は、30歳以降から平均時給が停滞するが、男性は年齢の上昇とともに平均時給も上昇し続け、60歳を過ぎてから初めて低下する。
こうした男女の違いについて連邦統計局は、女性は出産等(女性の第1子出産時の平均年齢は30.4歳)家庭の事情でキャリアを中断し、以降パートタイムで働くことが多く、それに伴いキャリアアップや昇給機会が少ないことを要因として挙げている。このため30歳前後の男女の賃金格差は(調整前)8%と小さいが、57~61歳では27%まで拡大する。
なお、ドイツでは勤続年数が長くなるにつれ、勤続年数別賃金指数が上昇する。勤続年数30年以上の男性の賃金指数を見ると、勤続年数1~5年の約1.64倍に達する。他方、女性の賃金指数は男性よりも全体的に低く抑えられている(勤続年数30年以上で、勤続年数1~5年の約1.61倍)(図表3)。
図表2:ドイツにおける年齢別の男女の平均時給の推移(14歳~65歳まで、2023年)
図表3:ドイツにおける勤続年数別賃金格差 (勤続1~5年=100、産業計、2018年)
出所:Eurostat(2021.8)Structure of Earnings Survey 2018.
資格・職歴を同一にした男女の賃金格差(調整後)は6.48%
連邦統計局によると、2023年の調整前の男女賃金格差は18%であるが、そのうち11.52%は、構造的な説明が可能である。つまり、女性は男性よりも低賃金産業や、職種、職務レベルで働く傾向が強く、これが平均時給の低さと関連があるという説明である。他方、残りの6.48%については、推計モデルによる構造的な説明ができない。同一の仕事、保有資格、職歴であっても男女を比較すると、6.48%の格差が生じており、是正が必要であるとされる。
なお、男女間賃金格差の要因分析について、2021年報告までは4年毎の所得構造調査(vierjährliche Verdienststrukturerhebung)を用いていた(2021年時点で最新は2018年)が、2022年報告から月次の所得構造調査(monatliche Verdiensterhebung)に基づいて算出されるようになった。そのため、2021年と2022年の間には算出方法が異なる。また、第1子出生時の女性の平均年齢に関する情報は2022年の最新の出生統計から算出している。
参考資料
- 連邦統計局
https://www.destatis.de/DE/Presse/Pressemitteilungen/2024/01/PD24_027_621.html
https://www.destatis.de/DE/Presse/Pressemitteilungen/2023/07/PD23_290_12.html
- データブック国際比較2023
参考レート
- 1ユーロ(EUR)=159.28円(2024年2月2日現在 みずほ銀行ウェブサイト
)
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