9地域が最低賃金の引き上げを発表
―2023年7月時点
中国各地域の人的資源・社会保障局は、月額最低賃金の最新の改定額を相次ぎ明らかにした。現時点(2023年7月)で、北京市をはじめ、上海市、河北省、山西省、安徽省、貴州省、チベット自治区、陝西省、甘粛省の9つの省・地域が最低賃金の引き上げを発表している。
最高額は上海市の月額2,690元
2023年1月以降に最低賃金を改定した地域を見ると(図表1)、上海市が全国最高額で2,690元(月額、以下同)となり、北京市(2023年9月1日引き上げ予定)が2,420元で続いている。安徽省は2,060元、チベット自治区は2,100元で、ともに2,000元を超えた。安徽省の引き上げ率が最も高く、2021年12月3日以来、1年3カ月ぶりの改定で、1,650元から2,060元へと24.85%上がっている。次いで、河北省が2019年11月1日以来、3年2カ月ぶりの改定で1,900元から2,200元に、15.79%引き上げた。またチベット自治区(2023年9月1日引き上げ予定)が13.51%増、甘粛省が12.35%増と大幅な引き上げとなった。
2023年9月時点で、17地域の最低賃金が2,000元以上となる。最高額が上海市(2,690元)で、以下は、北京市(2,420元)、深セン市(2,360元)、広東省(2,300元)、江蘇省(2,280元)、浙江省(2,280元)、河北省(2,200元)、天津市(2,180元)、陝西省(2,160元)、山東省(2,100元)、重慶市(2,100元)、四川省(2,100元)、チベット自治区(2,100元)、安徽省(2,060元)、福建省(2,030元)、湖北省(2,010元)、河南省(2,000元)の順となっている。最低賃金が最も低い地域は広西チワン族自治区で1,810元、甘粛省が1,820元と次いで低い。
地域 | 最低賃金額 (改定後、元/月) |
最新の改定日 | 最低賃金額 (前回、元/月) |
前回の改定日 | 引き上げ率 |
北京 | 2,420 | 2023年9月1日 | 2,320 | 2021年8月1日 | 4.31% |
天津 | 2,180 | 2021年7月1日 | 2,050 | 2017年7月1日 | 6.34% |
河北 | 2,200 | 2023年1月1日 | 1,900 | 2019年11月1日 | 15.79% |
山西 | 1,980 | 2023年1月1日 | 1,880 | 2021年10月1日 | 5.32% |
内モンゴル | 1,980 | 2021年12月1日 | 1,760 | 2017年8月1日 | 12.50% |
遼寧 | 1,910 | 2021年11月1日 | 1,810 | 2019年11月1日 | 5.52% |
吉林 | 1,880 | 2021年12月1日 | 1,780 | 2017年10月1日 | 5.62% |
黒龍江 | 1,860 | 2021年4月1日 | 1,680 | 2017年10月1日 | 10.71% |
上海 | 2,690 | 2023年7月1日 | 2,590 | 2021年7月1日 | 3.86% |
江蘇 | 2,280 | 2021年8月1日 | 2,020 | 2018年8月1日 | 12.87% |
浙江 | 2,280 | 2021年8月1日 | 2,010 | 2017年12月1日 | 13.43% |
安徽 | 2,060 | 2023年3月1日 | 1,650 | 2021年12月3日 | 24.85% |
福建 | 2,030 | 2022年4月1日 | 1,800 | 2020年1月1日 | 12.78% |
江西 | 1,850 | 2021年4月1日 | 1,680 | 2018年1月1日 | 10.12% |
山東 | 2,100 | 2021年10月1日 | 1,910 | 2018年6月1日 | 9.95% |
河南 | 2,000 | 2022年1月1日 | 1,900 | 2018年10月1日 | 5.26% |
湖北 | 2,010 | 2021年9月1日 | 1,750 | 2017年11月1日 | 14.86% |
湖南 | 1,930 | 2022年4月1日 | 1,700 | 2019年10月1日 | 13.53% |
広東 | 2,300 | 2021年12月1日 | 2,100 | 2018年7月1日 | 9.52% |
深セン | 2,360 | 2022年1月1日 | 2,200 | 2018年8月1日 | 7.27% |
広西チワン族 | 1,810 | 2020年3月1日 | 1,680 | 2018年2月1日 | 7.74% |
海南 | 1,830 | 2021年12月1日 | 1,670 | 2018年12月1日 | 9.58% |
重慶 | 2,100 | 2022年4月1日 | 1,800 | 2019年1月1日 | 16.67% |
四川 | 2,100 | 2022年4月1日 | 1,780 | 2018年7月1日 | 17.98% |
貴州 | 1,890 | 2023年2月1日 | 1,790 | 2019年12月1日 | 5.59% |
雲南 | 1,900 | 2022年10月1日 | 1,670 | 2018年5月1日 | 13.77% |
チベット | 2,100 | 2023年9月1日 | 1,850 | 2021年7月1日 | 13.51% |
陝西 | 2,160 | 2023年5月1日 | 1,950 | 2021年5月1日 | 10.77% |
甘粛 | 1,820 | 2023年2月1日 | 1,620 | 2017年6月1日 | 12.35% |
青海 | 1,880 | 2020年1月1日 | 1,700 | 2020年1月1日 | 10.59% |
寧夏回族 | 1,950 | 2021年9月1日 | 1,660 | 2017年10月1日 | 17.47% |
新疆ウイグル | 1,900 | 2021年4月1日 | 1,820 | 2018年1月1日 | 4.40% |
注:太字が2023年1月以降に改定した地域。各地の最低賃金は、都市部とそれ以外で最大4つのランクに分かれるが、本表は最も高いランクの金額を表記している。
出所:各地域の人的資源・社会保障局等
上海、北京の引き上げ率は鈍化
全国でトップクラスにある上海市と北京市の最低賃金水準の推移を見ると、引き上げの鈍化がうかがえる。
上海市の最低賃金は2010年の1,100元から2023年の2,690元へと、10年ほどで倍増した。2010年から毎年上昇していたが、2019年以降は2年に一度の引き上げとなっている(図表2)。引き上げ率は2015年まで年間2桁増の伸びを示していた。2016年から鈍化し、2019年には2.5%まで低下。それ以降、2021年に4.4%、2023年に3.9%引き上げられたが、鈍化の傾向は継続している。
図表2:上海市最低賃金の推移(2010~2023年)
出所:上海市人的資源・社会保障局
一方、北京市の最低賃金の推移を見ると(図表3)、2010年の960元から2023年の2,420元へと、上海市と同様に10年ほどで倍増した。2019年までは毎年引き上げ、2019年以降は2年に一度のペースで引き上げている。引き上げ率は2014年までにほぼ2桁前後で引き上げていたが、2015年以降は鈍化し、2019年は過去最低の3.8%となった。
図表3:北京市最低賃金の推移(2010~2023年)
出所:北京市人的資源・社会保障局
参考資料
- 人的資源・社会保障部
- 中国各地域の人的資源・社会保障局ウェブサイト等
参考レート
- 1中国人民元(CNY)=19.90円(2023年8月1日現在 みずほ銀行ウェブサイト)
2023年8月 中国の記事一覧
- 9地域が最低賃金の引き上げを発表 ―2023年7月時点
- 都市部年収の伸びが鈍化 ―2022年、国家統計局調べ
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