農民工の雇用安定に向けた意見を公表
 ―人的資源・社会保障部など

カテゴリー:高齢者雇用労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2023年1月

雇用の厳しい冷え込みが続くなか、農民工(農民戸籍を有する出稼ぎ労働者)に対する雇用の安定が、依然として政府の重要な課題となっている。人的資源・社会保障部などの5部門は、2022年11月9日に「農民工の雇用と起業に対するさらなる支援の実施に関する意見(以下、「意見」)を公布した。農民工の雇用の安定を図るため、「郷外」(戸籍がある地元町村(郷鎮)以外)への出稼ぎ支援、「大齢」(50歳以上の中高年)の農民工対策の重視、地域での雇用や起業の促進、といった政策措置を提起している。

「郷外」への出稼ぎ支援

「意見」によると、農民工の雇用の安定をさらに支援するため、社会保険料納付の猶予、雇用維持企業への失業保険料の一部返還や職業訓練への補助、社会保険に関する助成金の支給といった政策を今後実施する。支援にあたっては、農民工が集中する建築業、製造業、サービス業の企業に重点を置く。また、「雇用シェアリング(共享用工)サービス」を行ない、農民工の権益を保護しつつ、「一時的に操業を停止している企業」と「人手不足の企業」の間で、余剰労働力を再配置する。

農民工が「郷外」(戸籍がある地元町村(郷鎮)以外)に出稼ぎすることを支援する。人の往来が盛んな地域間の協力により、情報共有や職業訓練の連携を促進する。「郷外」で働く農民工や貧困から抜け出した者が多い地域(市・県・農村部)や、雇用が集中する地域に雇用サービスコーナーを設置する。

失業中の農民工が、常住地や勤務地、保険加入地で失業登録をできるようにする。キャリアガイダンスや職業紹介などの基本的な公共雇用サービスに加えて、アルバイトなどの臨時採用情報の「即時募集」サービス、アクリル板やガラスを間に挟んだ「非接触面接」、インターネットを介したサービスを組み合わせ、人材サービス機関の役割を十分に発揮し、農民工の雇用・起業に対する要求を満たす。

「大齢」農民工の雇用安定を重視

現在、農民工の平均年齢は徐々に上がっている。国家統計局が2022年4月に発表した「2021年農民工観測調査報告」によると、農民工の平均年齢は41.7歳に達し、前年より0.3歳上昇した。年齢別構成比をみると、40歳以下の割合は48.2%、41歳以上の割合は51.8%だった。同報告で近年の推移をたどると、「16~20歳」の割合は2008年の10.7%から2021年に1.6%まで下がったのに対し、「50歳以上」は2008年の11.4%から2021年の27.3%(前年比0.9ポイント増)まで上昇している(図1)。

図1:農民工の年齢別構成比(単位:%)
画像:図1

出所:国家統計局「農民工観測調査報告」

前述のように農民工の多くは建築業、製造業などに従事している。「大齢」(50歳以上の中高年者を指す)の農民工は、体力の衰え、新しいスキル習得の困難さといった問題に直面する。こうした「大齢」農民工を重視した対策が求められている。

「意見」は「大齢」農民工の雇用機会を拡大し、その保護を強化するため、彼らに適した職種やアルバイト情報を継続的に公開することなどを提示している。また、企業に対しては「大齢」農民工の身体の状況に応じて合理的に仕事を分配し、年齢を理由に解雇しないよう求めている。

近年、農民工には故郷に近い場所で就職したり、都市部で就職できず、故郷に帰って起業する傾向が見られる。このため地方政府に対して、地方独自の産業の発展を加速させ、雇用の吸収力を高め、雇用ルートを広げことや、起業サービスの専門家グループを形成し、こうした「返郷農民工」らの就職や起業をサポートすることなどを提唱している。

参考文献

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