北京市が「外資系営利職業技能訓練機構」の設立を許可
北京市は2022年8月5日、「外資系営利職業技能訓練機構の設立に関する管理弁法」(以下:「弁法」)を発表した。営利性のある外資系職業訓練機構の設立を認め、その条件や手続き、組織と活動の条件などを規定している。
中外合作から外資単独へ
中国の職業教育は「学制職業教育」と「非学制職業教育」に分けられる。(図1)(注1)
図1:中国の職業教育
出所:筆者作成
学制職業教育は外資を制限している。例えば「中外合作」(外資と内資が共同で設立し、契約に基づき利益の配当などを決める経営形態)の教育機関の外資出資比率は50%未満としている(「民間資本の教育分野への参入を奨励・指導し、民間教育の健全な発展を促進することに関する教育部の実施意見(以下:「意見」)第2条第7項)。だが、中国政府は2020年1月1日に「外商投資法」を施行。これに基づき同年7月に「外商投資参入特別管理措置(ネガティブリスト)(2020年版)」を公布し、上海、北京などの自由貿易試験区(FTZ)における、営利性のある外資単独での職業訓練機構の設立を同リストから除外する形で認めた。
一方、非学制職業教育は、国家発展改革委員会などで定めた「外商投資産業指導目録」により、外資の参入を奨励している。だが実際には、上海FDZを除くほとんどの地域が、上述の「意見」や「中外合作職業技能訓練管理弁法」「中外合作学校運営条例」に基づき、外資を規制している。北京市は2018年7月に中外合作の職業技能訓練機関の設置を試行したが、同年12月21日に終了させていた。
「弁法」の主な内容
「弁法」は非学制の外資系職業技能訓練機構の認可および監督に適用する。外資系職業技能訓練機構とは、外国の企業またはその他の組織(外商投資者)が単独、あるいは中国の国家機関以外の社会組織(国内投資者)と共同で組織し、中国人を主な募集対象として、北京市行政区域内でオフラインによる非学制の職業技能訓練を行う営利性のある教育機関と定義する。
職業技能訓練とは、中華人民共和国職業分類の第三類から第六類(注2)までの明確な技能を有する職業(職種)(行政及び法執行の職業を除く)、及び人的資源・社会保障部が公布した技能区分の新しい職業(職種)に関する訓練をいう。
「弁法」で定めた外資系営利職業技能訓練機構の運営面と組織の条件は表1~2のとおりである。
内容 | |
1 | 主催者が法人格を有し、不良の信用記録がないこと。 |
2 | 外商投資者は、職業訓練分野における投資または経営の経験を有し、国際的に先進的な教育訓練管理経験、管理モデル、サービスモデルを提供でき、国際的な一流水準の訓練コース、教師、教育施設、設備を提供できること。 |
3 | 教育業務や学校運営に精通し、職業訓練の教習活動に責任を持つ校長または主な管理責任者がいること。 |
4 | それぞれの職業訓練コース、区分、規模に見合う常勤・非常勤の教員と管理職を配置すること。 |
5 | 学校の運営に必要な適切な資金と、授業を正常に行うための資金源を持つこと。 |
6 | 研修プログラムに適した教育施設と教具があること。 |
7 | 研修プログラム、教材、授業などの管理体制があること。 |
8 | 国内投資者が国有資産で組織化に参加する場合、国有資産の監督管理に関する国家規定を遵守すること。 |
出所:筆者作成
設置 | 内容 |
学校理事会 |
|
校長または主要な管理責任者 |
|
法定代理人 |
|
教員および管理職 |
|
出所:筆者作成
北京市では弁法の施行により、職業訓練機構への外資の参入を促すとともに、要件や組織などの一定の基準を示すことで、設立・変更のための事務手続きの迅速化をはかるとしている。
注
- 「学制」の職業教育では、政府が定めた教育方針に基づき、就学年齢やカリキュラムなどが規定される。一方、「非学制」の職業教育では、資格取得などを目的としたカリキュラムを自由に設立できる。(本文へ)
- それぞれの分類項目に該当する職業は以下のとおりである。
第三類:事務関連(国家機関、党組織、企業・事業系政府組織での事務運営や行政業務、安全・保安、消防、郵便・通信など)
第四類:商業・サービス(商業、飲食、観光・娯楽、運輸、医療補助、社会・居住生活サービス)
第五類:農・林・畜産・漁・水利(農・林・畜産・漁・水利業における生産、管理、予備加工)
第六類:生産・輸送設備オペレーターおよび関連作業(鉱物探査、採掘、製品製造、建設、輸送設備オペレーションおよび関連作業)(本文へ)
参考資料
- 北京市人的資源・社会保障局ウェブサイト
(外資系営利職業技能訓練機構の設立に関する管理弁法)
- 中国政府網、人民網、日本貿易振興機構
2022年12月 中国の記事一覧
- 北京市が「外資系営利職業技能訓練機構」の設立を許可
- 個人年金関連の法整備が本格化 ―36都市・地域で試行実施
関連情報
- 海外労働情報 > 国別労働トピック:掲載年月からさがす > 2022年 > 12月
- 海外労働情報 > 国別労働トピック:国別にさがす > 中国の記事一覧
- 海外労働情報 > 国別労働トピック:カテゴリー別にさがす > 人材育成・職業能力開発
- 海外労働情報 > 国別基礎情報 > 中国
- 海外労働情報 > 諸外国に関する報告書:国別にさがす > 中国
- 海外労働情報 > 海外リンク:国別にさがす > 中国